「生理がつらい…」生理痛やPMSのトラブルの原因を婦人科ドクターが詳しく解説
生理がつらい、フェムゾーンが不快…などのデリケートなお悩みは、程度に差があるにしろ、多くの女性が感じているはず。でも人に相談できず、我慢や放置をしている人も多いのでは? もしかするとトラブルの陰に病気が隠れていることも…。今回は「生理のトラブル」について、婦人科ドクターの海老根真由美先生に詳しく教えていただきました!
生理のトラブルには「病気が原因」のものと「神経由来」がある
【子宮や卵巣に炎症や病気がある】体のトラブルで起こりやすいのは『生理痛』や『過多月経』
つらい症状の陰に子宮筋腫や子宮内膜症が!?
「日常生活に支障が出る程つらい生理痛は、『月経困難症』として治療の対象です。こちらは『原発性月経困難症』と『続発性月経困難症』とに分けられ、前者は元々生理が重いタイプ、後者は子宮筋腫や子宮内膜症などの病気が原因のもの。原発性は痛み止めや低用量ピルの服用などで対処できますが、続発性は病気そのものの治療が必要です。
また、子宮筋腫や子宮内膜症は過多月経の原因にもなります。ナプキンを2時間ごとに替えたり、昼間でも夜用ナプキンが必要な程、経血量が異常に多いのが過多月経。同時に貧血になる場合が多く、だるさや頭痛、めまいなどの症状に悩まされることも。ひどい生理痛も過多月経も、放置をせずに、まず婦人科を受診して原因を確かめることが大切です」(海老根先生・以下「」内同)
・『子宮筋腫』は筋肉組織にできる良性の腫瘍
子宮筋腫の症状は発生する部位や大きさによってさまざま。子宮内側の粘膜下にできると小さくてもつらい生理痛や過多月経の要因に。子宮壁の筋層内にできる筋腫も大きくなると過多月経の一因。一方、子宮壁の外側にできる筋腫は大きくなっても症状は少ない。
・『子宮内膜症』は子宮内膜が子宮内膜以外にできて出血
本来は子宮内にあり、経血として体外に排出されるはずの内膜組織が、子宮内膜以外の部位に発生して育ち、出血を繰り返す病気。排出されない血液がその場にたまって炎症や癒着を引き起こすと、生理痛、下腹部痛、腰痛などの原因に。不妊の一因にもなります。
\実は/月経回数を重ねる程、女性ホルモン由来の病気のリスクがアップ
「女性の体は、卵巣から女性ホルモンが分泌されて排卵し、妊娠のために子宮内膜を厚くする仕組みです。妊娠しないと子宮内膜が剥がれて経血として排出される、それが生理です。初産年齢が遅くて出産回数が減っている現代女性は、生涯で生理の来る回数が多い傾向。女性ホルモンにさらされる期間が長いため、子宮や卵巣への負担が大きく、病気のリスクも高まります。実際、子宮筋腫や子宮内膜症は、生理が来る度に増大します」
『おりものの異常』も病気が原因かも
いつもと違う量、色や質、ニオイの異変をチェック!
「おりものの量や色には本来個人差があり、そもそも性成熟期の美的世代はおりものの量が多いので、正常か異常かを自分で判断するのは難しいところです。でも、排卵期ではない時期におりものシートから漏れるくらいの量が出ていたり、濃い黄色や緑色をしている場合は、病気の可能性があります。色は白っぽくても、ポロポロと酒かすのようなら、カンジダ腟炎かもしれません。
また、ニオイの異常もチェックポイント。健康なおりものは乳酸菌のラクトバチルス菌が多く、ヨーグルトのようなすっぱいニオイがします。一方、鼻を突くような腐敗臭やイカのような生臭いニオイは感染症の疑いがあるので要注意です。
量・色・ニオイのいずれも、明らかにいつもと違うと感じたら、すみやかに婦人科を受診することをおすすめします」
おりものは女性ホルモンの影響により生理周期で変化。エストロゲンの増減に連動して増え、排卵期に最大に。年齢的にもホルモン分泌がピークの20代後半~30代前半が最も量が多くなる。
近年増加中の性感染症もおりものの異常がサインに!
梅毒や淋菌、クラミジア、マイコプラズマなどの性感染症がここ10年で最多と報告されています(国立感染症研究所)。妊娠すると流産や切迫早産、胎児への影響などの可能性もあるので早期治療が必要。おりものの色(黄、緑、茶など)や悪臭が発見の目安に。
【ストレスやホルモンバランスの乱れなど】自律神経のトラブルで起こりやすいのは『生理不順』や『PMS』
病気ではなく、自律神経の乱れからくる症状も多い
「生理不順は、卵巣にたまった未成熟の卵胞が排卵を妨げる『多嚢胞性卵巣症候群』が原因の場合もありますが、ほとんどはストレスや睡眠不足、食など生活習慣による自律神経の乱れに起因しています。実は、毎月の排卵や生理をコントロールしているのは、脳の指令で分泌される女性ホルモン。自律神経が乱れていると脳の指令に誤作動が生じてホルモンバランスが乱れ、排卵や生理のタイミングもズレてしまうのです。しかも、そもそも脳は妊娠のために女性ホルモンを分泌させているので、栄養不足や過労など妊娠できる体ではないと判断すると分泌を制御します。
明確な原因がないとされるPMS(月経前症候群)も、自律神経や女性ホルモンが関与しているのは明らか。PMSが起こる生理前は、妊娠の準備で子宮に血液や栄養を送り込むため自律神経がフル稼働。眠い、頭が痛い、イライラするなど、自律神経の疲れから不調が出るのは当然です」
排卵後は女性らしさを作るエストロゲンの分泌が減り、妊娠を維持させるプロゲステロンが増加。PMSの症状はこの時期に出やすく、生理が終わると心も体も快調に転じる。ただし、ストレスや不摂生などで自律神経が乱れると、およそ28日周期の女性ホルモンのサイクルも乱れ、排卵や生理の時期がマチマチに。
\実は/女性ホルモンは脳から卵巣への指令で分泌される
「女性ホルモンは、脳の視床下部から下垂体へ、下垂体から卵巣へ“女性ホルモンを出して!”という指令が出され、それが卵巣に届いて初めて分泌されます。さらに卵巣からも“出したよ!”と脳へ情報がフィードバックされ、それによって脳は分泌量をコントロールします。ところが脳にストレスがかかると自律神経が乱れて、そういった卵巣とのコミュニケーションがうまく行きません。結果、心身のさまざまな不調を招いてしまいます」
『美的』2024年2月号掲載
撮影/森戸美帆(LOVABLE・取材) イラスト/shirohara 構成/つつみゆかり、長島理子、有田智子
※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。
えびねまゆみ/産婦人科医・医学博士。2013年に産婦人科、婦人科、助産師の外来を中心としたウィメンズクリニックを開院。女性のライフステージに合わせた幅広い診療を行う。