お悩み別ケア
2023.7.17

プロテオグリカン|化粧品としてどんな効果が?【美容成分大全】

プロテオグリカンは、ヒアルロン酸と同じように真皮の中でコラーゲンやエラスチンからつくられる網目構造の隙間を埋める成分で、ハリや弾力を保つのに重要です。高い保水性による保湿効果のほかに、表皮細胞の増殖やヒアルロン酸、コラーゲンの産生を促す働きがあり、肌荒れやシワ・たるみに対する効果も期待できます。日本化粧品検定協会が美容成分をくわしく解説する【美容成分大全】。成分を正しく理解して、コスメ選びの参考に!

プロフィール

成分名 プロテオグリカン
表示名称 水溶性プロテオグリカン(医薬部外品の表示名称:アラビアゴムなど)
主な配合アイテム スキンケア、メイクアップ、ボディケア、ヘアケア、ネイルケア
成分のはたらき 保湿、細胞の増殖促進、真皮ヒアルロン酸の産生促進、コラーゲンの産生促進、メラニンの生成抑制
医薬部外品としての効能効果

どんな「効果・働き」があるの?

  • 保湿
  • 細胞の増殖促進(EGF様作用)
  • 真皮ヒアルロン酸の産生促進・分解抑制
  • コラーゲンの産生促進
  • メラニンの生成抑制

肌の保湿力を高める

保湿

プロテオグリカンは構造中に水との親和性が高い多糖類をもっていて、乾燥した状態でも水分を捕まえる能力に優れるため、保湿効果が高いと考えられます。プロテオグリカンを塗ったことで、顔の肌の水分量も油分量も増加したという報告もあります。

肌荒れを改善する

細胞の増殖促進(EGF様作用)

プロテオグリカンは、表皮細胞の増殖促進作用があることが確認されています。表皮角化細胞や線維芽細胞などの細胞の増殖を促す作用があるEGF(Epidermal Growth Factor)は「上皮細胞増殖(成長)因子」とよばれ、このEGFに似た働きをすることを「EGF様作用」といいます。この作用により、表皮細胞の増殖を促し、肌荒れを改善する効果や保湿力を高める効果が期待できます。

シワ・たるみを改善する

真皮ヒアルロン酸の産生促進・分解抑制

真皮の細胞である線維芽細胞は、真皮成分であるヒアルロン酸を産生する働きがあります。プロテオグリカンには、この線維芽細胞の働きをサポートし、ヒアルロン酸の産生を促進する作用が確認されています。ヒアルロン酸の産生を促すことで、皮膚のしなやかさやハリを向上させる効果が期待できます。プロテオグリカンを塗ったことで、顔の肌の弾力性が向上したという報告もあります。

また、ヒアルロン酸を分解する酵素“ヒアルロニダーゼ”の活性を抑えるというデータもあり、ヒアルロン酸の分解を抑制する働きもあると考えられます。

コラーゲンの産生促進

真皮の細胞である線維芽細胞は、コラーゲンを産生する働きもあります。なかでも、真皮内のコラーゲンはⅠ型コラーゲンが約80%を占めています。プロテオグリカンはこの繊維芽細胞の働きをサポートし、Ⅰ型コラーゲンの産生を促進する作用が確認されています。皮膚のハリの低下やシワを改善する効果が期待できます。

プロテオグリカンを塗ったことで、真皮のコラーゲンの密度が高くなり、全てのシワの長さを合わせた数値やシワの総面積が改善されたデータがあります。

美白・シミを予防する

メラニンの生成抑制

メラニンの生成を抑える作用があり、美白効果が期待できます。プロテオグリカンを塗ったことで、色素沈着(シミ)の部分の面積が小さくなったという報告もあります。

美容賢者からの「アドバイス」

日本化粧品検定協会代表理事

小西 さやか


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期待の健康素材として注目!

