『 五億円のじんせい 』『 ワイルドライフ 』『 カーライル 』 試写室便り 【 大高博幸さんの肌・心塾 Vol.511 】

五億円 稼いで、ボクは死ぬ。

かつて五億円の募金で命を救われた少年。
17 歳の夏、死ぬために始めた闇バイトで見つけた、命の本当のねだん。

五億円のじんせい
7.20 公開／日本／ 112 分
https://gyao.yahoo.co.jp/special/5oku/

主人公の高月望来 ( たかつき みらい ) は、幼い頃に 善意の募金五億円によって心臓手術に成功し、命を救われた 現在 17 歳の少年。健康に成長したものの、五億円に ふさわしい自分であろうと 周囲の期待を受けとめ、メディアの目に晒され続けるという 窮屈な青春を送っていた。ある日、ある出来事をきっかけに、S N S で自殺を宣言したところ、〝 キヨ丸 〟という見知らぬアカウントから「 死ぬなら五億円返してから死ね 」というメッセージが届く。望来は 五億円の〝 借金 〟を返して 自由になるための 旅に出る。そして、様々な人と出会い、事件に巻き込まれていくが …… 。

これは 周囲の目に窮屈さを感じながらも、その期待に応えようと努めてきた少年が、五億円の〝 借金 〟を まず返すと決めて家出して、結果的に生きる価値を体得するという物語。
プロローグに自殺を図る女子高校生が出てきたりして、僕は ちょっと引きましたが、雨の夜、ズブ濡れになった望来が ホームレスの男に声を掛けられる場面辺りから ガゼン 面白くなり、最後まで興味津々、観てしまいました。

主役を演ずる望月歩 ( もちづき あゆむ、初主演 ) は、望来と同じ 17 歳 ( 撮影時 ) 。身体能力が 高く、顔の表情と体の動きが 個性的な上、澄んだ声と台詞まわしも非常に魅力的。しかも 全篇にわたって適格な演技を観せ、この映画を成功作へと導いています。
その他、ホームレスの男 ( 平田満 ) 、添い寝ハウスの顧客の O L ( 芦那すみれ ) 、闇バイトを幹施する謎の運転手 ( 森岡龍 ) らの脇役陣も、脚本の印象的な台詞と共に存在感があって、とても よかったです。

P.S.　望来をはじめとする若い登場人物たちの肌が 明るく綺麗に映されていたコトから、コスメと結びついたのは プライマーの効果でした。新製品の中から「 これを使うと、あんな肌になりそう 」と感じた 1 品を御紹介します。それは …… 、

ジルスチュアート　イルミネイティング セラムプライマー　SPF20・PA++　全 1 色　01　30ml　￥3,200　( 7.5 より発売中 )
パールのデリケートな輝きと 多種のフルーツエキスの みずみずしさとが 一体化したプライマー。肌なじみは美容液のようで、ファンデーションの下から肌をライトアップしているような仕上がりが 独得です。
詳しくは、www.jillstuart-beauty.com 、または 0120-878-652 へ。

僕は二人から、人生のすべてを学んだ。

父の失業。母の浮気。別離、
そして新たな道 ―― 。
壊れゆく家族の姿を 14 歳の息子の心情を通して描く、切なくも優しい物語。

ワイルドライフ
7.5 より公開中／アメリカ／ 105 分
www.wildlife-movie.jp

物語の舞台は、1960 年代、カナダとの国境に ほど近い モンタナ州の田舎町。14 歳のジョー ( エド・オクセンボールド ) は、ゴルフ場で働く 父 ジェリー ( ジェイク・ギレンホール ) と、家庭を守る 母 ジャネット ( キャリー・マリガン ) の 1 人息子だ。新天地での生活が 軌道に乗り、睦まじい夫婦の姿を 息子が 安堵の面持ちで眺めていたのも つかの間、ジェリーが 職場から解雇されてしまう。さらに ジェリーは、山火事を食い止める出稼ぎ仕事に旅立ってゆく。残されたジャネットとジョーは 働くことを余儀なくされ、母は スイミングプール、息子は 写真館での職を見つけるが、生活が 安定するはずもない。やがて ジョーは、優しかった母が 不安と孤独に さいなまれ、生きるために もがく姿を 目の当たりにすることになる。( プレス資料より抜粋 )

強烈な作品というワケではありませんが、これは 僕の〝 本年度 ベスト 1 候補 〟の 1 本です。『 ゼア・ウィル・ビー・ブラッド 』( ’07 ) や『 それでも夜は明ける 』( 通信 209 ) などに出演してきた俳優 ポール・ダノの監督デビュー作で、映画としての出来は？ と 危惧しながら観たのですが、びっくりするほど 完成度の高い作品になっていました。脚本の構成・台詞、主役三人の演技、ブルーがかった美しい撮影、控えめでいて印象的な音楽、セット、衣裳 … 、全てに欠点が見当たりません。山火事のシーンなど 派手に盛るコトも出来たはずなのに、おそらく 敢えて それを避け、一貫して 三人の心情描写にフォーカスした監督の意図に、僕は拍手を贈りたいです。

