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2017.2.21

『 彼らが本気で編むときは、 』『 ラ・ラ・ランド 』『 雨の日は会えない、晴れた日は君を想う 』 試写室便り【 大高博幸さん連載 Vol.383 】

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© 2017「彼らが本気で編むときは、」製作委員会

優しさに満ちたトランスジェンダーの女性 リンコと、彼女の心の美しさに惹かれ、すべてを受け入れる恋人のマキオ。
そんなカップルの前に現れた、愛を知らない 孤独な少女 トモ。
桜の季節に出会った 3 人が、それぞれの幸せを見つけるまでの 60 日。

笑って、泣いて、心温まる、人と人との絆を紡ぐ〝 編みものがたり 〟!

彼らが本気で編むときは、
日本/ 127 分
2.25 公開/配給:スールキートス
kareamu.com

【 STORY 】 小学 5 年生のトモ ( 柿原りんか ) は、母 ヒロミ ( ミムラ ) と 二人暮らし。ある日、ヒロミが男を追って姿を消す。ひとりきりになったトモは、叔父であるマキオ ( 桐谷健太 ) の家に向かう。母の家出は 初めてではない。ただ 以前と違うのは、マキオはリンコ ( 生田斗真 ) という美しい恋人と一緒に暮らしていた。
食卓を彩るリンコの美味しい手料理に、安らぎを感じる団らんのひととき。母は決して与えてくれなかった家庭の温もりや、母よりも自分に愛情を注いでくれるリンコに、戸惑いながらも信頼を寄せていくトモ。3 人で過ごす日々は、本当の幸せとは何かを教えてくれる至福の時間になっていく。嬉しいことも、悲しいことも、どうしようもないことも、それぞれの気持ちを編み物に託して、3 人が本気で編んだ先にあるものは……。 ( 試写招待状より。一部省略 )

生田斗真が〝 トランスジェンダーの女性 〟という難役に取り組んだヒューマンドラマ。彼は、いわゆる〝 オネエ・タレント 〟風の表情や仕草、言葉使いやイントネーションを いっさい用いるコトなく、リンコの 徹底的な優しさ、感情の豊かさ、意志の強さ、我慢強さを的確に表現し、最優秀主演男優賞に価するほどです。
しかも 本作は、男女の性を超越した人間愛、人と人との つながりの貴さ等々を、押しつけがましさナシで 真摯に描き上げた優秀作。導入部の運びからして巧妙で、本筋に入った後は 反復の多さが やゝ気には なったものの、デリケートな物語を キメ細かく 綿密に紡いでいます。

脚本も担当した荻上直子監督は、アメリカで通算 7 年間ほど暮らしていた間、周囲に セクシュアル・マイノリティの人が多数いて、彼らの人柄や生き方に 好感を抱くコトが多々あったという主旨の話をしています。ところが 帰国した日本で「 オカシイ。違和感がある 」と感じたのは、人類の あるパーセンテージで 確実に存在するはずの セクシュアル・マイノリティの ( 目に見える ) 率が、とても少ないコトだったそう。
そんな荻上監督が 本作を作る きっかけとなったのは、ある日「 性は男と女だけじゃない 」という見出しの新聞記事を目にしたコト。そこには、幼少期から 可愛い物や女の子用の服を好んでいた息子が、思春期に入って「 おっぱい ( 乳房 ) が欲しい 」と言い出した時、母親は「 あなたは女の子だもんね 」と言い、胸につける〝 ニセ乳 〟を作ってあげた という話が載っていた……。
監督は、その〝 ニセ乳 〟を作ったお母さんに会いに行き、詳しく話を聞いたそうです。彼女は たゞたゞ 我が子を大切に思う母であり、「 その想いは、双子の母になった私自身と、さほど変わらないと思った 」とのコト ( その〝 ニセ乳 〟の話は、映画の中に出てきます ) 。

