42年のヘアメイク人生に終止符。美のカリスマ・藤原美智子さんが今伝えたいこと|美的GRAND
ヘア&メイクアップアーティストを卒業するというニュースは驚きだった。メイクの基本もトレンドも、そして「自分らしいメイク」も、いつもお手本にしてきた存在。その自由で軽やかで素敵な生き方は、次のステージでも変わらず、私たちを導いてくれる。
藤原美智子|人生の第2章は、軽やかに、前のめりに
42年のヘア&メイク人生に終止符を打ち、「原点に戻った」今、美のカリスマが、『美的GRAND』世代に伝えたいこと-。
取材当日、夫君、愛犬アルフと迎えてくれた新居には、20代の頃に買ったアンティークの壺やチェストなど、ずっと好きだったものが並び、テラスでは育てているハーブが太陽の光を浴びていた。ただ、メイク道具はもうない。
充分やり切ったと思えた。次を決めないまま引退を宣言
「ヘア&メイクとして撮影に行くことはないし、道具をもっていると頼まれたときに断れないから(笑)、アシスタントに全て譲りました。今は自分用のメイクアイテムが数える程しかないんです」
常に女性の美を導いてくれた藤原さんが、42年にわたるヘア&メイクの仕事から引退。その引き際の鮮やかさに驚いた。よく笑いながら、楽しそうに話すのと同じように、決めた経緯も軽やかだった。
「実は、数年前から考えていました。仕事に夢中で取り組み、充分やり切ったと感じる中で、これ以上アップデートし続けることはできないなと思っていたの。そうしたらつまらなく感じちゃって。仕事に前のめりになれなくなったんだからやめどきかな、と。元々ひとりで始めた仕事。その原点に立ち戻り、次のステージに進んでみたいと、会社を立ち上げて30年目の節目に解散しよう、だったらヘア&メイクの仕事もやめちゃおうと、次のことを決めないまま、やめますと宣言したんです。言葉にすると現実が動きだすから」
その活躍から、ヘア&メイクアップアーティストという職業が広く認知され、自らがアイコンとなってメディアで発信を続けてきた。プロのメイク術とわかりやすい説明で、テンプレートとは違う、自分らしいメイクを考えるきっかけをくれた。私たちがメイクと向き合う過程に、いつも藤原さんがいた。
透明感と品性がある“内面を引き出すメイク”で、女性を美しく輝かせること。生き生きとした内面が美しさを導くこと。独立した20代からずっと大事にし続けた思いは、今も変わらない。
「メイクが仕上がるにつれ、メイクしている人の瞳がキラキラ輝きだす。講演会などでは生き方について答えると同じように目を輝かせながら聞いてくれる。手段はどうであれ、私は人が輝きだす瞬間を見るのが好きなんだと思います。人を美しく輝かせるのは生き方であり、メイクはひとつの手段。美しさもセンスも、いくつになっても磨かれます。人生100年時代で、成熟した大人としての時間が長い今、軽やかに、キラキラと生きる大人のためのライフスタイル提案をしていけたらと思っています」
仕事は生涯現役。それがヘア&メイクでなくていいと「ビューティ・ライフスタイルデザイナー」という肩書きをつけた。
自分を輝かせるのは自分。ライフスタイル提案を仕事に
前のめりになれることに取り組むことが、今の自分を輝かせる秘訣。でもそのことを知るためには、自分にとって必要なもの、心地いいものを知ることがグラン世代には大事、と言う。
「私ね、20代はアンティークにはまり、30代は経営者としてスーツを纏い、イギリスの重厚な家具に凝っていました。でも3・11後に価値観が変わり、時計やジュエリーを半分くらい手放しました。40代は朝時間を充実させ、50代からは、週末は下田の別邸で過ごす2拠点生活に。その時々で好きなモノやコトがあったからこそ今、心地いいものをチョイスできる。40代までは、興味のあることには臆せず挑戦してほしいなと思います。それは、自分にとって必要なものを知るプロセス。それがないと、いつまでたっても自分には何かが足りないと感じてしまう気がします」
自身の美の基本は巡りを良くすること。5年前にお酒をやめ、食事はシンプルな野菜料理中心に。3年前に始めたバレエは今も続けている。
