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スキンケアニュース
2023.11.24

なぜ人は肌のきれいさを求め続けるのか?齋藤 薫さんが綴る、そのアンサーとは…|美的GRAND

「きれいな肌でいたい」という思いは、人類の誕生から始まっていた。肌はコミュニケーション、脳や五感、新しい価値観や生き方まで深くつながって…。驚嘆、でも納得のアンサーを齋藤 薫さんが綴ります。

なぜ人は、肌のきれいさを求め続けるのか?

ブラウス¥107,800( サン・フレール〈ドロシー シューマッハ〉) パンツ¥97,900(サン・フレール〈カラス ミラノ〉) ピアス¥25,300(ドレスアンレーヴ〈ラ・キアーヴェ〉)

「肌は、自分そのもの。肌で人と会い、肌で人を幸せにする。だから人生をかける価値がある」

――――美容ジャーナリスト 齋藤 薫さん

美しい肌であることの喜びは、人間の本能?

人類はなぜ体毛をほぼ失ったか?そこにはいくつもの説があって、“二足歩行になって長く歩き回ることから体温を上げすぎないようにするため”というのが有力だと言われるけれど、実はダーウィンが唱えたとても興味深い説がある。それは「異性の好みにあわせた結果、体毛の薄い男女が繁殖をする確率が高くなり、体毛が退化した」というもの。さらにもうひとつ、体毛がなくなることで、“素顔”になったからこそ、表情によるコミュニケーションがとれるようになり、人類社会を大きく進化させたのだと言う説も……。

私たちはなぜ、肌が美しいと、それだけで嬉しいのか?それだけで幸せなのか?そこには、ヒトの成り立ちにまつわる人間の本能が関わっている気がしてならなかったが、ルーツはまさにそこにありそうだ。

結局のところ、人は人と肌で出会い、肌で向き合う。だから、第一印象も、その日その日の印象も、結局のところ肌印象が決めている。それを人類の歴史までが証明しているということなのだ。少なくとも、人間同士まだ言葉を持たない時代には、肌や肌色がコミュニケーションの手段になったはずで、性別から年齢はもちろんのこと、“人となり”までがそっくり肌で表現できることが、人と人を結びつけ、恋を生み、家族をもたらしたのなら、何とドラマチックなことか。

実際に、「肌が合う」「肌に合わない」という言い方をするし、「ひと肌脱ぐ」は相手のために本気で力を尽くすことを語っている。肌は人と関わり、社会と接する手段。だから、人生をかけて美しくありたいと思うのだろう。

肌は、自分そのもの。肌は自分自身なのである。だからこそ、肌がきれいになることで、自分自身が丸ごとランクアップしたように感じるのだろう。それが理屈抜きの喜びにつながるのは当然のこと。そう考えれば、ずっと肌トラブルに悩み、人生に希望を持てなくなっていた人が、肌が改善した途端に生きる希望を取り戻すまでになることも説明がつく。

かつて、濃いアザまでをカバーするカバーマークの廃盤が決まった時、「これがないと私は生きていけない」という手紙が届いたことで、メーカーはある種の使命感から採算を度外視して販売を継続しようと決めたという話がある。肌はほとんど命に直結しているのだ。

実際に、肌はもうひとつの脳とされ、脳を介さずにモノを判断できる知性が備わっていると言われる。肌自身がモノを考えているならなおさら、深刻な肌トラブルが絶望をもたらし、肌のきれいが無上の喜びをもたらして何ら不思議ではないのだ。

美しい肌で人と会う。それは大人の女のホスピタリティ

かつてこんなことがあった。友人と食事をした時「今日、私、肌荒れしているの。ごめんね」と彼女は言ったのだ。なぜ私に謝るの?肌荒れしていて不愉快なのは自分自身のはずなのに。でもこう考えると納得がいく。美しい肌を目にした時、人は皆それだけで清々しい気持ちになるもの。いつまでも眺めていたいと思うほど。それはひとえに、美しい肌は美しい景色と同じ、見る人をも幸せにする特別な役割を持たされているからなのだ。

極端に言えばロイヤルファミリーの美容は、自分のためではない、その姿を一目でも見たいと思っている人々のため。少しでも美しくいなければいけないという使命感や責任感があればこそ。そういう意識になった時、その美しさをねたむ人は誰もいない。キャサリン妃が美しくなることに私たちは心からの喜びを感じる。反対に、尊敬を生むはずだ。

つまり美しい肌で人と会うことは、ひとつのホスピタリティ。身だしなみ以上の“おもてなし”として、会う人への“心尽くし”として、美しい肌を持って出かけていくこと。大人の女は、そのくらいの気持ちでいたいのだ。居心地のいい店を選ぶのと同じように、自分自身も心地よい存在になること。それをテーマに美容をしたいもの。単に自分のため、自己満足のためだけじゃなく、その日に会う人を心地よくし、幸せな気持ちにさせてあげるためにこそ、スキンケアをしメイクをする。そこに、大人の女性の本当の美しさが醸し出されるのではないだろうか。

もっと若い頃は自分の幸せのためだけに美しさを求めたはず。でも大人はもう一歩先に進んでほしいのだ。ひたすら自分のための美しさを追求するのではなくて、時間を共にする人のために、清らかな美しさで清々しい時間を作ることをテーマに美容ができたら、それはひとつ格上の尊い美しさとなるはず。そこまでを含めて、美しい肌は、人生を素晴らしいものにすると言えるのではないだろうか。そうした境地にたどり着いた時、肌の美しさは生涯にわたって人生を明るく照らすのだろう。まさしく肌の美しさは財産となる。だから美肌づくりには人生をかける価値があるのだ。年齢を重ねても重ねても、尊敬される美はいつまでも輝き続けるのだから。

 

『美的GRAND』2023秋号掲載
撮影/福永俊樹 ヘア&メイク/岡田知子(TRON) スタイリスト/大沼こずえ モデル/樋場早紀 構成/松村有希子

※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。

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