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2018.10.2

『 チューリップ・フィーバー 』『 バーバラと心の巨人 』『 赤毛のアン 』『 L B J 』 試写室便り 【 大高博幸さんの肌・心塾 Vol.467 】

©2017 TULIP FEVER FILMS LTD. ALL RIGHTS RESERVED.
©2017 TULIP FEVER FILMS LTD. ALL RIGHTS RESERVED.(チューリップ・フィーバー画像のみ)

フェルメールの世界から生まれた物語。
絵画ファンとミステリーファンを熱狂させた
ベストセラー本を映像化。

チューリップ・フィーバー
肖像画に秘めた愛
アメリカ、イギリス/ 105 分/ R 15 +
10.6 公開/配給:ファントム・フィルム
tulip-movie.com

【 STORY 】 親子のように年の離れた、裕福なコルネリスと結婚したソフィア。二人の間に燃えるような愛はなかったが、孤児となり 修道院で育った彼女にとって、それは初めて味わう 豊かで安定した暮らしだった。夫は優しく 特に不満もなかったが、彼が切望する跡継ぎができないことが、唯一の悩みだった。そんな中、夫が夫婦の肖像画を、無名の画家 ヤンに依頼する。
キャンバス越しに見つめ合うヤンとソフィアが、恋におちるのに 時間は かからなかった。若く情熱的な画家と 許されない愛を貫きたいと願ったソフィアは、驚くべき計画を思いつく。恋人に去られた後、妊娠に気づいたメイドのマリアの子を、夫の子として 自分が〝 産む 〟のだ。その先の筋書きは 耳を疑う展開だった。前代未聞の〝 替え玉出産 〟は成功するのか? さらにヤンが 二人の未来のために 希少なチューリップの球根に全財産を投資したことから、思わぬ運命が立ちはだかる――。( プレス資料より。一部省略 )

原作は『 マリーゴールド・ホテルで会いましょう 』の作者、デボラ・モガーのベストセラー小説。監督は『 ブーリン家の姉妹 』の ジャスティン・チャドウィック。
物語の舞台は、スペインから独立して 経済的繁栄を極めていた 17 世紀のオランダ。人々は投資と収集に熱を上げ、〝 絵画 〟と〝 チューリップ 〟が二大ブームとなり、財を成した者たちは 自らの成功を形で示そうと、肖像画の制作に熱心だった。一方、チューリップは 縞模様などの希少な品種であれば、球根 1 個が 家 1 軒に相当する価格で売買されるという、信じがたい〝 チューリップ・フィーバー 〟を巻き起こす……。これは そんな時代を背景として、フェルメールの絵画から抜け出て来たような人物たちが繰り展げる、愛の顛末。

映画は メイドのマリアの 回想モノローグで始まり、端的に言うと、大衆小説的な内容を 程よく格調の高さを保ちながら物語るコトに成功しています。その展開は 大体の予測が つきはするものの、また、チューリップのフィーバー振りも 恋のフィーバー振りも 強烈とまでは言えないにしても、最後までドラマとしての興味をそゝります。

