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2012.5.14

大高博幸の美的.com通信(100) 6月のオススメ、『ワン・デイ』&『キリマンジャロの雪』 試写室便りNo.26

 

©2011 Focus Features LLC. All Rights Reserved.

2人の23年。
運命の日“7月15日”だけで紡ぐ
誰もみたことのない、ラブストーリーの誕生!
『ワン・デイ 23年のラブストーリー』
原題:ONE DAY
6月23日から全国ロードショー。
詳しくは、oneday.asmik-ace.co.jpへ。

アン・ハサウェイ(真面目でしっかり者だけれど、恋には不器用なエマ役)×ジム・スタージェス(自由奔放な恋多き青年デクスター役)のコンビによる、非常にユニークなラブストーリー。
これは仕事・恋・結婚etc、「自分なりに充実した人生を歩んで行こう」と真剣に考えている全女子 (&全男子)必見の映画。上映時間は107分です。

大学の卒業式で初めて言葉を交わした1988年7月15日に始まり、主役2人のその後の23年間を各年の7月15日だけで物語るという、かつて観た覚えのない構成。比較的長めに描かれる その日もあれば、たったワンシーン(エマがプールで泳いでいる場面のみ=デクスターは不在、2人の仲がブランクという日々を意味している)の1997年の その日というのもあって、2人の“ワン・デイ”は人生としても映画としても相当変化に富んでいます。
親友なのか恋人なのか よく分からない付き合いが延々と続き、2人が性的に結ばれるのは付き合い始めてから14 年ほど経ってからのコトですから、これは本当にレアケースですよね。But、“なさそうで ありえる恋のプロセス”という気が観ているうちにしてきます。その間にエマは作家になる夢の実現に少しずつ近づき、デクスターはTVのロック番組のMCとして活躍した後、大きな挫折を経験します。
この辺りの展開は相当面白いと言うか興味津々、特に若い皆さんには参考になるコトが山ほどありそう…。Yes、この映画は単に2人が“くっついたり離れたりするだけの話”ではないところがgood。そして、ストーリーに関しては結末はモチロン、その経緯についても詳しくは述べずにおきますが、1つだけ言うと、この映画には宣伝文通り、“衝撃と涙の”結末が待っています。
ホロ苦く、かなりジーンとさせられたり、笑わせられたりもする、観ごたえのあるロマンス物。特に20 代~30 代前半ぐらいの“仕事も恋も手探り状態”の真只中にいる皆さんには、心からオススメの一篇です。僕は観賞後、「若さというモノは大切にしなくちゃいけないよ」とおっしゃった、武者小路実篤さんの1957年の言葉を想い出したりもしていました。

アン・ハサウェイを僕がスクリーンで観るのは、『ブロークバック・マウンテン』、『プラダを着た悪魔』、『アリス・イン・ワンダーランド』に続いて4回目ですが、今までで一番優れた演技を示していると思いました。数年前、アカデミー賞の授賞式でMCを務めた際の彼女はミョーにハシャギすぎていて、その浮わついた印象にガッカリさせられた記憶もありますが、この映画では全ての場面で役になりきっていて好感を抱きました。あと10年も経ったら、アン・バンクロフトのような成熟した真の大人の女優になれるかも、という予感さえ覚えたほどです。1992年のフランスの海辺での水着姿、ブランニューな衣装で現れる1996年のナイトクラブでのドレスアップ姿、2002年の教会の場面でのシナ服姿など、ファッションアイコンとしての面目も躍如。しかも最初のほうで丸眠鏡をかけた、見かたによっては野暮ったい姿もチャーミングでした。
ハンサムな演技派のジム・スタージェスも好演。自堕落な日々を送る自分自身に落ち込んでいるというシチュエーションに於いても、本質的な品の良さが消えていないところが良かったのですが、白毛混じりの髪になって登場する2011年の場面で、その顔に漂う清々しさが非常に印象的でした。彼の両親を演ずるケン・ストットとパトリシア・クラークソンも適役好演。この2人には素晴らしいセリフが幾つかありました(ここに書かずにおくのが残念なほどです)。
最後に撮影の美しさについて。特に夜明け前の場面での淡彩的なブルーのトーン、深夜の場面でのディープなブラックブルーのトーンなど、それらは正しくプロの技でした。

 

©AGAT Films & Cie, France 3 Cinema, 2011

マルセイユを舞台とした、
ある夫婦の心あたたまる物語。
『キリマンジャロの雪』
(原題:Les Neiges du Kilimandjaro)
6月9日から岩波ホールにてロードショー。
詳しくは、kilimanjaronoyuki.jpへ。

アーネスト・ヘミングウェイの有名な小説とは(従ってグレゴリー・ペック主演で映画化された同名の作品とも)全く無関係。この新作は文豪ヴィクトル・ユゴーの長篇詩『哀れな人々』から着想されたオリジナルシナリオによるモノで、題名は映画の中で歌われるシャンソンの曲名から採られています。
内容は、厳しい状況に置かれてもなお、弱者を思いやる心の豊かさ・美しさを描いたヒューマンドラマ。30年間連れ添ってきた夫婦のミシェル(ジャン=ピエール・ダルッサン)とマリ=クレール(アリアンヌ・アスカリッド)が、思わぬ犯罪に見舞われて苦しみ戸惑いながらも、最終的にある決心をするまでを描いた上映時間107分の佳品です。
簡素で誠実な淡々とした作風(監督はロベール・ゲディギャン)と、出演者達の自然でリアルな演技に、僕は好感と共感を覚えました。
これから観る方々のためには余り書かないほうがいいとも思うのですが、事件の後、少々溝も生じてしまったミシェルとマリ=クレールのベクトルが、偶然のようでいて必然的に合致するラスト近くの場面が、とても感動的でした。お互いに尊重しあって生きてきた夫婦ならではの充足感が、そこに集約されていたからです。

P.S. 印象に残ったセリフを3つだけ。
ミシェルがポツリと音読するジャン・ジョレス(哲学者)の言葉、「勇気とは、個人レヴェルで責任を負うことである」。
マリ=クレールが娘のフロランスに言うセリフ、「人生(の価値)は自分で決めるの。(私自身にとって)何が大切か(が最も重要なのよ)」。
マリ=クレールがミシェルに言うセリフ、「(キリマンジャロへの)旅行は夢でいいわ。ここで幸せになれれば(それでいい)」。
ゆるがない心を持って生きるって、本当に大切なコトですよね。

 

★お詫びと訂正です。
通信(91) 『ヘルプ』の紹介文の最後に、P.S.2で記した「ブサイクってのは心の中で育つもの」というセリフは、ミセス・ウォルターズではなく、回想シーンの中でコンスタンティンが少女時代のスキーターに言い聞かせるセリフでした。劇場で再度観て、自分の記憶違いに気づきました。大変失礼いたしました。ここに訂正させていただきます。ごめんなさい。

※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。

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