脳科学者・中野信子さん「良い姿勢と良い妄想で、トゲが刺さりにくい心に!」|容姿コンプレックス、人間関係のお悩み解消法とは?
ふとしたときに言われた心ない言葉が、気づくとずっと心につっかえていること、ありますよね?そんな「抜き下手」な私たちに、脳科学者・中野信子さんが心を軽くする方法を教えてくれました。『美的』読者が体験した「心のトゲ」へのアドバイスも必読です。
「良い姿勢と良い妄想で、トゲが刺さりにくい心に!」
かつて言われた一言をうまく消化できず、ふとしたときに思い出し、それが自己肯定感のなさにつながる心のトゲ。特に子供の頃の経験がトゲとして残りやすいのは、10代の脳が学習するために不安を増殖する思考回路だからです。ネガティブな感情が強く残るのも、その方が生存には有利だから。
人は成人するまでに約15万回、否定の言葉を聞く、と言う人もいます。トゲが刺さりやすい思考は、母親など主な養育者との関係性が大きいようです。本当は大したことではなくても、本人は重く捉えすぎたり、事実ではないことをそうだと思い込む「認知のゆがみ」は、自覚しない限り変えられません。
トゲが刺さりにくい心を作ることはできます。例えば、背筋を伸ばして胸を張る強いポーズをすると、男性ホルモンが分泌されてやる気が出ます。笑顔を作ると、顔の筋肉のフィードバックで脳は「楽しい」と感じる。「私はキレイ」と思うだけでもドーパミンが分泌されます。前向きに妄想したり、“形”を変えると内面もついてくるので、メイクもおすすめです!(中野信子さん)
「かわいくない」「細かい。しつこい」…“心のトゲ”にアドバイス
『美的』読者が体験した&言われた“心のトゲ”へ中野信子さんがアドバイス!
「かわいくないから勉強頑張れ」以来、容姿コンプレックスに。(32歳/会社員)
美人にもデメリットがあるんです
実力が同じなら容姿が良い方が選ばれやすいといわれますが、一方で、「うそをついている子供は誰か」という実験で、女性からうそつきだとされるのは容姿がいい女のコでした。また、同じ文章を書いても美人の方が下手だと思われ、美人はリーダーシップがないと判断されて管理職になりにくいというデータも。容姿の良さで能力が目減りして見られるんです。また、容姿が相手にコンプレックスを与えて、いらぬところで敵意を集めたりもする。美人より、身なりをきちんとしている方が周りの敵意を和らげ、得できると思います。(中野さん)
初めましての場所だと、地味な見た目のせいで声をかけてもらいにくい。相手の印象にも残らない。(35歳/会社員)
良い人間関係は容姿とは関係なし
人が集まってくる人はにぎやかそうに見えますが、最終的にきちんとした人間関係を築けるかどうかを決めるのは、容姿とは関係のない部分です。でも、自分と他人を比較することは悪いことではありません。それは、より良くなろうという前向きな気持ちですから。心の負担が重くなりすぎない程度に!(中野さん)
「細かい。しつこい」間違いを指摘した上司から。(44歳/会社員)
正しさと調和のバランスを考えて
人に言われたネガティブな言葉が自分の中で固定されることもあるので、あまり真に受けず聞き流して。「自分は正しいことをした」と、自分に良い評価をしてあげるだけでも快感を得られます。一方で、会社組織での調和を考えて伝え方も調整したいもの。「正しさこそ正義」ではないし、正義も人の数だけあるので、“正義中毒”にならないように振る舞うのも大人です(中野さん)
教えてくれたのは…
脳科学者・中野信子さん
なかの・のぶこ/’75年東京都生まれ。医学博士、認知科学者。東京大学大学院修了。脳科学や心理学の視点で人間社会の事象や問題を解説し、その明快で優しい語り口が人気。最新刊は『空気を読む脳』(講談社)。
美的5月号掲載
構成/松田亜子
※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。