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スキンケアニュース
2024.12.27

そんなにマルチタスクできません!【中年男性、トキメキ美容沼へ vol.16】

こんにちは、ライターの伊藤聡と申します。私は男性のためのスキンケア本『電車の窓に映った自分が死んだ父に見えた日、スキンケアはじめました』(平凡社)を出しました。みなさんは、スキンケアに興味がありますか。スキンケアという言葉から、どんなことをイメージしますか? こちらの連載では、スキンケアに親しんでいく上で役に立つかもしれないあれこれをテーマに書いていきます。トライしてみれば楽しくて奥が深い、スキンケアの世界を一緒に探求していきましょう。

You’re everything

男性が、妻や恋人である女性を指して「彼女は僕の恋人であり、親友であり、子どものよき母親であり、悩みの相談役であり……。つまりは僕のすべてです」などと語ることがあります。そんな話をしているときの男性はわりと自信ありげで、「相手を信頼している感じ」が出ていました。僕のすべて。MISIAばりのユーアーエブリシング状態に、かつては聞き手の私も「ステキな関係だな」などと納得していたのですが、これでは女性の負担だけが大きい気がしてきました。せめて親友は妻と別に作った方がいいでしょうし、家事や子育ては分担すべきです。なぜ女性に、たくさんの役を兼任させるのでしょうか。宮沢賢治だってそこまで注文は多くなかった気がします。多くの男性は、女性に対して気軽にあれこれと頼みがちで、実際にそうした男性からの過剰な要求に悩みを抱く女性は多いようです。

今年11月に発売された書籍、ジェーン・ウォード『異性愛という悲劇』(太田出版)では、こうした関係性を「ケア目当ての交際」と呼びつつ論じています。ケア目当て。何とも嫌な言葉ですね。家事、育児から夫のご機嫌取りまで、ひとりで何役もこなさなくてはならず、人間百葉箱みたいなマルチタスクを期待された結果、燃え尽きてしまう女性がいることをこの本は指摘していました。読みながら悲しい気持ちになりましたが、ケア目当ての男性は実際にいると思います。当然自分をケアしてくれるだろうという男性側の甘えがあり、期待に応えなければという女性の親切心につけ込まれてしまうわけです。気がつけば、子どもより手がかかるかもしれない成人男性の身の回りのお世話と心のケアという重労働が、女性に課せられてしまう。さらには、これだけ多くを要求されて、なおかつ「キレイなままでいろ」などとのたまうのですから、身勝手にもほどがあります。ケア目当てというやっかいな悪循環はどうにかすべきと感じました。

女性への圧倒的な依存 

このテーマを男性側から考えてみると、そもそも男性は人間関係の構築をそこまで重要視していないという問題があります。以前にこの連載でご紹介した「50代男性の約4割は友人ゼロ」というテーマにも通じていて、『異性愛という悲劇』でも「男性同士が継続した交流関係を維持できず、個人的な悩みを女性に受け止めてもらいたいという依存傾向が高まった」と述べられています。悩みを人に受け止めて共感してもらわなければ、私たちは生きていけません。とはいえ、周囲に友だちや助け合いのネットワークを作り、それを維持するためには努力が必要だし、相手を思いやる心がなくてはいけません。そうしたつながりを作ることもセルフケアの一環なのですが、そもそも周囲とのつながりを持とうとしない男性が、唯一近くにいる妻や恋人にすべてを委託してしまうといういびつな状態が起きます。その結果として、女性に怒濤のマルチタスクが課せられてしまう気がするのです。これはよくありません。

ここで私がずっと考えている、男性のセルフケアが重要になってきます。男性は自分の心や身体のケアが後回しになりがちなことが多いようです。『異性愛という悲劇』はこれを「標準的男性の失感情症」と呼んでいます。かんたんに言えば、自分にどんな感情があるか、あまりよく認識できない(失感情)男性が多い傾向があるということですね。女性からすると「感情がわからないって何?」と不思議に思うでしょうが、自分が悲しいのか落ち込んでいるのか、ある種の男性はそうした感覚に鈍いようです。そうした人にとっては自分のケアすらおそろかなのに、周囲のケアなどさらにむずかしいでしょうから、女性側のケア労働が増えがちです。私も最近つくづく感じるのですが、友人と会って時間をすごす、相手の話を聞いたり、思っていることを聞いてもらったりするのは、それだけで心を回復する薬になります。友だちがいる、というのはステキなことなのです。

 もう妥協しないで

こうして「妻役、恋人役、母親役、セラピスト役……」を全部盛りで引き受けさせられた女性が、歯をくいしばって日々のケア労働に耐えているのを見るのは辛いものです。『異性愛という悲劇』の著者ジェーン・ウォードさんは同性愛者なのですが、「異性愛者は恋愛のさまざまな局面で、ちょっと首をかしげたくなるような妥協をする」と書いています。この指摘、ドキッとしませんか。たしかに、男性と女性が恋人や夫婦となる異性愛の世界では、女性の側が多くを我慢し、夫や恋人の不満を口にしながら妥協しているのを見かけます。これが同性愛者のジェーン・ウォードさんには理解しがたいようです。同性愛者の女性からは「男性に期待しなさすぎ」という意見もありました。そうですよね。もっと男性に多くを期待していいはずなのです。ムリな我慢や妥協はよくありません。令和は男女揃って変化していきたいですね。

というわけで、今月オススメのスキンケア製品の紹介です。来年3月にSUQQUから発売される予定の美容液「アクフォンス スムース リニュー セラム」をひと足先に使わせていただく機会があったのですが、心地よい香りとスムーズな肌触りがとても好きでした。SUQQUのスキンケアはどれもすばらしいのですが、今回の新製品もみごと。使ってみると、鏡に映る肌の質感がぐっと輝いた気がします。肌あれ防止、保湿、なめらかな艶肌を作るなど、肌に嬉しいマルチな効果が多数期待できる製品でもあります。マルチタスクを期待するのはスキンケア製品だけにとどめておいた方がいいのでは、と思った私でした。男性がセルフケアを意識するだけで、女性の負担は減るような気がします。まずはお肌の手入れから始めて見ませんか。

 

 

 

伊藤 聡(いとう・そう)
会社員兼ライター。50代にして美容の楽しさに目覚める。著書に『電車の窓に映った自分が死んだ父に見えた日、スキンケアはじめました』(平凡社刊)

イラスト/green K

※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。

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