大高博幸さんの 肌・心 塾
2012.4.10

大高博幸の美的.com通信(96) 『ル•アーヴルの靴みがき』、『サニー 永遠の仲間たち』試写室便りNo.25

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港町ル•アーヴルの裏通りに花を咲かせた
名匠アキ•カウリスマキの人間賛歌。
庶民の人情と善意が奇跡をたぐり寄せる
至福のハッピー・エンディング・ムービー!
『ル•アーヴルの靴みがき』
(原題=Le Havre)
4月28日からユーロスペースほか全国順次公開。
詳しくは、www.lehavre-film.com/へ。

かつてパリでボヘミアンな生活を送っていた元芸術家マルセル・マルクスは、今はル•アーヴルの街角で しがない靴みがきをしている。我が家でマルセルの帰りを待っているのは、献身的な妻アルレッティと賢い愛犬ライカだ。そんなある日、病に倒れて入院したアルレッティと入れ替わるように、アフリカからの難民の少年イドリッサが自宅に転がり込んでくる。イドリッサを母親がいるロンドンに送り出してやるため、密航費3000ユーロを工面しようと奮闘するマルセル。しかしその頃、アルレッティは医師から不治の病を宣告され、執拗にイドリッサを捜索する腕利き警視モネの捜査の手が、マルセルの身に迫ってくるのだった…。(以上、プレス資料より抜粋。)
詩情豊かに淡々と物語られるこの小品に、僕はしみじみとした静かな感動を覚えました。上映時間は93分のフランス映画。派手な事件や高潮するような演出はどこにもなく、観客動員力のある人気俳優も登場しません。ここに描かれているのは、港町ル•アーヴルの裏通りに暮らす人々の、慎ましく侘びしく愛おしい“人情”と“善意”。そして至福の、非常にユニークな、ユーモラスとも言える、心に花が咲くような“奇跡”です。
シナリオ、演出、美術、演技、撮影…、そのすべてが独自の世界を作り上げている佳作で、2011年のカンヌ映画祭国際批評家連盟賞とフランスの栄えあるルイ・デュリック賞に輝きました。
主役の夫婦も、気のいい隣人達(パン屋のイヴェット、八百屋のジャン=ピエール、カフェの女主人クレール)も、人生の黄昏時を彼らなりに過ごしている人々。しかし、すべてを諦観しているようでいながらも、微かな希望の光を内に秘めている…。そんな彼らの一見無表情な顔に浮かぶ微妙な感情の波と、ちょっとした、しかし断固とした言動の1つ1つが、観る者の胸に深く温かく忍び込んでくるのです。
僕がこの映画の監督アキ・カウリスマキ(フィンランド人)の作品を観たのは、実は今回が初めて。「あー、損していた」と思いました。今まで気にかかりながら、1作も観てこなかったコトが悔やまれました。でも今からでも、きっと遅くはない。機会を見つけて、1本でも多く彼の作品を観ようと決めました。

P.S マルセル役のアンドレ・ウィルム、アルレッティ役のカティ・オウティネンを筆頭に、出演者は全員好演。J-P・レオーが演じた密告者と意地悪な高級靴店の男だけは好きになれませんが、少年イドリッサ、若いベトナム人のチャング、犬のライカはモチロン、全身黒づくめのクールなモネ警視さえもが好き。でも一番好きな人物は、イヴリーヌ・ディディが演じたパン屋のイヴェットさん。その精神や人間性を、さり気ない演技で見事に表現したイヴリーヌ・ディディさんに、僕は最優秀助演女優賞を贈りたいです。

 

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あの頃、すべてが輝いて見えた。ただ一緒にいるだけで楽しかった。
永遠の友情を誓った かけがえのない仲間たち。
でも、彼女たちが再び集まることは決してなかった―。
『サニー 永遠の仲間たち』
(原題=Sunny)
5月から全国順次公開。
詳しくは、sunny-movie.comへ。

この韓国映画は儲けモノでした。観に行くかどうか相当迷った末に(なにしろ小田原から東京まで新幹線で行くだけでタイヘンなんです)、たまたま試写当日の朝に珍しく早起きができたので、10:00からの回を余裕の一番乗りで観てきました。
女子高って、こんなに騒がしいの? それとも監督さんが“キャピキャピ好き”なだけ? なんて最初のうちは思っていましたが、上映時間124分は決してムダではありませんでした。
偶然のコトから元親友と再会した42歳の主婦ナミが、夢であふれていた輝かしい日々を思い出し、元仲間達(『サニー』という名のグループ)の皮肉な現実に直面しながらも、友情と人生の輝きを再び取り戻して行くというストーリー。
過去と現在を行ったり来たりする手法が用いられ、7人の仲間達の25年間が分かりやすく、興味深く描かれています。そしてこの映画は、単なるキャピキャピでも、単に懐かしいだけの再会モノでもありませんでした。観ているうちに、誰もが彼女達の歩んできた人生に引き込まれ、最後には彼女達のこれからを応援したくなってくるのです。また、物語が進む間に、「あの子はどうなったんだろう…」と気になり始めたりもする。それを大いに気にかけながら、最後までしっかりと観ていてください。ほんの数秒間のショットが、その答えを示していたりもするので、特にラスト近くでは、ボヤッとしていてはダメですよ。
感心させられたコト。それは『サニー』の結束力。個性がまるで違う彼女達の結束力or友情の強さを、僕は眩しい思いで見つめていたのでした。
今、「自分の中に何かが不足しているみたい」と感じている皆さんには、特にオススメ。チラシやスティルや惹句からだけでは判断不可能な、中身のいい作品です。
では!!

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