僕は 127 分の間に 6 回ほど、ポロポロッと 熱い涙を こぼしました。それは、リンコとマキオ、マキオとトモ、トモとリンコ、リンコとマキオの母 ( 認知症のため、施設に入っている。演ずるのは りりィ ) 、トモとカイ ( トモの同級生の男の子で、一級上の男子に〝 恋ごころ 〟を抱いている ) 、回想シーンでのリンコ ( 当時の彼女は リンタロウ ) と母のフミコ ( 演ずるのは 田中美佐子 ) の各場面。そのいずれもが、悲しい or 可哀そうな場面ではなく、それぞれの愛情が 溢れ出ている場面でした……。これは 今までになかったコトのような気がします。

出演者は 生田斗真を筆頭に、懐の深いマキオ役 ( 彼は同性愛者ではありません ) の桐谷健太、母親の愛情不足にも拘わらず ヒネたところが少しもないトモ役の柿原りんかが揃って好演。
不快ながら 興味深かったのは、カイの母親 ナオミ ( 演ずるのは 小池栄子 ) の言動。リンコに対して異様なまでに激しい偏見を持ち、それが カイを窮地に追い込みもするという、いわば リンコの母親と対極にある人物。彼女にも 彼女なりのツラい何かがあったのだろうとは想いますが、その偏狭さ・頑なさは 当人はモチロン、周囲の人々をも不幸にする可能性が大なのでは?
本作を観て、自分の立ち位置が 誰に近いのかと、ふと考えてしまう方も少なくはないでしょう。
また、このような映画が もっと早く作られていれば、人生を明るく堂々と生きられた人が 多かったに違いないとも 僕は感じました。

これは 生田斗真のファンではない方々にも、ぜひ 観てほしい映画です。皆さんも、観て 本当に よかったと感じたならば、友だちにも「 絶対に 」とオススメしてください。

 

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©2015 Twentieth Century Fox Film Corporation, Demolition Movie, LLC and TSG Entertainment Finance LLC. All Rights Reserved.

〝 破壊 〟を経て辿り着いた、人生で本当に大切なものとは――。

喪失と哀しみ、そして再生を描いた物語。

雨の日は会えない、晴れた日は君を想う
アメリカ/ 101 分/ PG-12
2.18 公開/配給:ファントム・フィルム
ame-hare-movie.jp

【 STORY 】 出世コースに乗って 富も地位も手に入れた銀行員のデイヴィス ( ジェイク・ギレンホール ) は、美しい妻を交通事故で亡くして苦悶していた。
「 僕は 妻を 本当に愛していたのだろうか―― 」
何不自由ない生活をしていくうちに 無感覚になっていた彼は、ある時、ひょんなことから 自動販売機の会社に苦情の手紙を書く。手紙には 彼の個人的な告白が綴られ、顧客サービス担当の カレン ( ナオミ・ワッツ ) の目に留まる。やがて 見知らぬ者同士の 2 人は、互いを補うような関係となっていく。カレンと 15 歳の息子 ( ジューダ・ルイス ) の力を借りて、デイヴィスは かつての人生を打ち壊し、新しいスタートを切るのだった。 ( プレス資料より抜粋 )

『 ダラス・バイヤーズクラブ 』 ( 2013 ) 『 わたしに会うまでの 1600 キロ 』 ( Vol.301 ) の ジャン = マルク・ヴァレ監督 最新作。
愛し合っていたとは言えない妻の死後、無感覚に陥っている自分に気づいたデイヴィスが、義父 ( クリス・クーパー ) の「 心の修理は 車の修理と同じこと。まず 隅々まで点検して 組み立て直すんだ 」という言葉をきっかけとして、身の回りの あらゆる物を 分解・破壊しながら、自己修復しようと あがく姿を描いています。

