パウダールームで美しさを分ける、3つの行い。女を隙だらけにする危うい場所【齋藤薫「大人美のマナーとルール」vol.4】
女性ばかりの場所では、ある種のタガが外れて、普段は見せない振る舞いを見せてしまうのが世の常。それが激しく凝縮される公共のパウダールームでは尚更、些細な行いが美しさを分ける。この3つの行動。あなたは大丈夫?【齋藤薫「大人美のマナーとルール」vol.4】
美しい人が、美しく見えない行いを?
昔から思っていた。女子トイレは、いろんな意味で、女性の美しさが最もシビアに問われる場所であると。
身繕いを整えて、手を浄めて、化粧直しして……言うならばそこは「女の楽屋」。だから公共の場所でもあるにもかかわらず、何だか生身の自分が出てしまう。女子トイレから一歩外に出れば、完璧なまでに隙のない女性が、女子トイレのエリアの中では、隙だらけとなる。だから、美しい人が決して美しくない行いを見せたりするのだ。
厄介なことに、女子トイレは大体いつも混んでいる。だから、順番待ちする女性たちの目は、意外に他の人に注がれているもの。いや混んでいるせいだけではなく、女同士、お互いの本質をちょっとだけ覗いてみたい気になる特別な場所だからなのだ。ところが自分は見られていることに気づかない。それが女子トイレ。
見ているほうも無意識だったりするけれど、結果的に反面教師にしていたり。まさしく「人の振り見て我が振り直せ」の最たる場所なのである。
じゃあ女性を女性の何を見ているのだろう。それは主に3つ。
化粧直しに没頭して、周りが見えなくなる人
例えば、洗面台を使いたい人が後ろに並んでいても、化粧直しに没頭し、鏡にかぶりついて離れない人がいる。ほんの少し左右にずれれば、次の人が手を洗えるのに。異様に長い化粧直しをする人も、実はけっこうなオーラを放っている。
おそらく、化粧直しには嫌でも妙な集中力が生まれてしまうから、周囲が見えなくなったりしがちなのだろう。電車の中での化粧直しなどありえないと思っている、充分にわきまえた人でさえ、パウダールームでは、なんだか周りが見えなくなりがち。
原因は鏡。そこにある大きな鏡に、自分が写っているからである。鏡には、人を自分中心にしてしまうマジックが働くのだ。自分だけの世界に入り込んでしまわないよう、充分に注意をしたいもの。
今は尚更、手の洗い方が見られてる
見られていないようで見られているのが、手の洗い方。いや普通に洗っている人のことは誰も気にしないのだろうが、片手だけ水に濡らして終わりという人って意外に少なくなかったりすること、結構みんな気づいている。
なぜ片手だけ? ついつい考えてしまう。単純に面倒くさがり屋が、とりあえず形だけ洗ったことにしようという省略の仕方なのだろうけれど、女子トイレでそれはやっぱりまずいと思う。ソープをつけないまでも、せめて両手を水にさらしてほしい。
とは言っても、手の洗い方など極めて個人的なもの、本来自分がよければいいという種類のものだったが、コロナ禍となって事情がすっかり変わった。まるでお互い監視するように、指の先や指と指の間まで洗っているだろうかとチェックしたりしてしまう。手洗い後の濡れた手をどうするかまで。
私自身、この手洗いが適当なほうだったから、随分と白い目で見られたはず。ただ1度緻密になった手洗い習慣は、仮にコロナ収束後も、それなりに身に付いたものとして続いていくのだろう。世の中の水準が上がった分だけ、やっぱり丁寧な手洗いを心がけたい。
洗面台を拭いて立ち去るか、拭かずに立ち去るか?
一番その人の本質が出るのがここではないか? 手を洗えば、ほとんどの場合洗面台に水が飛び散る。これを拭いてキレイにしていく人は、どのぐらいいるものなのだろう?
そんな統計があるわけではなく、何となくだけれども、半分の人はそのまま立ち去る気がする。洗面台を水浸しにして。今は、ハンドペーパーも用意されていなかったりするから、正直、飛び散った水を拭くことには、ある種の熱量が必要で、尚更その人の日ごろ行いが問われる場面となる。
そんな中、ある女性がバッグからティッシュを取り出して、洗面台をキレイにしているのを見たことがある。その人がとても美しい人に見えたのは言うまでもないこと。
逆にこんな人もいた。自分が使う前に、飛び散った水を拭き取ってから、バッグを置いて手を洗いおもむろに化粧直しを始めたのに、使用後は自分が飛び散らせた水はそのままにして立ち去った人が。
まさしく「立つ鳥跡を濁さず」……立ち去った後が美しく整っていることこそが、その人の美しさの動かぬ証となる。もちろん後にそこを使う人のため。でも、自分自身のために洗面台を拭こう。ペーパーがないならば、自分のティッシュを取り出して拭く、そこまでの振る舞いは、必ず気配の美しさとなってあなたを輝かせるはずだから。
最近、また女子トイレが混んできた。本当の意味の美しさが試されるこの場所で、自分の振る舞いをもう一度振り返ってみたいのだ。自戒も込めてそう思う。
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