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2022.10.21

ゲスト・真矢ミキさん|作家LiLyの対談連載「生きるセンス」第3話「時には有効、三倍速のススメ!」

「年齢を重ねるということはどういうこと?」。楽しいことばかりではないし、かといってつらいことばかりでもない。人生の先輩に訊いてみました。「 私たちに生きるヒントを授けてください」と。40代からの人生が輝く"読むサプリ"。 3人目のゲストは、真矢ミキさんです。 【作家LiLy対談連載「生きるセンス」第3回ゲスト・真矢ミキさん 】

楽しむ人はどんなことも楽しむ。苦しむ人はどんな時でも苦しむ

「50代はねぇ、楽しいよ!! 」
竹がスコーンと割れるような爽快感を持って、ミキさんは言い切った。
それを受けて、パァーッと気持ちが晴れ渡っていくのを思いっきり感じた。

なんだろう、アドレナリン?
なんだろう、この説得力!!

いつ自分の人生が楽しくなるか、は当然その人によるもの。同じなど、あり得ない。しかも相手は、真矢ミキさん。それなのに、どんな占い師にあなたの未来は明るいですよ、と言われるよりも、“あぁーそれなら本当に良かったぁ!!”と叫んでしまいそうになった。それなら私も大丈夫だ!!と何故か本気で思った/思えたのだ。よくよく考えてみれば、それって少し図々しい(笑)でも、それは私のポジティブな性格によるものってわけでもないように思う。
目の前にいるミキさんの「今、とても楽しい」が、曇りなき本音であり彼女の真実であることが、そのエネルギーから直球ドストレートに伝わってきたからなのだ。

言葉ではどうとでも言える、はウソだ。
人は、自分が放つ空気までは決して操れない。
そして、真実以上の説得力はこの世にないのである。

幸せな日々を送る年上の同性は、未来が明るいことの生き証人。私が包まれていたのは、ミキさんの50代と私の50代とは違う、などというつまらない邪念が入り込む隙間などどこにもないほどの眩いオーラ。そこから力と勇気と希望をもらう。そんな感覚。
良いエネルギーを発する人は、まさに生きるパワースポット。ミキさんと話していると、どんどん元気になっていくのを私は肌で感じていた。

「もちろんね、年齢が次の代に行く時ってやっぱり怖いんですよ。きっとそれは、40代から50代、50代から60代でも似たようなものだと思っていて。もう崖にいるんだからこれ以上押さないでー!!とでもいうような(笑) でもね、幸い(時間というものは)鈍行列車なの。急行ではないから。ちゃんと各駅停車でゆっくりと進んでくれるのね。だから、少しずつ慣れていける。怖いと思っていた50歳になっても、1年、2年、と慣れていって、あら? 悪くないじゃない!ってどんどん楽しくなっていった頃に、年下の後輩たちのほうを振り返って“大丈夫だよー! 楽しいよー!”って言えるんです。これもまた同じように、先を進んでくれている素敵な先輩たちが、60代、70代のほうからこちらを振り返って、“大丈夫! ここもなかなかいいよー!”って声がけして下さっていて。希望をいただくんですよね。その過程がわかっているから、崖にいるような感覚とはいっても(大自然の崖ではなくて施設内にある習いごと用の)ロッククライミング程度のものに年々感じるようになってくるんだ(笑)」

「やっぱり!」と改めて思う。
幸せな日々を送る年上の同性は、
未来が明るいことの生き証人。

「素敵な先輩」が後輩に未来の希望を与え、
その後輩がまた誰かの素敵な先輩になっては
「素敵」がどんどん連鎖していく「その路線」に私も乗っていたい。

同性同士の縦のつながりにも、いろんなレールがあると思うのだ。ポジティブな言葉を掛け合う路線がある一方で、「そこから先は、どんどんしんどいよ」「こんなにも苦しくって若い頃のようには全くいかないよ」というような言葉が飛び交う路線もあるだろう。
そして、それらは全てそれぞれのホンネであり、思考がポジティブだろうがネガティブだろうが「その年代ごとの“若い頃のようにはいかない”しんどい現実」は誰にでも事実としてあるだろう。

でも、「楽しむ人はどんなことも楽しむ。
苦しむ人はどんな時でも苦しむ」。
これは、40年生きてきて痛感していること。

苦行の中にすら楽しみを見つけながら生きている人は、年々どんどん幸せそう。苦行のほうが彼女たちを避けてゆくようなイメージすらある。そして、そのような先輩たちは、既婚/未婚、仕事、子供の有/無は関係なく、自分が自分の人生を生きる上での“コツ”のようなものを必ず持っている。生きるって、服やインテリアなどとは比にならないレベルでセンスを問われる行為なのだ。この連載を通して私が研究したい、と思っているものもまさにそれ。