「踊っているとゾーンに入る瞬間があって、それが心地よくて。好きな整理整とんをしているときもそう。今はゆっくりお茶を淹れるような、なだらかな日常の幸せを感じながら生活しています。そういえば最近、パフェにはまって、行ったお店で必ずオーダーしちゃうの。これも今の楽しみですね」
自分で自分をご機嫌にする術を知っているから、毎日が楽しい。そんな藤原さんがこれから、どんなメッセージをくれるのかは、楽しみでしかない。
「仕事を始めた頃、確定申告のとき、税務署の方に毎年、『ヘア&メイクとは、どんな仕事ですか?』と聞かれていました。新しい肩書きもいつか自然と受け入れられるときが来るように、続けていきたいですね。過去がどういうものになるかは未来の自分が作るものですから」
Beauty Routines|キレイを導くマストアイテム
for Morning|朝の日課は白湯とレモン
毎朝、目覚めて最初に口にするのはレモン汁をしぼった白湯。白湯を沸かす鉄瓶は、30代で茶道を学んでいたときに買ったもの。
「ビタミンCをとるためにレモン汁を入れると、目覚めも良い感じです。白湯の後は季節のフルーツとコーヒーが定番。胃が重たくならないよう、朝は軽めにすませています」
for Skincare|秋の肌を潤す炭酸*1スキンケア
藤原さんがプロデュースする泡状美容液は、ミクロサイズの高濃度炭酸*1の濃密泡で潤いのある素肌に。「朝晩、化粧水の後、肌にのせて泡が消えるまで待つと血流も良くなり、より美容成分が浸透*2します」
MICHIKO.LIFE スパークロイドエッセンス 100g ¥5,500(問エクロール)
*1 二酸化炭素(噴射剤) *2 角質層まで
for Nail|ネイルにもファンデーションを
爪はディーアップのアロマキューティクルオイル ラベンダー(左)でケアし、同 ファンデーション シアーラベンダー(右)で爪色を自然にトーンアップ。
「60代からは清潔感をより意識する中で、今、爪は色を飾るよりも存在感をなくすのが気分。ほのかなピンクは自然な品が出て気に入っています」
for Circulation|こまめにコリをほぐして血流改善
みずほ電子鍼(シルバーB型/手前)は、電気や電池も不要の電気治療器。足裏ケア用のヤムナのフットウェイカーズ(奥)は肩や背中にも使用。
「首や肩がこると顔への血流が滞り、くすみなどの原因に。みずほ電子鍼は手軽に使えて便利です。美しい人は巡りが良い人。日々、血流改善を意識しています」
for Snack|小腹を程よく満たすナッツ
美肌に欠かせないビタミンEをとりながら小腹を満たしてくれるナッツ。最近のお気に入りは、「ホアンソン」の皮つきカシューナッツ(右)と、成城石井のミックスナッツ(左)。
「カシューナッツは渋皮つきで香ばしく、ほんのり塩味で止まらなくて(笑)。ナッツは1日に片手分くらい食べています」
自分らしく、美しく、軽やかに。未来の自分が輝くために、挑戦を続けていきたい
PROFILE
ふじわら・みちこ/ビューティ・ライフスタイルデザイナー。1958年秋田県生まれ。美容学校卒業後、松永タカコ氏に師事。22歳で独立後、ヘア&メイクアップアーティストとして美容の第一線で活躍。’92年に「LA DONNA(ラ・ドンナ)」を設立し、千吉良恵子氏、小田切ヒロ氏など、多くの人気アーティストを輩出。2017年にライフスタイルブランド「MICHIKO.LIFE(ミチコドットライフ)」のプロデューサーに。’22年4月にLA DONNAを解散し、42年に及ぶヘア&メイクの活動を終了。著書多数。インスタグラム(@michiko.life)や、有料コンテンツ「MICHIKO’S DIARY 日々のこと」、音声プラットフォーム「Voicy」の「藤原美智子のビューティライフ」でも自分らしく輝くための情報を発信中。
『美的GRAND』2022秋号掲載
撮影/須藤敬一 ヘア&メイク/永田紫織(nous) 構成/松田亜子
※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。