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2011.2.22

大高博幸の美的.com通信(49)心温まるアニメの新作×2本〜試写室便り

1950年代、パリ、そしてエジンバラ──。
時代遅れの老手品師が出会ったのは、彼の“魔法”を信じるひとりの少女だった。
『イリュージョニスト』(原題=L’ILLUSIONNISTE)
★詳しいストーリー&クレジットetc.は、illusionist.jpへ。
<3月26日(土)から、TOHOシネマズ 六本木ヒルズにてロードショー>

80分間、じっとスクリーンを見つめ、エンドロールが映し出された瞬間、大粒の涙が溢れ出して、しばらく止まりませんでした。コレは人生のドラマを歌う静かなシャンソンにも似た、大人向けのアニメーション。しみじみとした哀感漂う切なく繊細なストーリー。でも、そこにポッと明かりが灯っているような、穏やかな優しさと温かさに貫かれた作品です。

主人公は時代の流れに取り残された老手品師で、場末のミュージックホールを渡り歩く寂しい日々。ある日、やっと電気が開通した離れ小島の酒場で、下働きの少女と出会う。少女は手品師を「どんな願いも叶えてくれる魔法使い」と信じ込み、島を離れる彼を追う。生き別れor死に別れた娘の面影を少女に見た手品師は、間もなくエジンバラの片隅で少女と共に暮らし始める…。
台詞はホンの少しだけ。まるで音響版の無声映画を観るようで、時々出てくる台詞字幕を読まなくても、ふたりの心情や状況がヒシヒシと伝わってきます。それも押しつけがましさは一切ナシで。
手品師は、破れた靴と着たきりの服しか持たない少女に、なけなしの財布をはたいてプレゼントを贈り続ける。少女は徐々に美しくなり、やがて誠実そうな青年と恋に落ちる。手品師は生活のため、ガソリンスタンドのような所で働きもするが…。

ヤングジェネレーションとオールドタイマー。都会の洗練と田舎の素朴。快晴の一日と降りしきる雨の一日。これはふたりを通じて様々な人間模様をも垣間見せる、非常にユニークなアニメです。水彩画風の湿り気を含んだような画調も、感動的に美しい。
誰と観ても、ひとりで観てもいいけれど、彼氏と一緒にがオススメです。
この映画の冒頭に「1959」という年号が出てきますが、それは日本の暦で言えば昭和34年。皇太子様と美智子様の御成婚が取り行なわれた年。TVの受信台数が一挙に増加した年。そしてロカビリーブームが頂点に達していた年。そんな時代背景(“移り行く時代”という設定)を少しでも頭に入れて観ると、この映画は一層味わい深いモノになると思います。

『チャーリーとチョコレート工場』で知られる児童向けの物語作家、ロアルド・ダールの短篇「すばらしき父さん狐」を脚色したパペット・アニメーション。
『ファンタスティック Mr.FOX』(原題=FANTASTIC Mr.FOX)
★詳しいストーリー&クレジットetc.は、mrfox.jpへ。
<3月19日(土)から、シネスイッチ銀座ほかにてロードショー>

CG全盛のこの時代に、パペット(人形)を少しずつ動かして、1コマ1コマ撮影された作品です。
家族思いだけれど、野生の本能&ワイルドな生活への憧れと訣別できないMr.FOX(父さん狐)が主人公。メルヘンというよりも人間的&現実的な内容で、愛と勇気とサバイバルがテーマ。
展開はスピーディで、87分が短く感じられるほどでした。But、もう少しゆったりとした、のどかな部分も用意されていたなら、さらに楽しめたという気もします。

登場キャラクターの中では、スリムな狐たちとは対象的に、丸々と太ったフクロネズミ(管理人のカイリさん)がいい味を出していて、場面としては、状況説明的なロングショットの数々に僕は1番惹かれました。特に見事だったのは、パペットと水の動きに移動撮影のテクニックが絡んでいる部分で、パペット・アニメの第1人者イジー・トルンカ(故人)が観たら、惜しみない拍手を贈ったに違いありません。
声優として、ジョージ・クルーニー、メリル・ストリープらが出演。映画ファンの話題を呼んでいます。
親せきの子or自分の子を連れて観に行くのにふさわしい作品。But、TVアニメとは別次元なので、ついてこれない子もいるかも。

では、また!!

※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。

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