映画は ジョーの視点で描かれていますが、E・オクセンボールド ( ’01 年生まれ ) の眼の演技と 誇張のない台詞まわしが 実に実に素晴らしい。14 歳の少年としては 精神的・情緒的に安定した、少し大人びている役の性格を、彼は 確かな説得力をもって演じきっています。
眼を見張らせられたのは、C・マリガンの成長振り。『 17 歳の肖像 』( ’09 ) 、『 華麗なるギャツビー 』( ’12 ) 、『 未来を花束にして 』( Vol.378 ) などでのフラジャイルな持ち味に加えて、女性としての逞しさ・激しさ・したゝかさを備えたジャネット役を、徹底的に 綺麗ごとを排して演じた姿勢が 迫力を生み、「 彼女は ついに、本物の女優の域に到達した 」と絶賛されて然るべきです。
ジェリー役の J・ギレンホールも、『 ブロークバック・マウンテン』( ’06 ) 、『 ナイトクローラー 』( ’15 ) 、『 雨の日は会えない、晴れた日は君を想う 』( Vol.383 ) などでの演技を、さらに深めた印象。

物語は、痛ましさが つきまとう 真のヒューマンドラマ。しかし、葛藤の末に道を踏み外してしまったジャネットを含め、三人それぞれの家族愛が ヒシヒシと伝わってくる内容です。それが、かつて観たコトのない類のラストシーンに集約されていて、僕は エンドロールの直前に 涙腺が緩みました。『 マンチェスター・バイ・ザ・シー 』( Vol.393 ) や『 メモリーズ・オブ・サマー 』( Vol.503 ) のような ナイーブな作品に感動するという皆さんは、決して お見逃しなく。

P.S.　コスメと結びつけるとしたら、主に映画の前半で ジャネットが 愛用していたブルー系のアイシャドウと、ミディアムダークなリップカラー … 。ザ・ボディショップ、サティシェ、ポーラの新色から、似たような色を 選んでみました。

ザ・ボディショップ　アイシャドウパレット ペイントインカラー　￥3,600　( 8.22 発売 )
ソフトなニュートラルカラーに ポイントとしてブルーとワインカラーを配した、12 色入りのシャドウパレット。マットカラー、シマーカラー共に、ベルベットのように滑らかなテクスチャーで、色と色のミックスもスムース。
詳しくは、www.thebodyshop.com 、または 03-3249-7131 へ。

C P コスメティクス　サティシェ　エッセンスイン リップスティック　RS-6　￥3,000　( 8.1 発売 )
肌なじみのよい ブラウニッシュローズの口紅。縦ジワを改善する美容成分配合で、唇に滑らかにフィットし、潤いが持続する。直塗りしやすい、やゝスリムな形状。
詳しくは、www.cp-cosmetics.com 、または 0120-294-970 へ。

ポーラ　B.A　カラーズ リップグロス　C B　￥4,200　( 8.8 発売 )
ブライトなチョコレートブラウン色のリップグロス。ジャネットが 鏡の前でしていたように、唇に伸ばした後、指先で軽く撫でると、発色の度合いを 簡単にコントロールできる ( これは、古くて新しいテクニック ) 。
詳しくは、www.pola.co.jp 、または 0120-117111 へ。

世界初！　伝統の〝 5 つ星ホテル 〟、
その知られざる秘密に迫る ―― 。

マシュー・ミーレー監督 最新作！

カーライル
ニューヨークが恋したホテル
8.9 公開／アメリカ／ 92 分
thecarlyle-movie.com

ドキュメンタリー映画好きな読者なら、100％ 憶えているはずの『 ニューヨーク・バーグドルフ　魔法のデパート 』( 通信 183 ) と『 ティファニー　ニューヨーク五番街の秘密 』 ( Vol.364 ) の M・ミーレー監督が、約束どうりに完成させた最新作。

「 ザ・カーライル ア ローズウッド ホテル 」は、1930 年 創業、N.Y.のアッパー・イーストサイドに建つ 5 つ星ホテルで、N.Y.の街並みを一望に出来る 190 の客室とスイートルームを備えている。トルーマン以降の全てのアメリカ大統領、英国王室、名界のセレブの御用達という、格式高い 超一流のホテルです。

その知られざる秘密を紐解くために、カーライルに通い詰めるコト 4 年 … 。いつもながら、ミーレー監督の熱意と根気には 頭が 下がります。しかし、カーライルには 決して明かさない秘密が多く、その点、過剰に期待すると 物足りなさを感じるコトになるかも。大勢のセレブが カーライルの魅力を語ってくれるし、M・モンロー、E・テイラー、B・バルドー、ポール・ニューマン、デヴィッド・ボウイ、ケネディ ＆ ジャッキー、そして アーサ・キットらの映像や画像も大いに眼を楽しませてくれますが、長年にわたってカーライルを支えてきた従業員たちの姿や言葉に、僕は より一層 惹かれました。

ミーレー作品、3 作とも僕は好きですが、最も楽しめたのは『 バーグドルフ 』。秘密の魔法の場所にカメラが入るコトを許されていたし、素晴らしい逸話を聞くコトが出来たし、超高級品を扱う販売員さんの心意気に触れるコトも出来たし、いちばん充実していたという気が 個人的にします。でも、それは ともかく、このドキュメンタリー、あなた自身の眼で、しっかりと観届けてください。

● このページに使用したコスメの価格は、全て 本体のみ ( 税抜 ) の価格です。

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ビューティ エキスパート

大高 博幸

1948年生まれ。24歳の時、日本人として初めて、パリコレでメークを担当。『美的』本誌では創刊以来の連載「今月のおすすめ：大高博幸さんが選ぶベストバイ」を執筆。
■大高博幸さんの 肌・心塾
http://biteki.com/beauty-column/ootakahiroyuki

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