どうしてわきの下は臭いやすいの？ 汗の臭いやワキガを防ぐには？【女医に訊く#177】
電車のような逃げ場のないところで厚着をしてしまい、汗を大量にかいたときに気になるのが、わきの下から漂う臭い。汗やワキガの臭いは、どのようにして抑えたらいいのでしょう？ 皮膚科専門医の慶田朋子先生に教えていただきました。
そもそもどうして汗をかくの？
「わたしたちは体温調整をするために汗をかいています。かいた汗に風が吹いて汗が気化することで、体表の温度が下がるのです」と話すのは、皮膚科専門医の慶田朋子先生。
汗をかくこと自体は悪いことではないため、汗を無理に止める必要はありませんが、必要以上に汗をかいたり、かいた汗をそのまま放置するのはNG。臭いのもとになるほか、冷えや肌トラブルを引き起こすこともあるため注意しましょう。
汗には臭う汗と臭わない汗がある？
汗が出てくる汗腺には、エクリン腺とアポクリン腺の2種類があり、エクリン腺はほぼ全身に分布していて温熱刺激や精神的緊張によって発汗します。一方、アポクリン腺はわきの下や乳輪、デリケートゾーンなど身体の限られた部分にあり、性ホルモンの影響で汗の分泌が多くなります。
「アポクリン腺から出る汗はネットリしていて臭いのもととなる成分を含んでいますが、エクリン腺から出る汗はサラサラしていて本来は無臭です」と慶田先生。
「ただし、エクリン腺から出た汗も肌の上に大量に付着すると、常在菌に分解されて臭い物質に変わってしまいます。そのため、ある程度以上の量の汗をかくと、汗臭くなってしまうのです」（慶田先生）
必要以上に汗をかかないためにはどうしたらいい？
冬に必要上に汗をかかないためには、服装の見直しが必要です。特に発熱インナーを着る際には要注意。発熱インナーは体から出る水分を効率的に吸収することで熱エネルギーを生み出すため、冬でも室内に入ったときなど、少し暖かくなってきて汗をかきはじめると途端に発熱して、ますます暑くなってしまうのです。
「肌着はコットンやシルク、ポリコットンなどの素材で、縫い目がないものがいいと思います。シャツの上に薄手のダウンやセーターなど、中に空気を含むものを重ねて、最後に風を通さないアウターを着ると暖かいですよ」（慶田先生）
セーターはクルーネックがおすすめ。タートルネックを着てしまうと、暑くなったときにどうにもならなくなってしまいます。寒いときは首元にマフラーを巻いて、暑くなったら取るというように、脱ぎ着しやすい服装を心がけましょう。
「それでも汗をかいてしまったときは、すぐに拭き取ることが大切です。大量に汗をかいたときや夜に予定がある日は、下着を着替えましょう」（慶田先生）
ワキガは遺伝するって本当!?
「ワキガかどうか判断するには、臭いを嗅ぐのがいちばん簡単ですが、遺伝子検査でもわかります。ワキガは基本的に遺伝性が高く、親族にワキガの人が誰もいないのに突然なることはあまりありません」と慶田先生。
耳垢がねっとりしている方はワキガである可能性が高いそう。また、ワキガのある方はデリケートゾーンのワキガ「裾ワキガ」もある可能性も。
「近年、耳垢が湿型か乾型かを決定し、ワキガ症の発症に関連する遺伝子（16番染色体のABCC11遺伝子）が解明されました。日本を含む東アジアでは少なく、日本における保有率は約25％で、アフリカ系、欧米系人種より少ないのですが、少数派ゆえに社会的圧力を受けることがあります。また、日本の高温多湿環境下では臭いを強く感じやすいという傾向があります。なお、ストレスや緊張、性的な興奮を伴うと、臭いが強くなる傾向があるといわれています」（慶田先生）
ワキガはどうやって治療するの？
「体毛はアポクリン汗の臭い物質が付着する温床となるため、ワキガにはまず両わきのレーザー脱毛をし、それから半年に一度くらいのペースでボトックス注射を打つのがおすすめです。いずれも、汗腺だけでなく皮脂腺の働きも抑制するので、臭いの軽減に相乗効果があります」（慶田先生）
わきは臭いのもととなるアポクリン汗腺と臭いを拡散させる原因となるエクリン汗腺の両方から汗が出る特別な部位。ワキガをなくすためには両方の汗腺の働きを弱めなくてはなりません。ボトックス注射はアポクリン汗腺とエクリン汗腺の働きを弱める効果のあるボツリヌストキシンを利用して、臭いと汗の量を軽減させます。
「この治療で9割以上の方は臭いが気にならなくなりますが、通った道筋がわかるような強いワキガの場合は、これだけは完全に消えません。そのような方には、わきの下の皮膚を切ってアポクリン腺がある脂肪層の部分をかき出す手術が行われますが、そこまで適用がある人は非常に少ないですね」（慶田先生）
※価格表記に関して：2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。
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銀座ケイスキンクリニック院長。医学博士。日本皮膚科学会認定皮膚科専門医。日本レーザー医学会認定レーザー専門医。東京女子医科大学医学部医学科卒業後、東京女子医科大学病院、聖母会聖母病院などを経て、2006年、有楽町西武ケイスキンクリニック開設。2011年、西武有楽町店閉店に伴い、銀座ケイスキンクリニックとしてリニューアルオープン。最新マシンと高い注射注入技術で叶える、切らないリバースエイジングに好評を博している。著書に『女医が教える、やってはいけない美容法33』（小学館）など。