ジェーン・スーさん「つらいときは、ひたすら時間をやり過ごせばいい」|“弱い自分”からの脱出法【美的GRAND】
つらく、苦しい環境にあっても自分らしさを見失わず前に進むために…今だから言える“弱い自分”からの脱出法を、コラムニストのジェーン・スーさんに語っていただきました。
気力がわかない程つらいときは、ひたすら時間をやり過ごせばいい
私の「もうダメだ……」は、大抵月曜日の朝8時半にやってくる。
長時間ぶっ通しで眠れなくなってから早5 年、いやもっとか。
5時とか6時に一度自然に目が覚めて、その後もう一度眠りについて8時に目覚ましが鳴り、
しかしスッとは起きられず、ベッドの中でうだうだやっている時間。
私の許可なく始まってしまった月曜の朝をうらみながら、のろのろとシャワーを浴びる。
そして9時過ぎ、濡れた髪にタオルを巻きながらまた思うのだ、「もうダメだ…」と。
最近はコロナ疲れが無自覚に堆積してきたのか、ちょっとしたことにも傷つきやすくなっている。
だからどうしたって疲れているし、やる気も出ない。
しかし、ここでばっくれたら多くの人に迷惑がかかる。築いてきた信用も一気に失う。
だからばっくれるわけにはいかないのだ。つまり、私にとって月曜朝の「もうダメだ…」は平常運転。
「もうダメだ…」と思いながら、手足が勝手に動いて支度が完了する。
さあ、今日もやるしかない。そう思ってやっていると、気づいたときには気力が戻っている。
ごはんも食べられなくなる程ダメになったのは、30代になったばかりの頃に経験した大失恋だった。
あれはひどかった。
一日中メソメソしていたし、ダメだダメだと思いながら、常に緊張状態にあった。
ちょっと出かけるだけでもフルメイクをしないと気がすまなかった。
仕事があったのが幸いだ。ひたすら時間をやり過ごして、少しずつ正気を取り戻していったように思う。
かなり時間はかかったけれど。
ダメージに向き合う気力もない程つらいときは、原因や回復方法を考えすぎない方がいい。
目の前のことを片づけながら、隙間時間はすべて睡眠に費やそう。
気力が戻ってきたら、良い香りのバスソルトを溶かした湯にゆっくりつかる。
だって、ダメージって「傷」だもの。
だましだましやり過ごして、おいしいものがおいしいと感じられるくらいになってから、
ちゃんと向き合えばいい。ただし、起き上がれない程なら緊急事態。
そういうときは、ちゃんとばっくれるのが吉。
文・ジェーン・スー
ジェーン・スーさんの元気の源
ネットフリックスでビヨンセのコーチェラ・ライブ「ホームカミング」を観ること。もう10回以上観ているけれど、涙を流さずに観終われた試しがない。勇気と元気と覇気をもらえる貴重なコンテンツ。終わった頃には「負けへんで!」と必ず復活できる。
『美的GRAND』2021冬号掲載
構成/野村サチコ、有田智子
※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。
じぇーん・すー/『貴様いつまで女子でいるつもりだ問題』(幻冬舎文庫)で第31回講談社エッセイ賞受賞。現在TBSラジオ『ジェーン・スー 生活は踊る』のMCも務めるなど、ラジオパーソナリティとしても活躍。最新刊『女のお悩み動物園』(小学館)など著書多数。