フェムゾーンの不快感から脱却!幸せな40代のための「GSM」克服ガイド|美的GRAND
「腟がかゆい」「尿漏れが心配」「痛くてセックスしたくない」など、女性器や泌尿器の不快な症状は、年齢を重ねるほど深刻化。今、ケアする人としない人とでは、この先の生活に大きな差がつきます!
腟と骨盤をしなやかにすることが鍵!
幸せな40代を過ごすための「GSM」克服ガイド
GSMとは…閉経に伴う、フェムゾーンの不快症状
閉経関連尿路生殖器症候群
閉経後、女性ホルモンの低下により起こる生殖器(外陰部・腟)や泌尿器の萎縮変化、尿路の機能障害。’14年、米国の学会で病態として承認された。
GSMの主な症状
1. 腟と外陰部の不快感
腟や外陰部の乾燥が進行して、かゆみや痛み、ムズムズ感、ニオイなどが気になるように。
2. 尿のトラブル
頻尿、尿漏れ、再発性膀胱炎など、泌尿器関連の悩みが増加。
3. セックスのトラブル
性交中の痛みや出血、セックスレスによる腟の廃用性萎縮や性的意欲低下などが起こる。
50代以降の半数はGSM。40代からのケアが必須!
日本女性の平均的な閉経年齢は50・5歳で、個人差はあるものの、その前後5年の45〜55歳がいわゆる更年期。その間、頭痛やめまい、ホットフラッシュ、うつ、不眠などに悩まされる人は多くいますが、これらの不調は更年期を過ぎれば落ち着くもの。ところが、泌尿器と生殖器に起こるさまざまな不調=GSMは、その後も続くのでやっかいです。
「GSMの主な症状は、(1)腟や外陰部の痛み、かゆみ、(2)尿漏れや頻尿、(3)性交痛などセックスのトラブルです。50代以降の女性の半数以上はGSMといわれています。その予備軍となる40代でもGSMの類似症状が出ることは珍しくなく、予防とケアは早いに越したことがありません」(女性医療クリニック LUNAグループ理事長・関口由紀先生/以下同)
GSMの最大の原因は、加齢による女性ホルモンの減少
女性ホルモンにはエストロゲンとプロゲステロンの2種類があり、特にエストロゲンの低下はGSMの発症に大きく影響。40代から急激に減少し、閉経後はずっと低いまま。
女性ホルモンの減少によってフェムゾーンが潤い不足に
「女性ホルモンのエストロゲンには、肌や髪など全身の潤いやハリを保ち、女性らしい体を作る働きがあります。特にフェムゾーン(腟、外陰部、泌尿器)は、良くも悪くもエストロゲンの影響を受けやすい部位。閉経に向けてエストロゲンの分泌が大きく減少し、その恩恵を受けられない状態が続くと、腟や外陰部の粘膜や皮膚組織に乾燥や萎縮が進み、かゆみや炎症、頻尿、尿漏れ、性交痛などのGSM症状が起こりやすくなります。また、腟の内部の粘液が減少してバリア機能が低下し、雑菌が侵入しやすくなるため、おりものにニオイが発生したり、腟炎や尿道炎、再発性膀胱炎などの感染症にかかるリスクも高まります」
腟が乾燥すると、トラブルが多発!
女性ホルモン低下による潤い不足は、腟や外陰部の皮膚や粘膜下のコラーゲンやエラスチンを減少させ、各パーツの萎縮、変形、ハリ低下、炎症などさまざまなトラブルを引き起こす。
さらに、骨盤底のダメージが絡むと尿トラブルが悪化
骨盤底の筋力が弱いと尿漏れをブロックできない
「GSMの症状のひとつでもある尿漏れや頻尿などの尿トラブルは、女性ホルモンの減少だけでなく、骨盤底の損傷や劣化=骨盤底障害が主な原因です。骨盤底は筋肉、靭帯、筋膜、皮下組織などから構成されるプレート臓器。便や尿は骨盤底の筋肉を緩めることで排泄されます。ところが、加齢や運動不足などによる骨盤底の筋肉量の減少、出産経験で骨盤底損傷を来すと、尿道を締める力が弱くなり、子宮や膀胱など骨盤内の臓器が下垂、尿路を圧迫し尿漏れや頻尿症状が増えるのです。骨盤底障害とGSMが絡み合うことで尿トラブルは進みますが、40、50代のまだ症状が軽いうちに骨盤底を鍛えれば、8割は改善すると言われています」
まずはGSMの進行度をCHECK!
