大高博幸さんの 肌・心 塾
2011.12.16

大高博幸の美的.com通信(80)『永遠の僕たち』、『善き人』etc. 試写室便りNo.20


ピュアで奇妙で、衝撃的なまでに美しいラブストーリーの傑作誕生!
『永遠の僕たち』(原題=Restless)
★詳しくは、eien-bokutachi.jp
≪12月23日から全国ロードショー≫

デニス・ホッパーの忘れ形見であるヘンリー・ホッパーと『アリス・イン・ワンダーランド』のミア・ワシコウスカ+ハリウッド映画出演2作目の加瀬亮という顔触れ。監督は『エレファント』でカンヌ映画祭パルムドール(最高賞)を受賞したガス・ヴァン・サント。

ストーリーについては、予備知識をあまり持たずに観るほうがいいと思うので、ココでは簡単に済ませますが、ひとことで言うと、17才ぐらいのピュアな男の子と女の子の、いじらしくなるほど愛らしい、しかも風変わりなラブ・ストーリー(凡庸な日本公開題名からは想像しにくいほどに)。
淡々とした緩やかなテンポ、上映時間90分の作品で、ハリウッド映画にしては珍しく、フランスのヌーヴェルヴァーグのような独得の雰囲気を感じさせます。

この映画の鍵ともなる台詞…、ミア演ずるアナベル(鳥や虫の研究が趣味)の「“夕日が沈むと死ぬ”と思い込んでいる鳥たちは、朝が来ると生きて目覚めた喜びで、美しい声で鳴くのよ」という台詞が印象的でした。なるほど、夜明けと同時に家のまわりで小鳥たちが実に嬉しそうにさえずるのは、そういうワケだったのかと素直に納得。それが鳥の話だけではない意味を含んでいるコトは、御推察のとうりです。

本作がプロとしてのデビューとなるクリーンカットな美形のデニス・ホッパーは、内気そうな男の子としてスクリーンに現われ、憂い顔と微笑が非常に魅力的。この一作で多くのファンを獲得しそう。実年令は20歳。
ミア・ワシコウスカは積極的な男の子っぽい性格の女の子役で、『アリス…』や『アメリア  永遠の翼』の時よりも新鮮で美しい。ショートヘアが似合っていて、ある時期のミア・ファローの再来のようにも見えました。実年令は21歳。
ふたりとも若く引き締まった肌が羨ましいほどキレイ。でも、大クローズアップになった瞬間、「スクラブ+サンスクリーン+ホワイトニングアイテムでケアすべき」なんて思ったりもして…。

もうひとつ特筆すべきは、ふたりのスタイリング。病院のお仕着せのパジャマはベツとして、すべてが本当にオシャレです。フツーに見えてフツーではなく、高価かどうかには関係なく、素晴らしくカッコいい。プレス用資料をチェックしてみたら、ダニー・グリッカーという今注目の衣装デザイナーによるモノとのコト。服装でキャラクターを定義づけるという方法が、非常にうまく成されていました。

この映画は、生きる&愛するコトについて、みんなに何かしら(多分、勇気や歓喜)を教えてくれる作品です。暗く重くなりがちな“死”というテーマを含めて、暖かく爽やかに、やや乾いたタッチで描いています。
彼氏とでもOKですが、気の合う女友達と一緒に観てください。

 

ヒトラーに小説を気に入られた、一人のドイツ人大学教授。“正しき道”を歩もうとする彼の葛藤が、深い感慨を呼び起こす――。
『善き人』(原題=GOOD)
詳しくは、yokihito-movie.comへ。
≪新年1月1日から全国順次ロードショー≫

1937年から’42年までのベルリンを舞台としたヒューマン・ドラマ。
以下、プレス用資料から略筋を引用します。
「1930年代、ヒトラー独裁が進むドイツ。ベルリンの大学で文学を教えるジョン・ハルダーは、善き人であろうと心がけて生きる平凡な男だ。実際に彼は、病身の母を介護する善き息子であり、妻の代わりに家事をする善き家庭人であり、プルーストの講義に情熱を傾ける善き教師であり、戦争を共に戦ったユダヤ人モーリスの善き友であった。しかし、そんなジョンの生き方を一変させる出来事が起こる。過去に書いた小説をヒトラーに気に入られたことから、ナチ党に入党せざるをえなくなったのだ。それは、生き延びるための余地のない選択。だが同時にモーリスを裏切る行為でもあった。やがてドイツ国内で反ユダヤの動きが激化。親衛隊の幹部に出世したジョンは、国外脱出を望むモーリスに手を貸そうとするのだが…。」