興行的価値の高い大スターが出演しているワケではありませんが、相当に充実しているのはキャスティング。ソフィア役に『 リリーのすべて 』( 通信 330 ) 『 光をくれた人 』( Vol.393 ) の アリシア・ヴィキャンデル、ヤン役に『 欲望のバージニア 』( 通信 158 ) 『 ディーン、君がいた瞬間 』( 通信 319 ) の デイン・デハーン、コルネリス役に『 イングロリアス・バスターズ 』で 賞を総なめにした クリストフ・ヴァルツ、マリア役に『 シンデレラ 』( 通信 283 ) で 意地悪なアナスタシアを演じた ホリデイ・グレインジャー、その恋人 ウィレム役に『 不屈の男 』( 通信 326 ) で 主役を演じた ジャック・オコンネル、そして 修道院長役に『 あなたを抱きしめる日まで 』( 通信 211 ) 等の ジュディ・デンチという顔振れ。
中でも特に素晴らしかったのは C・ヴァルツ。コルネリス役に対する彼の解釈が 非ステレオタイプ的であったために、映画全体に 豊かな膨らみが生まれていると 僕は感じました。
A・ヴィキャンデルは、どんな役を演じても常に巧みで、演技力の高い女優だと思います。たゞし、一瞬で「 彼女だ 」と分かるスター性を、もっと前面に出さないと キャリアの上で損をするのでは?
D・デハーンは、30 代になったばかりだというのに、目の下の緩みが かなり目立ってきています。ボーイッシュな雰囲気が 彼の魅力のひとつなので、あまり早く老け込まないように努力をすべき ( 彼のファンの方は『 アクシージア ビューティー アイズ エッセンス シート 』60枚入り 税抜¥7,400 を、彼にプレゼントしてあげて ) 。
マリア役の H・グレインジャーは将来有望。ベット・デイヴィスのような 凄み or 毒気を放つ、演技派スターに成長する可能性を秘めています。

 

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©I KILL GIANTS FILMS LIMITED 2017

いつか必ず来る〝 その時 〟。
悲しみを勇気に変えて、
バーバラは巨人に立ち向かう。

世界が泣いたグラフィックノベル、
「I KILL GIANTS」待望の映画化!

バーバラと心の巨人
アメリカ/ 106 分
10.12 公開/配給:REGENTS/パルコ
BARBARA-MOVIE.JP

【 STORY 】 周囲から孤立する風変わりな少女・バーバラ。だが、彼女には ある使命があった。それは、やがて襲来する巨人を倒すこと――。しかし、姉のカレンや先生、初めて友達になれた転校生のソフィアでさえも、すぐそこにまで迫る巨人の存在を信じず、現実に向き合えと言うばかり。そして遂に、巨人が バーバラの目の前に現れる。果たして 巨人が もたらす試練とは――? ( 試写招待状より )

物語について全く無知な僕は、冒頭、森の中の場面を観ながら、一瞬「 これはホラーに近い内容? 」と想ってしまいました。実際は『 怪物はささやく 』( Vol.398 ) を彷彿とさせ、『 パンズ・ラビリンス 』とは異質と言うべき 1 種のダークファンタジーで、それ以上に 少女であるバーバラの成長物語でした。

原作は、ジョー・ケリー ( 画は ケン・ニイムラ ) の「 アイ・キル・ジャイアンツ 」( 小学館より翻訳版 発売中 ) 。製作は『 ハリー・ポッター 』シリーズを成功に導いた クリス・コロンバスを筆頭とするプロデューサー陣。監督は、アカデミー賞®短篇賞の受賞経験を持つ アンダース・ウォルター。

バーバラが闘っている巨人の意味と、何のために闘っているのかが分かるまでに、僕は かなりの時間を要しました。作劇上、それを伏せておく必要があるので 仕方ないコトだと思いますが、そのために バーバラの真意が不明のまゝ彼女を見守り続けるコトに、少し疲れも感じました。
また、少々以上にゾーッとさせられたのは、バーバラの目の前に巨人が現われる数場面。中でもドラマティックだったのは、終盤に用意された嵐の海辺のシークエンス。そこで巨人を打ち負かしたバーバラが、〝 運命 〟を素直に受け入れる場面、そして 別人のように解放された 清々しい笑顔を浮かべるラストシーンへと続きます。

バーバラが頭に被っているのは兎の耳の帽子。バーバラを演ずる マディソン・ウルフ ( ’02 年生まれ ) は、キュートな少女俳優 ( 『 トランボ/ハリウッドに最も嫌われた男 』( Vol.346 ) でトランボの末娘役を好演 ) で、眼鏡のフレームの影のように、ブリックレッド色のシャドウを 眉の下辺りに ごく軽く入れている感じ。それが 微妙に不思議な印象を醸し出していました。
バーバラと親友になる、イギリスから引っ越して来た 少女・ソフィア役の シドニー・ウェイド ( ’02 年生まれ ) は、整えすぎの眉が気になりましたが ( 彼女のエージェント or 周囲の誰かが そうさせているのでは? ) 、あと 2 ~ 3 年のうちに「 ハムレット 」のオフェーリア役を演じても良さそうな美貌、雰囲気、演技力の持ち主。

