大高博幸さんの 肌・心 塾
2018.2.20

『 しあわせの絵の具 』『 シェイプ・オブ・ウォーター 』『 ウイスキーと 2 人の花嫁 』『 15 時 17 分、パリ行き 』 試写室便り 【 大高博幸さんの 肌・心塾 Vol.435 】

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(c)2016 Small Shack Productions Inc. / Painted House Films Inc. / Parallel Films (Maudie) Ltd.

「 絵を描きながら、あなたと暮らすのが私の幸せ 」。

カナダで最も有名な画家の、
喜びと愛に満ちた真実の物語。

しあわせの絵の具
愛を描く人 モード・ルイス
カナダ・アイルランド/ 116 分
3.3 公開/配給:松竹
shiawase-enogu.jp

【 STORY 】 叔母と暮らすモードは、絵を描くことと自由を愛していた。ある日、魚の行商を営むエベレットが家政婦を探していることを知り、彼が暮らす町外れの小屋のドアをノックした。幼い頃から重いリウマチを患い 厄介者扱いされてきたモードと、孤児院育ちで 学もなく 生きるのに精一杯だったエベレット。はみ出し者同士の同居生活は トラブル続きだった。しかし モードが作ったチキンシチューを口にして、エベレットは孤独だった心が温まるのを感じる。やがて 2 人は 互いを認めあい、結婚することに。一方、家の壁に描かれたニワトリの絵で 彼女の才能を見抜いたエベレットの顧客 サンドラは、モードに絵の創作を依頼。自分の絵が認められたことが嬉しいモードは、夢中で筆を動かし始めた。壁に、板に、請求書の裏に。そんな彼女を不器用に応援するエベレット。いつしかモードの絵は評判を呼び、アメリカのニクソン大統領からも依頼が来て……。( チラシより。一部省略 )

カナダの小さな港町で、美しい四季と愛らしい動物たちを 色鮮やかに描き続けた モード・ルイス ( 1903 ~ ’70 ) は、アメリカの グランマ・モーゼスと並び称される 素朴派の画家。御存知の方も多いと思いますが、彼女の絵は 現在、オークションで 500 万円を超す高値で取り引きされているほどの人気です。

本作は、モードが エベレットと出会う ’38 年から、関接炎と肺気腫の合併症で亡くなるまでの 32 年間を描いています。幼い頃に 若年性関接リウマチを患い、生涯にわたって手足が不自由で 体も小さかった モード・ルイス。両親を相次いで亡くし、エベレットと結婚するまでは 家庭的にも恵まれなかった彼女ですが、前向きな姿勢と 意志の強さ、万物に対する愛情と 素直な気持ちを持ち続けていたコトが、彼女の後半生を 慎ましくも 満たされたモノにしたのだと、僕は本作を観て感じました。

モード役は『 ブルージャスミン 』( 通信 218。アカデミー賞®助演女優賞ノミネート ) や『 パディントン 』シリーズで知られ、本作の後に主演した『 シェイプ・オブ・ウォーター 』( ゴールデングローブ賞®主演女優賞ノミネート ) で 再び脚光を浴びている サリー・ホーキンス。リウマチのせいで 左右非対称となる笑顔に 晴れやかな美しさが溢れる部分をはじめ、相当 難しかったに違いない役を、全篇にわたって好演しています。
エベレット役の イーサン・ホークは、不器用で無骨な性格を 主に冷淡なタッチで表現していますが、脚本は 実際のエベレット ( 映画の最後に、モードと一緒に過ごす 彼の記録映像が映し出される ) のように、明るいユーモアを感じさせる男として描くべきだったのではと、僕は 何となく思いました。
モードの絵の価値を最初に認める サンドラ役の カリ・マチェット ( カナダの カトリーヌ・フロ といった雰囲気 ) の演技は、シンプルでいて 奥行きを感じさせるところが とても良かったです。

本作は、非常に酷く 悲しい出来事をも含んでいます。しかし、モードとエベレットの 32 年間と モードの描いた可愛い絵が、それらを吹き飛ばして 観る者の胸を熱くする感動作…。世界の国際映画祭等で、5 つの観客賞の他、脚本賞や撮影賞を受賞しました。
監督は、アイルランド・ダブリン出身の アシュリング・ウォルシュ。

P.S. 僕が いゝなぁ と感じた台詞を ひとつだけ。
「 あれは 妖精か? 」( 壁に描かれた 猫の絵を見て、エベレットが モードに聞く台詞 ) 。

 

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(C)2017 Twentieth Century Fox

ベネチア国際映画祭 金獅子賞受賞。
アカデミー賞®最有力!