閉経はまだ先という人でも、まずは自分のフェムゾーンと向き合って、GSMのリスクレベルを確認することは大切。早期にケアを始めることで、この先のQOL(生活の質)も上がります。
\GSMの各症状について、4段階から最も当てはまる数字に◯をつけてください。/
※「性交」とは腟性交だけでなく、愛撫、前戯、マスタベーションなども含む。
※チェック表は『セックスにさよならは言わないで』(径書房)を参考に作成。
【診断】上の表で◯のついた数字の合計があなたのGSM進行度!
40点以上
重度のGSMの可能性があります。早急に婦人科や泌尿器科を受診してください。
20〜39点
中等度以上のGSMの可能性があります。3か月以上セルフケアを続けても症状が改善しない場合は、医療機関を受診しましょう。
20点未満
今のところは安心なレベル。ただし将来的にGSMになる可能性はあるので、今から日々のケアを始めましょう。
さらに!GSMが悪化要因になる骨盤底ダメージのレベルもCHECK!
骨盤底障害は、主に骨盤底の筋肉量や筋力の低下、靭帯の損傷などが原因で起こります。今の自分の骨盤底の状態や骨盤底筋群のダメージ度を知って、尿トラブルの改善に役立てましょう!
次の項目で当てはまるものをチェックしてください。
- 座っている時間が長い
- 妊娠・出産の経験がある
- くしゃみや咳がよく出る
- 下腹部がぽっこり
- 呼吸が浅い
- 閉経を迎えた
今すぐ始めよう!GSMの予防と対策
日本人は文化的に、フェムゾーンを「触れてはならない場所」として放置しがち。でも、乾燥によるトラブル悪化は顔と同じです。GSMの予防や対策は、見て、触って、様子を確かめながらの丁寧なケアが大前提。さらに運動の習慣化も重要です。
予防&対策1
優しく洗浄して清潔に保つ
「腟と外陰部は元々湿っているのでムレやすい上、汚れが毛に絡まって雑菌の温床になることも。かゆみやムズムズ感、ニオイ、性感染症などを防ぐためにも清潔に保つことが大切です。外陰部は石けんをよく泡立てて優しく洗い、腟内と腟前庭(小陰唇の内側)は石けんをつけずにそっと洗い流しましょう」
フェムゾーンのpHに近い弱酸性のソープがおすすめ!
A.保湿成分を含むグリーンクレイ配合。
石澤研究所 アルジタル デリケートハイゾーンソープ 250ml ¥2,860
B.腟カンジダにも有効なホロトキシン含有エキスを配合。
たかくら新産業 ピュビケア オーガニック フェミニン メディソープ ローズ&イランイラン 220ml ¥2,530
C.東三河産の植物成分配合。
Waphyto インティメイト ウォッシュ 120ml ¥2,750
保湿しながらホルモンケアも!