プロテオグリカンは、化粧品に限らずサプリメントにも利用されています。2000年に弘前大学が魚のサケの鼻軟骨からの抽出技術を確立したことを機に、サントリーウェルネスやダイドードリンコといった大手メーカーでも相次いで採用され、2017年以降には機能性表示食品としても発売されています。

コラーゲン、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸等と並ぶ大型の健康素材として成長に期待が高まっています。

「歴史・由来」その他の雑学

「プロテオ」はプロテイン、つまりタンパク質を、「グリカン」は多糖類を意味します。プロテオグリカンは、糖とタンパク質の複合体で、糖タンパク質の1つです。「コアタンパク」とよばれる、芯となるタンパク質にコンドロイチン硫酸などのムコ多糖(グリコサミノグリカン)が枝のように結合した形をしています。

プロテオグリカンに含まれる多数のグリコサミノグリカンは親水性のため、水を柔軟に保持しながら、弾性や衝撃への耐性といった機能を担っています。

プロテオグリカンは、元々ヒトの体内(真皮、関節)にも存在するもので、1つの物質ではなく、構成するコアタンパクの種類やムコ多糖の種類によりさまざまな種類が存在します。コラーゲン線維やエラスチン線維でつくられる網目構造の中で、その隙間を埋める基質の主要構成成分の1つとして皮膚の真皮や軟骨など体内に広く存在しています。真皮中では、コラーゲンやヒアルロン酸などと絡まり合い構造体をつくることで身体組織や皮膚組織を維持しています。また、組織形成や伝達物質としての役割など、組織の維持・修復にも関係していることが知られています。

歴史

1954年にShattonとSchubertが、それまで行われていた抽出法よりマイルドな条件で軟骨から抽出したコンドロイチン硫酸が、タンパク質が結合して一体化していることを明らかにしました。これを機にコンドロイチン硫酸に対する概念が大きく変わり、プロテオグリカンの研究が盛んにおこなわれるようになりました。

1969年にはSajedraとHascallにより、さらにマイルドな抽出条件によるプロテオグリカンの抽出法が開発され、結合体としての解明が進められました。これにより、生体内に存在している自然な形でのプロテオグリカンを利用して皮膚に対する作用の研究が進められるようになりました。

プロテオグリカンは、優れた保湿効果をもっているため、保湿成分として配合されていましたが、最近では皮膚に対するさまざまな作用を期待して配合されるようになっています。

古くは牛の気管軟骨や鶏のトサカから抽出されたプロテオグリカンが利用されていましたが、現在ではサケの鼻軟骨由来やサメの軟骨由来のものが利用されています。そのほか、化粧品原料としてはアラビアゴムから抽出した植物由来のものもあります。

主な原料の由来

動物(サケの鼻軟骨など)、植物(アラビアゴムから抽出)

医薬品には使用されません。サケ鼻軟骨由来プロテオグリカンは、機能性表示食品に対して、機能性関与成分として使用されます。「本品にはサケ鼻軟骨由来プロテオグリカンが含まれます。 サケ鼻軟骨由来プロテオグリカンには、膝関節の不快感を持つ方の軟骨成分の 分解を抑え、関節軟骨の保護に役立ち、膝関節の可動性をサポートすることが報告されています。」などと表示されています。

注意事項

鮭は食物アレルギーの表示義務がある特定原材料7品目に次ぐ21品目に含まれてます。プロテオグリカンは鮭から抽出されているため、肌に異常を感じたら使用を中止する、使用前に皮膚科専門医に相談するなど、魚アレルギーがある方は注意しましょう。

 

<引用元>
Eur. J. Biochem., 173(2), 261-267 (1988)
フレグランスジヤーナル, 臨時増刊号(4), 102-108 (1983)
科学技術・学術政策研究所 DISCUSSION PAPER No.112, 2015年2月
一丸ファルコス株式会社 プロテオグリカンIPC パンフレット
一丸ファルコス株式会社 リリース, 2020年9月18日
日本経済新聞 Web版, 2017年12月7日
一丸ファルコス株式会社 Webサイト (研究開発, プロテオグリカン・ビジネスフォーラム2020)
株式会社サティス製薬 Webサイト (プロテオグリカンSP)
消費者庁 Webサイト (食物アレルギー表示に関する情報)

※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。

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