俳優・田中美里さん「もう一歩前に進みたいと思う方に観てほしい」映画『美晴に傘を』インタビュー|美的GRAND

1月24日に公開されて以来、口コミで絶賛の声が相次ぎロングラン上映中の映画『美晴に傘を』。自然豊かな北海道の小さな町を舞台に、家族の再生を描いた物語です。
本作で、夫を亡くし、自閉症の娘を持つ母親・透子を繊細に演じたのは、俳優の田中美里さん。取材に現れた田中さんは、どこまでも自然体。「なぜか街でよく道を聞かれるんです(笑)」というのも納得の、柔らかく優しい雰囲気を纏っています。
この日は、渋谷悠監督をはじめとする映画スタッフも集まり、和やかなムードに包まれた取材現場に。映画『美晴に傘を』について、40代からの新たなチャレンジ、そして最近ハマっている美容について、たっぷりと話を伺いました。
「武装してでも踏ん張る」透子の強さ
──映画を通して、一番印象が変わっていくのが透子だと思います。そしてまさにGRAND世代の女性。透子はどのような女性ですか?
最初の透子を見ると、都会から田舎にやってきて、少し浮世離れした存在という感じですね。自立していて、弱みを見せない。でも本当は、夫を亡くして、“2人の娘を育てるんだ”とすごく気を張っていて、武装しているようなところがあると思います。アクセサリーを付けたり、しっかりおしゃれもして、そんな余裕ある?と思われがちだけれども、それが、彼女の「踏ん張る力」なんですよね。
──それぞれの「言葉」が物語の重要な要素だと思いますが、登場人物のどんな言葉が心に残りましたか?
娘の美晴が話す擬音語ですかね。美晴が一歩踏み出す時に言う「ワクワクドキドキ、チョチョイのドン!」みたいな言葉って、大人でも、ちょっと頑張らなきゃいけない時にひとつあるといいなと感じました。
──幅広い世代の方がそれぞれの立場で感じることがある映画だと思います。どんな方に観て欲しいですか?
本当にいろんな方に響く映画だと思います。働くお母さんや、ひとりで頑張っている人、親の立場、子の立場。美晴のように、ちょっと勇気を出したい人、もう一歩成長して前に進みたいと思う人にもぜひ観ていただきたいです。あとは、その場に立つといろんなことがよみがえってくるような「ふるさと」って皆さんそれぞれあると思うので、そんな場所に思いを馳せるきっかけにもなるかなと思います。
40代からは「苦手だったけど本当は好きなこと」に挑戦
──仕事との向き合い方で、以前と変わってきたことはありますか?
若い頃は「自分がどう見られているか」を気にしすぎていたように思います。でも今は、自分の軸をしっかり持つことが大事だと考えるようになりました。オフの日でも早寝早起きを心がけて、体調管理をすること。あとは、「私は今日どんな気分なんだろう」と、細やかに自分に向けて聞くようにしています。そうすることで、自分の気持ちを理解しやすくなりました。
──仕事とプライベートはどのようにバランスを取っていますか?
40代からは「苦手だったけど本当は好きなこと」に挑戦しようと思って、鉛筆画や水彩画、書道を始めました。仕事では多くの人と関わるので、プライベートではひとりで集中できる時間を大切にしています。でも、そういう場で新しい仲間が増えたり、いろんな職種の方と出会えたりするので、それがまた役に生きる事もあって、全部繋がってるんですよね。帽子作り※も、元々は趣味で始めたことですが、一緒にやりませんかとお声をかけていただいて、ブランドをプロデュースすることになって。色んなところでご縁が繋がっていく不思議な感じがしています。最近は、ボイストレーニングを始めたんです。年を重ねてきて、喉の筋肉が弱くなってきてるなと感じていて。楽しいけれどへとへとになります(笑)。
※2019年に帽子ブランド『ジンノビートシテカッシ』を立ち上げ、プロデュースを手がけている。
歳を重ねるごとにどんどん進化している
──20、30代のころに比べて、今、体調の変化などなにか感じることはありますか?
