大高博幸さんの 肌・心 塾
2018.1.2

『 はじめての おもてなし 』『 5 パーセントの奇跡 』『 ドリス・ヴァン・ノッテン 』 試写室便り 【 大高博幸さんの 肌・心塾 Vol.428 】

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©2016 WIEDEMANN & BERG FILM GMBH & CO. KG / SENTANA FILMPRODUKTION GMBH / SEVENPICTURES FILM GMBH

裕福だけど壊れかけた家族が、ひとりぼっちの彼を〝 おもてなし 〟するはずが…。

ドイツ・アカデミー賞 観客賞受賞、
400 万人が笑って泣いた心温まる物語。

はじめてのおもてなし
ドイツ/ 116 分
1.13 公開/配給:セテラ・インターナショナル
www.cetera.co.jp/welcome

【 STORY 】 ミュンヘンの閑静な住宅地で暮らすハートマン家。夕食の席で、母 アンゲリカの予期せぬ難民受け入れ宣言に 家族は大騒ぎ。教師を退職したアンゲリカは、家で時間を持て余していたのだ。父 リヒャルトは反対するが、難民施設から ひとりぼっちの青年 ディアロがやって来る。家族は初めてのおもてなしに張り切るが、大騒動が起きてしまう。夫婦は大ゲンカ、ディアロの亡命申請も却下され、思わぬ試練に直面することに。( 試写招待状より )

テンポよく軽快に展開するハートフルコメディ。難民問題そのものではなく ハートマン家の問題に重点が置かれていて、スクリューボールコメディ調にオーバーなシークエンスも含まれているものの、実は 程よく深い内容。笑いを誘いながら、ドキッと来る会話を幾つも織り込んでいるところが 本作の最大の魅力です。家族間の見解の相違が招く 少々険悪な場面に真実味があって面白く、難民青年 ディアロの純粋で素直な思いが ハートマン家全員の心を揺り動かしていく…、そこが一番の見どころでしょう。

ワーカホリックな長男は、おそらく それが原因で妻と離婚、ひとり息子に淋しい思いをさせていますが、人並み ( 以上かも ) に愛情は豊か。31 歳になっても自分探しの旅を続けている長女は、人生の指針を摑めずにいるものの、フェアーで優しい心の持ち主。現役の医師で いつも不機嫌な家長のリヒャルトだって 本当は とてもいゝ人だし、その妻のアンゲリカも 感性・知性ともに優れていて、決して自分勝手な人間ではありません。
そんな一家が 最終的に互いを受け入れ、ディアロのために結束してしまうラストに嘘がなく、観終えてハッピーな気持ちに浸れました。しかし 本作は、難民を受け入れよう! といった意図で作られたモノでは 決して ありませんので、その点、誤解のないように…。

脇役として登場するタレク ( リヒャルトの部下で、八つ当たりされるコトの多い研修医 ) と ハイケ ( アンゲリカの友人で、ハイテンションすぎて迷惑千万な 難民支持派の女性 ) 、そして ホンの端役に近いベーカリーのレジ係の女の子にも 注目していてください。

脇筋ながら 興味深かったのは、肉体的な衰えを非常に気にしているリヒャルトが、プチ整形に通いつめたり ( 家族には 極秘にしているものの、とっくにバレている ) 、若作りの格好でディスコに入りびたったりしている場面。それは 笑いを誘いはするものの、目の下のシワに ヒアルロン酸注射の針が ブスッと深く入るクロースショットなど、観ているほうが痛くなるほどでした ( それにしても、プチ整形医自身の肌は、締まりが なさすぎ ) 。

かなり露骨なエッチ話が 上品な部類に属しているのは、脚本・監督の サイモン・バーホーベンのお手柄。エンドクレジットの途中に映し出される 1 カットも お見逃しなく ( ディアロの台詞とリヒャルトの表情の変化に注目して ) 。出演者は、僕にとっては なじみのない顔振れでしたが、よく知っている身近な人たちのような気が、不思議なほど しました。

 

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© ZIEGLER FILM GMBH & CO. KG, SEVENPICTURES FILM GMBH, STUDIOCANAL FILM GMBH

95 %の視力を失った青年が、5 ツ星ホテルで働くために〝 大芝居 〟を打つ!

実話を映画化、大ヒットを記録! 
笑って泣ける ハートフル・エンターテイメント!!

5 パーセントの奇跡
~ 嘘から始まる素敵な人生 ~
ドイツ/ 111 分/ PG 12
1.13 公開/配給:キノフィルムズ
5p-kiseki.com

【 STORY 】 「 5 ツ星ホテルで働きたい! 」 先天性の病気で 95 %の視覚を失った青年が、夢を叶えるために 一世一代の〝 大芝居 〟を打つ! なんと 目が見えないということを隠して、一流ホテルで見習いを始めるのだ。持ち前の明るさと機転を利かせ、周囲からの助けも借りながら、ホテルの研修課題を次々とクリアしていく。ところが、ある女性との出会いにより、完璧だった偽装計画が 徐々に綻び始めてしまう。果たして、無謀とも呼べる夢は叶うのか、そして 恋の行方は――? ( 試写招待状より )

のっけからネタバレになりますが、主人公の青年 サリーの無謀な夢は叶い、恋は暗礁に乗り上げた末に成就する…。この 誰もが「 ありえない 」と思って当然の物語は 正真正銘の実話であり、サリーは後に昇格し、最高級ホテルのレストランマネージャーとして活躍できたのです。