シェイプ・オブ・ウォーター
アメリカ/ 124 分/ R 15 +
3.1 公開/配給:20 世紀フォックス映画
shapeofwater.jp

【 STORY 】 1962 年、アメリカ。政府の極秘研究所に勤めるイライザは、秘かに運び込まれた 不思議な生きものを見てしまう。アマゾンで 神のように崇められていたという〝 彼 〟の 奇妙だが どこか魅惑的な姿に心を奪われたイライザは、周囲の目を盗んで 会いに行くようになる。子供の頃のトラウマで 声が出せないイライザだったが、〝 彼 〟とのコミュニケーションに 言葉は必要なかった。二人の心が通い始めた時、イライザは〝 彼 〟が 間もなく 実験の犠牲になると知る――。( 試写招待状より )

傑作『 パンズ・ラビリンス 』( 2006 ) の奇才、ギレルモ・デル・トロの最新作 ( 監督・脚本・製作・原案を担当 ) 。彼は 本作で ゴールデングローブ賞®の監督賞を受賞。主演は、前述の『 しあわせの絵の具 』で モード役を演じた サリー・ホーキンス。内容は『 人魚姫 』『 シザーハンズ 』『 美女と野獣 』のジャンルに属す、種族を超えた「 サスペンスフルでユーモラス、かつ官能的な、究極の ファンタジー・ロマンス 」。

僕は 2 度、試写会に出向きましたが、2 度とも満員で 入場できませんでした ( 昨年 12 月には『 ゴールデンサークル 』も NG …。新幹線に乗って行ったというのに、ホントにガックリ! ) 。
というワケで、本作については 紹介のみ。公開されたら映画館で観ます。デル・トロ作品には 多少グロテスクな描写が必ずあるので、今回も例外ではないと想いますが、『 パンズ・ラビリンス 』よりも分かりやすく、『 クリムゾン・ピーク 』( 通信 323 ) とは 比較にならないほどの 特別な作品だと僕は想像しています。

 

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(C)WhiskyGaloreMovieLimited2016

NYへ向かうはずの 5 万ケースものウイスキーの運命。
不器用で愛すべき島民たちが奏でる、
ユーモラスな〝 結婚狂騒曲 〟!

ウイスキーと 2 人の花嫁
イギリス/ 98 分
2.17 より公開中/配給:シンカ
www.synca.jp/whisky

【 STORY 】 ロンドン空爆が 激しさを増す 第二次世界大戦中のスコットランドのトディー島。島民たちが こよなく愛する ウイスキーの配給が止まってしまい、皆 完全に無気力に陥っていた。郵便局長 ジョセフの 2 人の娘は それぞれの恋人との結婚を望んでいたが、周囲から「 ウイスキー無しじゃ結婚式はムリ! 」と猛反対されていた…。そんな時、NY 行きの貨物船が 島の近くで座礁。沈没寸前の船内には、なんと 5 万ケースものウイスキーが積まれていた!「 これは きっと 神様からの贈り物に違いない! 」と、島民たちは 禁制品のウイスキーを 秘かに〝 救出 〟しようとする……。( 試写招待状より。一部省略 )

牧歌的ともメルヘン的とも言える ノスタルジックな味が魅力の、上質なドタバタ調 ハートフル・コメディ。ロンドンは戦火に見舞われているというのに、こゝトディー島は ウイスキーの欠品 ( 英国内の醸造所の多くが 爆撃で破壊されたため ) という一大事さえなければ、ひねもす のたり のたりかな てな安配…。肩すかしを覚えるほど のどかで、戦争の影は ほとんど感じさせません。

本作は、スコットランドのエリスケイ島沖で 大量のウイスキーを積んだ 大型船 SS ポリティシャン号が座礁したという史実をベースとして、島の郵便局長 ( グレゴール・フィッシャー ) と彼の娘たち ( ナオミ・パトリックと エリー・ケンドリック ) の普遍的な親子の情を軸に、ウイスキーに目のない ユーモラスでお茶目な島民たちの 強い連体感を 面白おかしく描いています。いつも酔いどれていながら 職務に忠実な老牧師の説教に、島民たちが耐え抜くシークエンス等々、近年の映画には珍しい ほっこりとした愉しさを味あわせてくれます。大物スターが出演していないコトは 少々淋しい気もしましたが、だからこそ 独得の味が醸し出されているのだ とも思いました。