本作で いちばん感動的だったのは、バーバラが 詫びながら 〇〇と抱き合う場面、そして それ以上に、夏休みが終った後の学校で、彼女が ソフィアと共に発言する ホームルームの場面でした。バーバラは、そこでは もう、兎の帽子を被っていません。

 

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(c) 2017 GABLES 23 PRODUCTIONS INC.ALL RIGHTS RESERVED.

モンゴメリの不朽の名作、映画化決定版。
第 2 部と完結編、連続公開!

赤毛のアン
第2 部『 初恋 』/完結編『 卒業 』
カナダ/各 90 分/配給:シナジー
『 初恋 』 10.5 公開
『 卒業 』 11.2 公開
anne-movie.jp

【 『 初恋 』あらすじ 】 アンが マシュウとマリラの家に来て 2 年。想像力を発揮しすぎて 自分が考え出したオバケに おびえたり、夜中に老婦人を死ぬほど驚かせてしまったり、はたまた 髪を黒く染めようとして大失敗したりと 大騒動を巻き起こしながらも、分別のある 13 歳にならなくてはと思い悩むアン。そんな中、最悪の出会いをした ギルバートとの 仲直りのチャンスが 訪れるが……。( チラシより )

【 『 卒業 』あらすじ 】 アンは 教師を夢見て、ギルバートらとクイーン学院を受験し 合格。マシュウとマリラのもとを離れての下宿生活で ホームシックに かかりながらも、見事、大学奨学金を獲得して卒業し、将来への夢を ふくらませる。そんな矢先、突然 倒れるマシュウ……。悲しみの中で アンは マリラを支え、愛する我が家 グリーン・ゲイブルズを守るため、人生の大きな決断をする――。( チラシより )

原作者 ルーシイ・M・モンゴメリの孫娘 ケイト・M・バトラーの製作総指揮により、本国カナダで 3 部作として映画化された『 赤毛のアン 』。日本では 昨年公開されて好評を博した第 1 部に続き、第 2 部と第 3 部 ( 完結篇 ) が公開されます。大勢の原作のファンの皆さんは、きっと大喜びしているコトでしょう。

僕は 残念ながら 第 1 部を観ていませんが、今回 2 作を観て感じたコトを正直に記すと、原作のダイジェスト & テレビドラマ風の作りで、登場人物たちの心理描写は やゝ平板……。アン役の エラ・バレンタインは 良くも悪くも芸達者で、カメラ慣れしすぎている印象。クラスメートたちの中で、彼女だけ 顔の表情と雰囲気が ミョーに大人びていて、素朴さに欠けていると思いました ( 僕にとっては、翻訳本 ( 朝日出版社刊 ) の安野光雅氏が描いた挿し絵や、「『 赤毛のアン 』クックブック 」( 原書房刊 ) のイラストのアンのほうが『 赤毛のアン 』らしいイメージなのです ) 。

とはいえ、カナダ・アカデミー賞の青少年向け作品部門で、監督賞 ( ジョン・K・ハリソン ) と演技賞 ( E・バレンタイン ) を獲得した作品です。物語の時代と背景を巧みに再現したロケーション、今日では耳にする機会が 激減した言葉 ( 忠誠心、分別、心の奥の声、ロマンス etc、etc ) を 台詞の中に自然に込めた構成、アンの親友の美少女 ダイアナ ( ジュリア・ラロンド ) や 意地悪なジョシー・パイ ( ステファニー・キンバー ) らのキャラクターを 適役が好演している点など、長所も多々ありました。

今回の 2 作を比較すると、僕は『 卒業 』のほうが好き。物語の展開に、しっくりとした流れが あったからです。

 

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ⓒ 2016 BROAD DAYLIGHT LLC ALL RIGHTS RESERVED.