物語の展開には やゝ不自然な点もあると僕は感じましたが、重要なのは カレン以上に、彼女の 15 歳の息子 クリスとの交流。物は壊すだけで組み立て直しはしないデイヴィスが、クリスの真情に触れた辺りから 本来の自分を取り戻していくというプロセスに、一種の清々しさが感じられます。

デイヴィス役は、アン・リー監督の力作『 ブロークバック・マウンテン 』 ( ’06 ) でアカデミー賞®助演男優賞にノミネートされた J・ギレンホール。今回も どこか 繊細 かつ誠実さを感じさせながら、熱のこもった演技を見せています。
監督自身の化身のひとりなのかもしれないクリス役は、本作が映画初出演となる 女の子のように愛らしい J・ルイス ( 将来有望 ) 。
カレン役の N・ワッツは 適役とは言い難く ( 彼女は 何故か 度々、僕に そう感じさせる女優なのですが、これは偏見? ) 、義父役の C・クーパーは 今回は 意外に凡庸。

J = M・ヴァレ監督は「 幸せを掴もうと もがいている人間に 僕は惹かれる。人生を再び始めるための勇気のいる物語は、いつも美しいんだ 」と語っています。本作のデイヴィスのように、自分の人生に つまづき「 このまゝでは いられない 」と うっすらとでも考えている皆さんには、一見をオススメしたい映画です。

 

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© 2017 Summit Entertainment, LLC. All Rights Reserved. Photo credit: EW0001: Sebastian (Ryan Gosling) and Mia (Emma Stone) in LA LA LAND.Photo courtesy of Lionsgate.

本年度 アカデミー賞® 大本命!

観るもの全てが恋に落ちる、極上の ミュージカル・エンターテイメント!

ラ・ラ・ランド
アメリカ/ 128 分
2.24 公開/配給:ギャガ
gaga.ne.jp/lalaland

【 STORY 】 夢を叶えたい人々が集まる街、ロサンゼルス。映画スタジオのカフェで働くミア ( エマ・ストーン ) は 女優を目指しているが、何度オーディションを受けても落ちてばかり。ある日、ミアは 場末の店で、あるピアニストの演奏に魅せられる。彼の名は セブ ( ライアン・ゴズリング ) 、いつか自分の店を持ち、大好きなジャズを 思う存分 演奏したいと願っていた。やがて 二人は恋におち、互いの夢を応援し合う。しかし、セブが店の資金作りのために入ったバンドが成功したことから、二人の心は すれ違いはじめる……。 ( プレス資料より )

主演は『 L.A. ギャング ストーリー 』 ( Vol.151 ) でのコンビが とても良かった R・ゴズリングと E・ストーン。監督は『 セッション 』 ( ’14 ) の世界的大ヒットで 一躍 時の人となった デイミアン・チャゼル。内容は 全てがオリジナルの ミュージカル・ロマンス。
これは 映画ファンなら、誰もが観ずにはいられない、誰よりも早く観たいと思って当然の夢のエンターテインメント。モチロン 僕も、張り切ってマスコミ試写に出向きました。しかし、入場開始 1 時間前 ( 上映開始 1 時間 30 分前! ) に長蛇の列ができ、僕の数人前で満員に。後日、改めて挑戦しましたが、今度は 交通機関のダイヤの乱れのために 再び NG に……。
というワケで、僕は 2.24 に映画館で観るコトとなりそう。皆さんは、日時を決めたら早めに指定席券を入手して、確実に観られるようにガンバってください。

P.S. ラ・ラ・ランドとは、① L.A.、主にハリウッド地域の愛称、② 陶酔し、ハイになる状態、③ 夢の国、という意味を含んでいます。

 

 

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ビューティ エキスパート
大高 博幸
1948年生まれ。24歳の時、日本人として初めて、パリコレでメークを担当。『美的』本誌では創刊以来の連載「今月のおすすめ:大高博幸さんが選ぶベストバイ」を執筆。
■大高博幸さんの 肌・心塾
http://biteki.com/beauty-column/ootakahiroyuki

※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。

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