お悩み別ケア
2022.11.5

【初心者向け】酸化亜鉛|化粧品としての効果は?

コンテンツ提供:日本化粧品検定協会

概要

成分名 酸化亜鉛
成分の働き 紫外線防御、着色剤、抗炎症、収れん
医薬部外品としての効能効果 肌荒れ防止
表示名称 【化粧品】酸化亜鉛【医薬部外品】酸化亜鉛
主な配合アイテム 【化粧品】スキンケア・UVケア・メイクアップ・ボディケア【医薬部外品】スキンケア・UVケア

効能効果・はたらき

「化粧品」に配合したときの働き

 

  • 紫外線防御
  • 着色剤
  • 抗炎症
  • 収れん

●紫外線防御
紫外線はシミやしわなどの美容面だけなく、皮膚がんの発生などの「光老化」の原因となります。特にUV-Aは、サンタン(日焼けによる皮膚の黒化)や、皮膚の真皮まで到達してしわの原因となります。特に、微粒子酸化亜鉛はUV-Aのカット作用にすぐれています。酸化チタンや紫外線吸収剤と併用して、日焼け止め製品や日焼け止め効果をもつメイクアップ製品に使用されています。

●着色剤
カバー力はそれほど強くありませんが、白色顔料としてファンデーションなどに使用されます。

●抗炎症
炎症を発生させる物質が、毛細血管を透過するのを減少させることで炎症を抑えます。

●収れん
皮膚のタンパク質に結合または吸着して、不溶性の物質や皮膜を形成することで、皮膚の収れん作用があり、皮膚を保護します。

「医薬品」としての効能効果

軟膏の基剤に分散させて亜鉛華軟膏として使用されています。皮膚の剥脱面、湿疹、たむし、膿痂疹(ノウカシン)などの治療薬として用いられるほか、安定化や分散、賦形目的の医薬品添加剤として皮下注射、外用剤で使用されています。

「食品、サプリメント」に配合したときの働き

食品・サプリメントとしては利用されていません。

注意点

微粒子酸化亜鉛は、ヨーロッパではナノ物質として安全性に懸念があるとして管理されています。ただし、現時点で安全性に問題はないとされています。また、ヨーロッパでは、スプレー製品など肺に入る可能性がある製品への使用が禁止されています。酸化亜鉛が配合されたスプレータイプの日焼け止めは、吸い込むことのないよう、顔に直接噴射しないように注意しましょう。

由来・歴史

主な原料の由来

合成

歴史

18世紀の半ば、ドイツのクラメルが、亜鉛を空気中で燃焼させて製造したのが酸化亜鉛の合成の始まりとされています。1781年には、フランスのクルトワがペンキ用白色顔料として製造を開始、1840年にはルクレールにより「フランス法」、1852年「アメリカ法」と呼ばれる製造方法が始まりました。現在では、これらに加えて湿式法も用いられています。

1905年、白粉による鉛中毒問題により、それまで使用されていた鉛白を使用しない白粉として、酸化亜鉛やタルク、カオリン、デンプンからつくられた製品が発売されました。それ以降、酸化亜鉛の白さを利用して白粉やファンデーションなどに白色の顔料として用いられるようになりました。

1990年代にはナノ(nm)(1nm=0.000001mm)の微粒子酸化亜鉛が、主にUV-A(紫外線A波)のカット成分として日焼け止め製品に使用されるようになりました。ヨーロッパでは2016年から紫外線カット剤として使用が許可されました。

その他成分情報

金属である亜鉛を酸化した化合物です。天然では紅亜鉛鉱(コウアエンコウ)として産出されますが、限られたところでしかとれない希少鉱物です。工業的には金属亜鉛を強熱して酸化させるか、炭酸亜鉛を熱分解して製造します。一般的に亜鉛華(アエンカ)ともいわれています。

酸化亜鉛は酸化チタンよりもカバー力が弱いのが特徴です。もともとメイクアップ化粧品の白色顔料として、ファンデーションやベビーパウダー、日焼け止めに使用されていた酸化亜鉛は、粉の大きさが0.3~0.5μm(1µm=0.001mm)とされています。一方、1980年代前半頃から開発された微粒子酸化亜鉛は、粒の大きさをとても小さくすることで透明感を高めていて、粉の大きさは20~50nm(1nm=0.000001mm)とされています。

酸化亜鉛は紫外線を受けると他の物質(化粧品中の油性成分や皮膚が分泌する皮脂など)を酸化させてしまう作用(光触媒作用)があることに加え、亜鉛イオンを少しずつ放出してしまうデメリットもありまる。それを防ぐため、微粒子酸化亜鉛は表面をコーティング処理したものが使用されますが、皮膚に吸収(経皮吸収)されないことから、紫外線吸収剤よりも安全性が高いとされています。

きしみ感が出てしまいますが、透明性が高く白浮きしにくい微粒子酸化亜鉛は、紫外線カット剤として多くの日焼け止めに使用されています。さらなる透明性と紫外線カット効果の両立を目指して開発が行われており、粒子の形状を工夫したものもあります。

また、酸化亜鉛は薬用化粧品の肌あれ防止の有効成分としても配合されます。(化粧水:2%、クリーム・乳液・ハンドクリーム:0.5~10%)

豆知識

日本化粧品検定協会代表理事:小西 さやか

「微粒子酸化亜鉛は「紫外線散乱剤」に分類されていますが、実際には紫外線を吸収する働きもあり、380nmより短い紫外線を吸収する作用があります(UV-A:400~320nm、UV-B:320~280nm)。0.5%程度の酸化鉄(Ⅲ)を微量に含む酸化亜鉛は、淡赤色の粉末でカラミンとよばれます。カラミンを配合したカラミンローション(カーマインローション)はサンバーンによる炎症を抑えるアフターサン化粧品として、昔から使用されています」

小西さやかさんの記事一覧

 

<引用元>
色材, 56(11), 722-728 (1983)
最新化粧品・ヘルスケア講座, 84(9), 329-334 (2011)
日本化粧品技術者会, 化粧品事典, 丸善出版株式会社, p.491,650
日光ケミカルズ株式会社他, 新化粧品ハンドブック, 2006, p.351,390
宇山侊男他, 化粧品成分ガイド 第7版, フレグランスジャーナル社, 2020, p.116,162
吉田製薬株式会社, 酸化亜鉛「ヨシダ」添付文書
薬食審査発第1225001号 (平成20年12月25日) (いわゆる薬用化粧品中の有効成分リストについて)
日本化粧品工業連合会 Webサイト (ナノマテリアルについて)
厚生労働省 Webサイト (食品添加物)
高知工科大学総合研究所マテリアルデザインセンター Webサイト (酸化亜鉛物語)

※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。

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