女性ホルモン様抗酸化物質をブレンドした美容液「LUNAPRIDEスキンプレミアム」(右)と、微量の女性ホルモンを含むオイル「ホルモードモアゴールド(左)を混ぜて塗ってエイジングケア。関口由紀先生監修。
LUNAPRIDE LUNA エイジングケアセット 各60ml ¥13,200
予防&対策2
しっかり保湿して潤いやハリをキープ
「女性ホルモンの減少により皮膚の乾燥がひどくなるのは、顔もフェムゾーンも同じ。洗顔後の肌と同じように、フェムゾーンも洗った後にしっかり保湿することが最も重要なGSMの予防になります。保湿剤は、クリーム、オイル、ジェルなど自分の使いやすいもので。人さし指と中指に少量とり、中央→腟前庭→小陰唇→大陰唇の順に優しく塗って、余ったら肛門周辺にものばしましょう」
フェムゾーン専用の保湿剤はタイプもいろいろ!
A.和漢植物エキス配合の美容クリーム。
サンルイ・インターナッショナル アンティーム オーガニック ホワイト クリームFF 100g ¥2,860
B.肌なじみのいい低刺激の保湿ミルク。
トレスマリア ミルク 100ml ¥5,500
C.美容液のようにさらっとした100%天然由来オイル。
WRAY ナチュラルインティメイトオイル 100ml ¥4,600
D.みずみずしい感触の保湿ジェル。
ラブピースクラブ YES インティメイト・モイスチャージェル VM 100ml ¥3,630
予防&対策3
骨盤底筋トレーニングで筋力&血流UP
「骨盤底には複数の筋肉がハンモック状に位置し、膀胱や子宮など骨盤内の臓器を支える、尿や便の排泄を調整するといった役割を担っています。ところが、女性ホルモンの低下や運動不足で骨盤底の血流が悪くなると、筋力が衰えて、それらの機能を果たせなくなります。ただし骨盤底筋は、意識して鍛えることで筋力UPが可能。血流も良くなって、GSM症状の改善にもつながります」
腟に指を入れて骨盤底筋の動きを確認して!
骨盤底筋はインナーマッスルなので、自分がしっかり動かせているかどうかはわかりづらいもの。腟に指を入れてセルフチェックしてみましょう。
(1)体育座りで脚を広げる
(2)人差し指を腟の中に入れる
(3)第2関節まで入れたら、指を引き込むように腟を締める
骨盤底筋を鍛える基本の動き
骨盤底筋を強化するには、骨盤底を意識した局所的なトレーニングが必要。肛門、腟口、尿道口を自分の意思どおりに収縮できるように練習します。
1.肛門を締める
自然に呼吸しながら、肛門を2〜3回軽く締める。次にギューッと2〜3秒締める→4〜6秒リラックスを2〜3回繰り返す。
2.腟口と尿道口を締める
自然に呼吸しながら、おしっこを途中で止める感じで前方を2〜3回軽く締める。ギューッと2〜3秒締める→4〜6秒リラックスを2〜3回繰り返す。
3.肛門・腟口・尿道口を引き上げる
息を吐きながら3〜4秒かけて骨盤底筋群全体を限界までもち上げ5〜10秒キープ。息を吸いながらゆっくり筋肉を緩める。これを2〜3回繰り返す。
いつでもどこでも意識的に骨盤底筋を引き上げ!
上の基本のトレーニングは、局所を動かすだけなので、いつでもどこにいても行うことができます。通勤中や仕事の合間などのルーティンにしても。
\仕事中/
\通勤中/
おなかやお尻は動かさず、骨盤底周辺のみを引き上げるように意識。しっかり締めて、丁寧に緩めることをメリハリよく行って。
腟トレアイテム活用を習慣に!
「骨盤底筋トレーニングのコツがつかめない」「自分ができているかわからない」という人は、腟トレボールを使ってみるのも手。ボールを腟に入れ、落ちないように骨盤底筋を収縮弛緩させます。毎日15分程度のトレーニングで血流も筋力もUP!
腟に入れたまま、歩いたり、家事をしたり…普段どおりに生活するだけで骨盤底筋が鍛えられる。
ボールの中にコロコロ転がるおもりがIN!