この映画は、今年公開された『黄色い星の子供たち』や『サラの鍵』とは異なる視点で作られています。迫害する側とされる側の物語そのものではなく、普遍的な「ひとりの善良な人間が、時代の波にひきずられて意図せぬ方向へ流されていく様」を、おそらく敢えてドラマティックには扱わず、冷静なタッチで簡潔に描いた上映時間96分の作品です。
時代背景等を考えると120分以上の長さになってもおかしくない題材ですが、それらを極力排除して、主人公の葛藤、苦悩、「自分が無意識のうちにどれだけ深い罪を犯していたかに気づき、愕然とする」に至る過程…、そこに的を絞っているという感じでした。

元日からの興行に、この作品を当てるというのは相当勇気のいる話だと思いますが、お正月だからといって浮かれた気分の映画でなければいけないという決まりなどは元々なく、まして人としての道を極めていこうと考える人が多くなってきた“今という時代”を考えると、むしろ賢明な決断と言うべきかも…。

ジョン・ハルダー役のヴィゴ・モーテンセンの上品な演技を筆頭に、親友モーリス役のジェイソン・アイザックスら、男優陣の知的で抑制の利いた演技が見事です(ただし女優陣は、ベストなキャスティングとは言えない気がしました)。

ショックを受けたのはラストの数分間、ユダヤ人収容所をジョンが訪れるシークエンス。衰弱しきっていて、かろうじて今日は生きているという印象のユダヤ人男性10名ほどが、崇高なまでに美しく、音楽を演奏している(or演奏させられている)場面。「これは現実か?」とつぶやくジョン。頬を伝わる一筋の涙。そこへまた、大勢のユダヤ人が運び込まれてくるのです。

 

銭はなくとも、その身ひとつで時代を駆ける! 江戸時代末期の品川で起こる波瀾万丈、悲喜こもごもの人情物語。
『幕末太陽傳』 (デジタル修復版)
★詳しくは、nikkatsu.com/bakumatsuへ。
≪12月23日から全国順次ロードショー≫

今から54年前に封切られた日本映画黄金期の傑作を、製作当時のスタッフの協力を得て修復し、初公開時そのままの形でリバイバル…。
“日活”のマークがスクリーンに映し出された途端、心臓がドキドキと高鳴ったのには自分でビックリ。小学3年生の時に観た映画なので懐かしさも手伝ったとは思いますが、それだけではない何かが僕の体の中から湧き上がって来たようでした。

時は幕末(明治維新の6年前)、品川の色町でのお話で、落語種を巧みに映画化した風俗喜劇。“横浜”を“横浜村”と呼ぶ台詞が数回出てくるほどなので、コレは本当に昔むかしの物語。But、それが機関銃的に発せられる台詞&大わらわのテンポでモダンに描かれているため、少しも古さを感じさせません。フツーならメソメソするようなシチュエーションまでがドライ&痛快に描かれていて、補助席も不足した超満員の試写室では、客席からヒンパンに笑い声が上がっていました(まるで封切当時の映画館内のような雰囲気。見ず知らずの人たちと共感しあっているという感覚で、コレは最高)。

修復がうまく成されていたからという意味ではなく、画面がピカピカにキレイ。黒と白のコントラストがシャープで、中間明度のディテイルまでクリアかつニュアンスフルに撮影されています。

出演者は主役級から脇役に至るまで実に豪華。第1主役のフランキー堺(僕たちは“フラさん”と呼んでいた)のイキの良さ、時代劇初出演の石原裕次郎(僕たちは“裕ちゃん”と呼んでいた)の珍しいチョンマゲ姿、南田洋子と左幸子の色っぽいコメディエンヌ振り等々、まばたきするヒマさえありません。エキストラ(?)の犬までが、偶然でしょうが名演技を見せてくれます。
高杉晋作役の裕ちゃんは、男優では唯ひとり、目張り(アイライン)を切れ長&相当太めに入れていて…、でも頬がふっくらもったりしているのに目尻だけ釣り上がっているという少々アンバランスな印象…。そこがまた可愛かったです。
見どころは盛り沢山ですが、南田洋子と左幸子の取っ組みあいの大ゲンカが凄い。縁側のような所で始まって、庭から井戸端へ、そして家の1階、2階へと続き、手すりから半身押し出されるロングショットに至るまで、激しく延々と続きます。
今回、改めて観て愛着を感じたのは、殿山泰司と市村俊幸(“ブーちゃん”)。とても上手で味があって、悲しいワケでもないのに、涙をポロリと1粒こぼしました。

監督は、45歳の若さで急逝したハイセンスな奇才、しかもハンサムこの上なしの川島雄三。

古典落語好きの皆さん、時代劇映画好きの皆さんには(チャンバラのシーンはないけれど)絶対にオススメ。 モノクロ、スタンダード、上映時間は110分です。

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