しかし この映画の一番の良さは、サリーの努力の過程を つぶさに描いている点にあります。わずか 5 パーセントしか見えない目を、聴覚・触覚・嗅覚はモチロン、記憶力から想像力まで総動員して補う姿、さらには 彼の障がいに気づいた同僚や仲間が、彼に力を貸すという展開が素晴らしい。ともすると重く深刻になりがちな題材であるにも拘らず、徹底的に前向きな性格のサリーが 懸命にスキルを磨いていくプロセスは、観ていて嬉しくなるほどでした。

最初の人事面接の日、遅れてやって来た 同じ応募者のマックス ( 女ったらしの放蕩息子。サリーとは初対面 ) の窮地を救ったコトから、ふたりが仲よしになるシークエンスが とてもいゝ。マックスは〝 ちょっと難あり 〟タイプながら根は善人で、それから先、何かとサリーを助けるのですが、他にも サリーの障がいに気付いた人物が 力を貸すという場面がありました。それもコレも、サリーの人柄と〝 本気の挑戦 〟に心を動かされてのコトでしょう。

サリー役は、現在 33 歳の コスティア・ウルマン ( 父親はドイツ人で演劇監督、母親はインド人でバレリーナ ) 。背は あまり高くないようですが 体型が美しく、エスニックな雰囲気と端正な甘いマスクの持ち主。しかも 表情と体の動きが とびきりチャーミング。マックス役の ヤコブ・マッチェンツは完璧な適役で、これほどまでに好感を与える〝 ちょっと難あり 〟のキャラクターは 珍しい。サリーが恋をするラウラ役は アンナ・マリア・ミューエ。その他、サリーの母と妹、ホテルの皿洗い係のハミド ( 祖国では外科医だったアフガニスタンからの移民 ) 、鬼教官 クラインシュミットらも印象的でした。

監督は『 白バラの祈り ゾフィー・ショル、最期の日々 』で知られる マルク・ローテムント。本国ドイツの劇場では 笑いと涙の渦に包まれ、クチコミで大ヒットを記録したとのコト。当連載の読者の皆さんにも「 観て良かった! 」と感じていたゞけるはずの佳作です。

 

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© 2016 Reiner Holzemer Film – RTBF – Aminata bvba – BR – ARTE

「 時代を超えたタイムレスな服を目指している。この撮影を通じて 成否を判断してほしい 」。

孤高のファッションデザイナー〝 ドリス・ヴァン・ノッテン 〟。彼の創作の謎に迫る――。

ドリス・ヴァン・ノッテン
ファブリックと花を愛する男
ドイツ、ベルギー/ 93 分
1.13 公開/配給:アルバトロス・フィルム

【 INTRODUCTION 】 世界のセレブリティやファッションアイコンが愛して止まないラグジュアリーブランド〝 ドリス・ヴァン・ノッテン 〟。これは 企業買収の嵐や共同経営者の死を乗り越え、唯一無二のブランドを牽引する天才デザイナー、ドリス本人に迫る初ドキュメンタリー。広告は一切しない、自己資金だけで活動する、手軽な小物やアクセサリーは作らない。洋服だけで世界と勝負する潔さは、他の一流ブランドとは正反対。美しいものを愛し、スキャンダルとは無縁で、何事にも全力で取り組む 完璧主義者の 彼が のぞかせた素顔とは。( 試写招待状より。一部省略 )

25 年にわたり、レディースとメンズのコレクションを 合わせて 年 4 回 発表し続けてきた ドリス・ヴァン・ノッテンに、約 12 ヶ月間 密着。ベルギー・アントワープのアトリエ、インドの刺繍工房、イタリア・コモの布工場、パリのショールーム、さらにアントワープ郊外の優雅な邸宅にカメラが入るほか、’14 年 9 月にグランパレで開催されたレディースコレクション、’16 年 1 月にオペラ座で発表されたメンズコレクションの舞台裏、加えて ドリス自身が解説する 過去のコレクション映像までを織り込んだ内容です。

監督・脚本・撮影・製作の全てを担当した ライナー・ホルツェマーの仕事には ドリスとの信頼関係が感じられ、公私ともに 28 年来のパートナーである パトリック・ファンヘルーヴェとの「 なれそめ 」に関して「 そこまで 取材する? 」と笑いながら言い出したドリスに、「 できれば、ぜひ 」と控えめながら食い下がる彼の姿勢に、観ていて感服させられました。

ファッション、モードの世界に身を置く方々は モチロン必見。「 なるほど 」とか「 え、そうなの? 」とか 感じるコトが山ほどあるはず。ドリスのトークは当然ですが、特に パメラ・ゴルバン ( パリ装飾芸術美術館 チーフキュレーター ) の言葉は、デザインの芸術性に留まらず、ファッションビジネスの本質についても客観的に述べていて、実に実に素晴らしかったです。

僕自身の印象に残った部分を ひとつだけ記すと、アントワープの邸宅の居間のシーン…。古風な黄色い椅子の近くの台に 花を飾るドリスが、「 こゝに飾る花には 必ず黄色を入れる。椅子の色と揃えるんだ。インテリアの色を繰り返す…、こうすると 部屋に なじむんだよ 」と語っていたところです。

 

 

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ビューティ エキスパート
大高 博幸
1948年生まれ。24歳の時、日本人として初めて、パリコレでメークを担当。『美的』本誌では創刊以来の連載「今月のおすすめ:大高博幸さんが選ぶベストバイ」を執筆。
■大高博幸さんの 肌・心塾
http://biteki.com/beauty-column/ootakahiroyuki

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