重さの異なる3つのトレーニングボールのセット。体を動かす度に中に入っているおもりが転がって筋肉を刺激。
ラブピースクラブ INTIMINA ラゼルセット ¥6,930
6種のウエイトを使い分け、自分のペースで腟トレ
50〜130gと6段階のウエイトがあり、初心者から上級者まで、症状やその日の体調に合わせて幅広くトレーニングできる。
ラブピースクラブ フェムフィット ¥8,580
予防&対策4
ダイレーターで腟を拡張&柔軟に
「GSMの症状のひとつである外陰腟萎縮や性交痛などの対策に、『ダイレーター』と呼ばれる棒状の医療器具の使用を指導することがあります。腟内にダイレーターを出し入れし、腟を拡張させる方法。細いものから徐々に太いものに移行させることで、挿入への恐怖や痛みを和らげます」
色も形も優しいイメージで恐怖心や抵抗感なく挿入できる
直径1.25〜3.25cm、挿入可能な長さ7.5〜14cmと、5種類の太さ・長さがそろっているので、小さい方から順に自分のペースで練習できる。シリコン素材で弾力性があり、表面はスベスベとしたシルクのような触り心地。底の穴に指を引っかけて用いる。
ラブピースクラブ Inspire シリコンダイレーター 5本セット ¥11,000
クリニックでの治療法
セルフケアで解消できないGSM症状は、女性外来(婦人科や女性泌尿器科)に相談を! 症状のレベルや目的に合わせた治療が行えます。
(1)エストリオール腟錠の処方
エストロゲンの一種「エストリオール」の腟錠を週1回腟に挿入し、腟の萎縮や炎症を改善。保険適用(3割負担で¥2,000前後/月)。
(2)ホルモン補充療法
全身にエストロゲンを補充する治療法(HRT)。連続して飲むタイプ、2日に1回貼るタイプ、下腹部や太ももに塗るタイプなどから選べる。
(3)レーザー治療
腟を引き締めるには「HIFU」、しっとりさせるには「モナリザタッチ」、ふっくら・しっとり引き締めるには「インティマ」がおすすめ。
予防&対策5
インナーケアで女性ホルモンをUP
「GSMをケアする食事は、偏食をせず、良質なたんぱく質、ビタミン・ミネラルをしっかりとるのが基本。女性ホルモンUPのためには、女性ホルモンに似た作用の成分を含む大豆製品がおすすめです。また、ネバネバ系の食材に含まれる水溶性ペクチンは、肌や粘膜を健康に保つ上、女性ホルモンの原料となるテストステロン(男性ホルモン)の分泌も促します」
大豆製品
豆腐、納豆、豆乳などの大豆製品には、女性ホルモン様成分の大豆イソフラボンが豊富。
ネバネバ食品
山芋、オクラ、なめこなどのネバネバ食品は、女性ホルモンの原料となるホルモンの分泌を促す成分を含有。
サプリメントも味方に!
「普段の食事のサポートとして、エクオールやプラセンタなど女性ホルモン様作用やエイジングケア効果のある成分のサプリメントをとるのもおすすめです」
大豆由来のエクオールを手軽にとれる!
エクオールは、大豆イソフラボンから腸内細菌の代謝によって作られる女性ホルモン様作用をもつ成分。「エクエル」は、合成・抽出・濃縮をいっさい行わず、大豆を乳酸菌で発酵させて作ったエクオール含有食品。1日4粒でエクオール推奨摂取量の10mgをとれる。
大塚製薬 エクエル 112粒(28日分) ¥4,320
『美的GRAND』2022夏号掲載
撮影/李 有珍(aosora・静物) イラスト/リバー・リー(Softdesign) 構成/つつみゆかり、有田智子
※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。
せきぐちゆき/横浜市立大学大学院医学部泌尿器病態学修了、同大学客員教授。横浜市立大学医学部附属病院にて女性泌尿器外来担当。2005年、横浜に女性泌尿器科・婦人科の総合クリニックを開院。www.luna-clinic.jp