実は20代の頃の方が体力がなくて、すぐ疲れたり風邪をひきやすかったんです。体動かすのもそんなに得意じゃなかったので避けていたんですけど、トレーニングを始めてから体幹が強くなって、今の方が健康だと感じます。精神的にも打たれ強くなりましたし、人とも積極的に会うようになりました。なんでもコツコツ続けることで、どんどん進化している感じがしますね。
──体や心の不調には、どのように向き合っていますか?
無理に抗わず、受け入れるようにしています。そして、調子が悪い時は周囲に「今日はちょっとしんどいから、口数少ないけどごめんね」など、ちゃんと伝えるようにしています。以前は周りに悪いなと思って言わなかったんですけど、逆効果になることの方が多かったんです。明るく言ってしまう方が、誤解も生まれませんし、自分の気持ちも楽になるんですよね。
──普段どんなスキンケアをされていますか?
最近、美顔器を買って毎日使っています。肌に水分がないと動いてくれないので、自然と保湿も意識するようになりました。そうしたら乾燥もしなくなったし、肌にハリも出ました。それから「舌回し」も習慣にしています。テレビを観ている時とか、歩いてる時も、マスクをしてたら舌回しをしながら(笑)。表情筋が鍛えられて、コロナ期間に緩んだ顔がリフトアップしました。やっぱり役者なので、表情を大事にしたいんです。いい笑いジワがでるように心がけてはいますね。
──映画の中でもリップを塗るシーンが印象に描かれていますが、ご自身では普段メイクをどのように楽しんでいますか?
メイクって自信のない部分を後押ししてくれるものですよね。ちょっとリップを塗るだけで元気になれたりとか、肌をちょっとだけ明るくするだけで、外に出たいなって思えたり。メイクをすると「よし、行くぞ!」とスイッチが入るような気持ちになります。透子がメイクをする場面も、ちょっと勇気がいる瞬間だと思うので、自分に自信をくれるスイッチを入れていたんじゃないかなと思います。
──それでは最後に、美的GRAND読者へのメッセージをお願いいたします。
「美しくいたい」という気持ちって、体や心が健康でないと、それすら思えない時もありますよね。なので、よく寝て、よく食べて、よく笑って。新しいものにもワクワクしつつ、古いものも大切にしつつ、素敵な笑いジワを作っていきたいなと思っています。一緒に楽しんでいきましょ(笑)!
profile
田中美里
1977年石川県生まれ。1997年、NHK連続テレビ小説『あ
その後、ドラマ・映画・舞台に多数出演。主な出演作に映画『みす
さらに2019の春、自身がプロデュースする帽子ブランド『ジン
『美晴に傘を』の渋谷 悠監督と。撮影合間の監督を映した写真をプリントしたお揃いのトップスを着用。おふたりとも、おちゃめ!
「言葉」によって心を通わせる家族の物語
『美晴に傘を』あらすじ
北海道の小さな港町の漁師である善次は、喧嘩別れをして以来、一度も会わないまま息子・光雄をがんで亡くしてしまう。東京での葬儀にも出席せず、四十九日を迎えようとしていた頃、光雄の妻の透子が娘の美晴、凛を連れて、善次の元を突然訪ねてくる。初めて会う息子の家族にうまく接することができない善次、自閉症の娘・美晴を守ることに必死な透子、失敗をするたびに父が書いた絵本『美晴に傘を』の中に逃げ込んでしまう美晴。小さな街の人々との交流のなかで、それぞれが内なる想いに気づいていく。
©牧羊犬/キアロスクーロ撮影事務所/アイスクライム
それぞれが個性的で、魅力的な登場人物たち。北海道の港町の美しい風景。息子、夫、父親をなくした家族がそれぞれの「言葉」によって、成長し、心を通わせる物語です。ぜひ劇場でご覧ください。
映画『美晴に傘を』
キャスト:升毅/ 田中美里/ 日髙麻鈴/ 和田聰宏/ 宮本凜音 /上原剛史/井上薫/ 阿南健治
監督・脚本:渋谷悠
2025年1月24日(金)より東京 YEBISU GARDEN CINEMAほか全国公開
配給:ギグリーボックス
映画『美晴に傘を』公式サイト
撮影/早坂伸 ヘアメイク/岩鎌智美 構成/山岸夏実
※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。