特筆に価するのは、全篇のトーンを保ちながら 巧みに変化をつけている ナイジェル・ウィロウビーの撮影。特に 島民たちが ボートで漕ぎ出す 夜の海の場面…、蒼い月の光とオレンジ色のランプの明かりに照らされた 海面の美しさは圧倒的で、こんな映像は 他に想い出せませんでした。

監督は グラスゴー芸術大学出身のジェントルマン、ギリーズ・マッキノン。コンテが よく練られていて、編集も最上です。
俳優は、島民にとって邪魔な存在となるワゲット大尉 ( エディ・イザード ) に至るまで、全員が 適役を好演。険しい顔つきのワゲット大尉も 決して悪い人間ではないと、観客に 理解・納得させるのが 彼と その妻君 ( フェネラ・ウールガー ) との やり取りという演出も、とてもとても洒落ています。娘たちの恋人役を演ずるのは、日本でも顔を知られている ケヴィン・ガスリーと ショーン・ビガースタッフ。

 

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(C)2018 Warner Bros. Entertainment Inc., Village Roadshow Films (BVI) Limited, RatPac-Dune Entertainment LLC

いつ、どこで、誰もがテロに直面してもおかしくない今、
当事者の目線から テロの時代を生きる私たちに問いかける 真実と現実。

クリント・イーストウッド監督 最新作。

15 時 17 分、パリ行き
アメリカ/ 94 分
3.1 公開/配給:ワーナー・ブラザース映画
www.1517toparis.jp

【 STORY 】 2015 年 8 月 21 日、パリ行きの高速列車 タリスが、乗客 554 人を乗せて、15 時 17 分、アムステルダム駅を発車した。列車がフランス国境に入った後、トイレに潜んでいたイスラム過激派の男が、突然 自動小銃を発砲。乗客たちの悲鳴の渦の中、武装した犯人に 僅か半秒で 反射的に立ち向かったのは、ヨーロッパを旅行中のアメリカの若者 三人組だった。なぜ彼らは恐れるコトなく、テロリストに敢然と立ち向かえたのか…。

これは 実話を忠実に再現した、ドキュメンタリーのような劇映画。主役の若者三人を演じているのは、実際に事件の現場で犯人を取りおさえ、乗客全員の命を救った 本人たち ( スペンサー・ストーン、アレク・スカラトス、アンソニー・サドラー ) 。しかも 事件が起きた 走るタリス内で撮影を行なうという、究極のリアリティを追求した 前代未聞のトライアル的作品です。
監督は『 アメリカン・スナイパー 』『 ハドソン川の奇跡 』の C・イーストウッド。彼は 36 本めに当たる本作で「 新境地を開いた 」と評されています。たゞし 前記のような作品を期待して観ると、拍子抜けするかも知れないので、その点は 理解した上で観るほうがいゝかも。

前半は 一種の回想形式によって、少年時代の三人が 友情の絆を強めていく過程を描写し、ヨーロッパ旅行中の彼らの姿、そして タリス内の場面へと進んで行きます。
ラストは 事件の数日後、三人が 英国人 クリストファー・ノーマン ( 三人に加勢した初老の紳士 ) と共に、レジオン・ドヌール勲章 ( フランス最高の名誉ある勲章 ) を授けられるエリゼ宮殿の場面。そこで オランド大統領の語るメッセージが 非常に感動的でした。なぜなら そのメッセージには、彼らの行動を率直に讃える言葉と共に、全世界の人々への 熱い励ましが込められていたからです。僕は つい、ポロポロと涙をこぼしました。エンドロールも終って 場内が明るくなった時、涙を拭いている人が 数多く見受けられたので、みんな 気持ちは一緒なんだなぁと感じながら 試写室を後にしました。

 

 

アトランダム Q&A企画にて、 大高さんへの質問も受け付けています。
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biteki-m@shogakukan.co.jp
(個別回答はできかねますのでご了承ください。)

ビューティ エキスパート
大高 博幸
1948年生まれ。24歳の時、日本人として初めて、パリコレでメークを担当。『美的』本誌では創刊以来の連載「今月のおすすめ:大高博幸さんが選ぶベストバイ」を執筆。
■大高博幸さんの 肌・心塾
http://biteki.com/beauty-column/ootakahiroyuki

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