私が感じたミキさんの具体的な秘訣の一つは、本人にも自覚がハッキリとあるわけではないほどにナチュラルなところからきている「凄まじいストイックさ」だ。

「実はね、さっきお話ししたテレビ番組で再会したというボーイフレンドと、その前にも一度だけ、私が宝塚を引退した頃にお会いしているんです。
そもそも彼とは、お付き合いが始まりそうになったくらいの時に、宝塚で男役を目指すから、という理由でお別れしたんです。二頭を追うどころか今はまだ一頭も追えていないような状態なので、とお話しをして。
というのも、(宝塚で魅力的な男性像を作り上げようとしている今)恋愛をしてしまったら、どんどん女っけが育ってしまう!と焦ったんですね。すぐに恋愛からは出なければ!と。

そこからはもう、私はどんどんボーイッシュ/マニッシュになっていったわけです。男っぽい顔で入ったわけではなかったんですけど、顔もどんどん男のようになっていきました。自然に、というのではなくて、私の場合は男性というものを勉強して、自分で真面目に作り上げていった感じです。

一人で山手線にのって、素敵だと思う男性の仕草を箇条書きにしてメモをとったりもしていましたから。劇画の中の世界観から憧れの男役を作り上げる方も多いのですが、私は生身の男性を参考にしてどんどん男性化していったんですね。

でも、ある時、マニッシュな感じが似合わなくなってきたな?と思ったんです。30歳が近くなった頃に。その少し後に引退をして、そのボーイフレンドからお会いしませんかとお声がけしていただいて再会したら、なんと、彼よりも私のほうがずっと“おじさん”になっていたんです!!」

「ッ!! す、すごいお話しです。それはもう、凄まじいエピソードです!! 男性を体現することに命をかけて猛スピードで走っていたからこそ、リアルな男性を飛び越えてしまったんですもんね? 年上の元ボーイフレンドよりも、自分のほうがおじさんにまでなっちゃうくらいに!!」
「そうです、そうです、面白いですよね(笑)」
「しかも、10代の頃の恋愛って、もうメスとしても抗えないくらいの衝動だと私は思っていたんですが、それを自ら掻き消してでも宝塚での男役を選んだというのも凄いです。私はアホだから恋愛をついつい仕事の前に置きがちなので、純粋に圧倒されてしまう。メスの本能よりも男役になる夢を優先させられるって、一流になられる方ならではのジャッジです」

「あはは。メスって(笑) リリちゃんの言い方は、本当に面白い! でも最初から男役のトップを目指していた、というわけでもなくて。
宝塚に入って、私が心から憧れた方が男役のスターだったんですね。どうやら私は、好きな人と話がしたい、というよりも、その人になりたい、と思うタイプだったようで。あの人が通した衣装に私も腕を通したい。あの人の目線になりたい。あの人が見ている光景が見たい。なら、私もスターにならなくっちゃ。あの舞台に私も立たなくちゃって。そんなふうにして繋がっていったんです」

「それはもう“憧れ力の極み”というか! お近づきになりたい、どころか、もう自分がその人になってしまいたい!って凄いです」

「あはは。でも、宝塚だったからたまたまそのように(目指すべき)席があったけど、もしそうじゃなかったら、あの人の服が着たい、なんてかなり様子のおかしな人になってしまいますよね(笑)」

「あはは。でもそこから本当にスターになれてしまったわけですから、凄まじいお話しです。目指し方も、オリジナルで。地道に、自分のやり方で生身の男性を研究していって。山手線でメモまで取って! 本当にストイックですよね」

「あぁ、自分ではあまりそう思ったことはなかったんですけど、ストイックなところはあるのかもしれないなぁと、最近やっと思います」

誰よりもストイックに、一つの目標に向かって猛ダッシュしている最中に頑張っている自覚なし! 「夢中」とは、そのような状態をさすことだし、物事を極めていく過程がミキさんにとっては自然なこと。ナチュラルボーン。つまり、才能。
淡い恋をしはじめていた10代の女の子が、このまま恋愛をしていたら女っぽくなってしまう、と交際から即離脱し、そこから理想の男性像を自らの方法で研究して体現し、宝塚の男役のトップになり、引退後に当時のボーイフレンドと再会したら、生身の男性である彼の成長を通り越して、自分はもはやおじさん化していたというのだ。これだけでも圧倒されるのに、ミキさんはそこから、今度は“三倍速”で「女」を生きはじめたのだという。

>>>次回は最終回。11月上旬公開予定。

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PROFILE
真矢ミキ:’64生まれ。元宝塚歌劇団花組男役トップスター。退団後は、ドラマ、映画、舞台、情報番組のMCなど幅広い分野で活躍 。’23年NHK大河ドラマ『どうする家康』に大河初出演で、愛娘・瀬名の母で今川家の品格を守る気高き女性、巴役を演じる。

LiLy:作家。’81年生まれ。神奈川県出身。N.Y.とフロリダでの海外生活を経て上智大学卒。25歳でデビューして以来、女性心理と時代を鋭く描き出す作風に定評がある。小説、エッセイなど著作多数。instagram @lilylilylilycom noteはこちら

文/LiLy 撮影/竹内裕二(BALLPARK) ヘア&メイク/平笑美子(真矢さん)、伊藤有香(LiLyさん) スタイリング/佐々木敦子 レイアウト/Jupe design 構成/三井三奈子(本誌)

※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。

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