自分こそが 大統領に ふさわしい、
そう思っていた――。

南部の田舎者から< 国を動かす男 >になった
リンドン・B・ジョンソン、魂の記録。

L B J
ケネディの意志を継いだ男
アメリカ/ 97 分
10.6 公開/配給:ツイン
lbj-movie.jp

【 STORY 】 ジョン・F・ケネディ大統領 暗殺 直後、わずか 98 分で アメリカ大統領に就任した リンドン・B・ジョンソン ( L B J ) 。アメリカで最も多才な大統領の 1 人と評され、経験豊富で駆け引きに長け、鋭い洞察力を持つ事で知られていたジョンソンだが、北東部出身のエリートで人気者のケネディと常に比べられ、南部出身の田舎者でガサツな男と揶揄されていた。ケネディへの憧れと嫉妬、予期せぬ大統領就任。ジョンソンは、のしかかるプレッシャーと先々の不安を跳ね除け、どのようにして公民権法成立という偉業を成し遂げたのか――。( 試写招待状より )

第 36 代 アメリカ大統領 L B J の苦悩と闘いの日々を、回想形式を巧みに採り入れて描いた真実の物語。監督は『 スタンド・バイ・ミー 』で多くのファンを持つ ロブ・ライナー。
主演は『 スリー・ビルボード 』( Vol.433 ) の警察署長役で素晴らしい演技を観せた ウディ・ハレルソン。彼は ジョンソンの話し方や仕草のクセを徹底的にマスターした上、特殊メイクを施して 見事、L B J になりきっています。

映画は 1963 年 11 月 22 日、テキサス州 ダラスのラブフィールド空港の場面に始まります。先にジョンソン副大統領夫妻が、次いでケネディ大統領夫妻が 飛行機から降り立ち、大勢の市民たちの大歓迎を受ける……。こゝで 彼らの人気の大きな違いが ユーモラスに描写され、回想シーンを挟んで、パレード、襲撃の瞬間、ケネディの死、そして ワシントン DC へ向かう エアフォースワン機の中での 新大統領 就任宣誓の場面へと続きます。

その後は、兄の死の悲しみに暮れる ロバート・F・ケネディや リチャード・ラッセルらとの対立、南部 vs 北部、民主党 vs 共和党の深い溝と向き合う L B J の奮闘振りが映し出されるのですが、それ以上に僕が興味を惹かれたのは、L B J 夫人である レディ・バード ( ジェニファー・ジェイソン・リー ) が 夫を全面的に支持し、励まし続ける姿と、それを素直に受け入れる L B J の態度でした。レディ・バードは、おそらく出自 or 育ちに起因する夫の粗骨さや無礼な言動、大多数に嫌われる下品なユーモアのセンス等が 最大のマイナスポイントとなっているコトを充分に承知しながら、そのブレない信念の強さを 100 % 支持し、時には助言を与えるのです。その辺りに、僕は 最も 感動しました。

また、L B J を ほとんど生理的に嫌悪する ロバート役の マイケル・スタール=デヴィッド、R・ラッセル役の リチャード・ジェンキンス ( 『 シェイプ・オブ・ウォーター 』( Vol.435 ) で アカデミー賞®助演男優賞にノミネート ) 、ラルフ・ヤーボロー役の ビル・プルマンらの演技が、本作に強い真実味を与えています。たゞし、ジョン・F・ケネディ役の ジェフリー・ドノヴァン ( 実力派と認められている俳優 ) はミスキャスト。役を演ずるのに不可欠なカリスマ性やオーラが、少しも感じられなかったからです。皮膚感をも含めて。

 

 

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ビューティ エキスパート
大高 博幸
1948年生まれ。24歳の時、日本人として初めて、パリコレでメークを担当。『美的』本誌では創刊以来の連載「今月のおすすめ:大高博幸さんが選ぶベストバイ」を執筆。
■大高博幸さんの 肌・心塾
http://biteki.com/beauty-column/ootakahiroyuki

※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。

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