眉コンプレックスから解放!時代の空気を象徴する「眉の変遷」を徹底考察|美的GRAND
眉企画や眉コスメは数々あるのに、いつまでたっても自分の眉に自信がもてない……そんな悩みを抱える多くの女性たちのために、「眉」について徹底解明。読み終える頃にはきっと、眉コンプレックスから解き放たれるはず。
時代の空気を象徴する「眉の変遷」
美容のプロ2人が「眉」を徹底考察
水野未和子
London College of Fashionでメイクアップを学び、卒業後はフリーランスとして活動スタート。帰国後は雑誌や広告キャンペーンなどで活躍。ミニマルなメソッドで最大限の魅力を引き出す「ディファインメイク」を提唱し、多くの俳優やモデルが信頼を寄せる。最新刊は『ディファインメイクで自分の顔を好きになる』(講談社)。
木津由美子
大学卒業後、外資系航空会社、化粧品会社のAD/PRを経て編集者に転身。『VOGUE』『marie claire』『Harper’s BAZAAR』で美容を担当し、グローバル目線のビューティトレンドやウェルネス企画を展開。2023年独立。早稲田大学大学院商学研究科ビジネス専攻修了、経営管理修士(MBA)。最新刊は『桃井的ことば』(KADOKAWA/編集協力)。
「左右のバランスが取りにくい」「形・濃さが決まらない」「不自然な仕上がりになる」「正解がわからない」……全国の10代以上の女性500人のうち実に84%が「眉にコンプレックスがある」と答えています(「アートメイクナビ」調べ)。そこで今回はズバリ「眉」をテーマに、小誌でおなじみのメイクアップアーティスト水野未和子さんと、ビューティジャーナリスト木津由美子が徹底的に語り尽くします。
水野未和子(以下、水野) メイクアップ企画はいろいろやるんですけど、「眉って難しい」と言われることがいまだに多いんですよね。プロセスページを見ても大概、テンプレートのように形を作り上げて中を塗るといった感じのものがほとんどだからだと思うんです。
木津由美子(以下、木津) 眉毛の状態は人それぞれだから、そもそもテンプレートに当てはめること自体無理がある。かといって雑誌の作り手側からすれば、ひとりひとりの眉に答えを提示することも無理。どうしても最大公約数的な見せ方になる。
水野 さらに右眉と左眉も違うので、共通点を拾ってプロセスをやったところで普通になっちゃう。だからトレンドの形や色という話に行きがち。それで新製品や新色が出たらみんな買うんだけど、使い方が同じだから結局あんまり変わらない。
木津 根本的な解決になっていないということですね。
水野 そう。唇や目元と違って、眉は抜いちゃってる人、生えてこない人、ボーボーな人など人それぞれ、正解がわからないままなんとなくやっちゃってる。知識や情報をもっている“美容賢者”と呼ばれるような人ほど、スクリューブラシで眉を上げてザクッと切っちゃったりして、毛流れがなくなってることが多い。
木津 髪の質感やスタイルについては特集記事も商品も多いし、皆さんすごくこだわるけど、同じ毛でも眉は置き去りな感じがしますね。
水野 自分の眉を客観的に見られるようになったらすごくいいと思うんです。生き生き感や若々しさは、毛の生命力や質感でずいぶん変わります。眉マスカラで色を変える人も増えてるけど、もっともっと手前のところで、一度自分の眉をちゃんと見ることが大切だと思う。
木津 でも「自分の眉を見る」って、なかなか一般的にわかりにくいと思うんだけど、何を見ればいい?
水野 まずは切ったり抜いたりせずにちゃんと生やして、毛流れを見ることですね。切りすぎるってクセになってるし、身だしなみとしてやってるだろうけど、それにしても切りすぎ、短かすぎの人が多いと思う。
木津 まずは切らない、抜かない。自然の状態に戻す。そこから見るべきところは、生え方と毛流れ。
水野 ブラシで毛流れを整えると、見えてくる穴がある。そうすれば余計なことをしなくて済むんです。
木津 美容は全般的にそうだけど、余計な情報の刷り込みが多いですよね。結局、眉って骨格の影響もあって人それぞれだから、それを無視するとおかしなことになっちゃう。
水野 もう少し丁寧に扱おうよ、そうしないとうまくいかないのが、眉。いい眉毛している人って結構いると思うんですよね。でも何が自分にとってキレイな眉かがわかってない。「美人眉の作り方」とかあるけど、美人眉って何? 眉に美人も不美人もないし、その人に合っていれば正解だから。それって、自分の眉を知らないとできない。
眉は人となりを伝え時代の空気を象徴する
木津 眉ってアイデンティティだよね。だから「眉の変遷」というものが成立する。1930年代から並べてみると、10〜20年ごとに細い・太い・細い・太い、と見事に繰り返されている。だから逆に、いかにトレンドに振り回されるのがナンセンスというか、自分の骨格に忠実であるべき、と改めて思いますね。
水野 こうやって見ると、女性の眉は時代を表してるのがよくわかりますね。でも今後、めちゃくちゃ細いのが流行るようには思えないけど。
木津 でもこの法則でいくと、2030年代は細くなるんだよね。
水野 90年代の細眉って、ケヴィン・オークインですよね。その流れで安室ちゃん、あるいは藤原美智子さんのアーチ眉が登場。女性が強く生きたいというか、社会的立場で男に負けないぞっていう時代ですね。
木津 肩パッドと同じだよね。シャープで強い感じ。
水野 今は太眉といってもめちゃくちゃ太くするのではなく、ナチュラルで、どういう形にもしようとしていない。グローバルに見ても、自分の顔に忠実にやってる気がします。今はそんなに闘わなくても、社会的な地位がある程度確立されているから、肩肘張らなくても大丈夫というのがあるのかな。
木津 この眉年表を作るとき、最初は2020年代を外していたんだけど、一昨日くらいに追加したんです。今年のゴールデングローブ賞で主演女優賞を受賞し、アカデミー賞でもノミネートされているエマ・ストーン。『哀れなるものたち』という映画のなかで、眉を太く濃く描いて主張させてるんだよね。新生児の脳を移植された女性の成長の物語なんだけど、意志をもって生きる女性を眉で象徴させているのが見てとれる。#Me Too運動をきっかけに、SRHRといった女性の権利がまだまだないがしろにされていることに女性たちが声を上げ始めている。そんな時代にふんわり眉ではなく、細くキリッとでもない、新しい太眉の時代が来ているのかな、と感じますね。
水野 確かに。ただの流行りというだけじゃない気はします。
『美的GRAND』2024春号掲載
写真/Getty Images 構成・文/木津由美子
※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。