大高博幸さんの 肌・心 塾
2017.7.4

『 歓びのトスカーナ 』『 ボンジュール、アン 』『 ヒトラーへの 285 枚の葉書 』 試写室便り 【 大高博幸さん連載 Vol.402 】

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しあわせは、いつでも隣に寄り添っている。
最高の友情で結ばれていく女性たちの、人生賛歌!

歓びのトスカーナ
イタリア、フランス/ 116 分
7.8/配給:ミッドシップ
yorokobino.com

【 STORY 】 光が降り注ぎ、風が抜け、緑にあふれたトスカーナに、精神を病んだ人々が集う診療施設があった。虚言と妄想癖で周りを振り回してばかりのベアトリーチェ。そして過去の出来事から自分を傷つけてばかりのドナテッラ。ひょんなことから施設を抜け出したふたりは、一緒に旅を続ける中、かけがえのない友情で結ばれていく。人生で大切なのは、少しの休暇と、女同士の友情。そんなふたりに、天は ささやかな贈り物をする――。 ( 試写招待状より。一部省略 )

突拍子もなく賑やかなベアトリーチェ ( ヴァレリア・ブルーニ・テデスキ ) のハイテンション振りと、エキセントリックでローテンションなドナテッラ ( ミカエラ・ラマッツォッティ ) との間に芽生え 育まれていく友情に、100 % 引き込まれる 116 分。
下手をするとシラジラしくなりがちな難しい役どころを、ふたりの女優が徹底的なコントロール力で演じ切っているがために、この映画は観る価値の高い作品となっています。物語が進むうちに、ベアトリーチェもドナテッラも、普通に生活している普通の人々よりも〝 まともな人間 〟に見えてくる…。そんな感覚を抱いた自分自身に、僕は驚くと同時に感動させられました。

破天荒なユーモアにサプライズを織り混ぜた語り口は、予定調和的な作品とも 奇をてらった作品とも、お涙頂戴的な作品とも異質。それでもラスト近く、〝 ささやかな贈り物 〟どころか、一生分と言っても過言ではない 最高の贈り物が届く海辺のシーンには 誰もが釘づけになり、熱い涙をこぼさずには いられなくなるでしょう。たゞし その辺りについては、予備知識を一切持たずに観るコトをオススメします。
監督は 数々の賞に輝いた『 人間の値打ち 』( Vol.362 ) の パオロ・ヴィルズィですが、この『 歓びの… 』は『 人間の… 』よりも 上位に置かれて然るべき作品だと僕は思っています。

 

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the photographer Eric Caro

おとなの寄り道は、ワインと美食と人生のさがしもの。
カンヌからパリへ、〝 心にも美味しい 2 日間の旅 〟。

ボンジュール、アン
アメリカ/ 92 分
7.7 公開 / 配給:東北新社、STAR CHANNEL MOVIES
bonjour-anne.jp

【 STORY 】 アンは人生の岐路に立っている。長年連れ添った映画プロデューサーの夫・マイケルは、成功を収めているが 妻には無頓着。ある日、夫の仕事仲間のフランス人男性・ジャックと共に、カンヌからパリへ車で向かうことになる。7 時間でパリへ到着するはずが、ジャックが勧める美味しい食事やワイン、コート・ダジュール地方の美しい景色や遺跡への寄り道旅となっていく。思いがけない旅が、美しい景色、美味しい料理、そしてユーモアと機知に富んだ時間を通して、自分自身を見つめ直し、人生の喜びや幸せを新たに発見することとなる。( 試写招待状より )

子育ても一応終えて 人生の一区切りを迎えたアンを ダイアン・レイン、その夫を アレック・ボールドウィン、ジャックを アルノー・ヴィアールという充実のキャスティング。監督・脚本・製作は、これが初の長篇実写映画となる エレノア・コッポラ ( フランシス・F・コッポラの妻で ソフィアの母。御歳 80 歳での監督デビュー! ) 。

D・レインは 終始笑顔を絶やさない良妻賢母型のアンを明るく演じていますが、前作『 トランボ ハリウッドに最も嫌われた男 』( Vol.346 ) での 妻役と比較すると やゝ単調な印象 ( 電話で製作費の話ばかりしている夫に対して、写真ばかり撮っている妻というシーンが 繰り返し映し出されます ) 。
しかし、旅の終り近くで立ち寄るヴェズレー大聖堂での共感を誘うシークエンスと、ラストでの風変わりな演出・演技 ( ブリジット・バルドーの人気絶頂期の映画にあったような ) は、ちょっとした見モノでした。

これは肩のこらない、大人の女性向きの一篇。恋人や御主人と観ても OK ですが、女友だちと一緒にがオススメです。7 時間の予定が 2 日間に伸びた旅の末、アンが どのような心情に至ったか、その結果を あなた自身の想像とのギャップ ( 多分、ギャップを感じる方のほうが多いはず ) について、お茶をしながら話し合うのも一興でしょう。

 

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© X Filme Creative Pool GmbH / Master Movies/ Alone in Berlin Ltd / Pathé Production / Buffalo Films 2016

ペンと葉書を武器に
ヒトラー政権に抵抗した
ごく平凡な夫婦の驚くべき実話――。

ヒトラーへの 285 枚の葉書
ドイツ、フランス、イギリス/ 103 分
7.8 公開/配給:アルバトロス・フィルム
hitler-hagaki-movie.com/

【 STORY 】 フランスが ドイツに降伏した 1940 年 6 月、ベルリンの 古めかしいアパートで暮らす オットーとアンナのクヴァンゲル夫妻のもとに 一通の封書が届く。それは 最愛のひとり息子 ハンスが戦死したという知らせだった。心の よりどころを失った夫婦は 悲しみに沈むが、ペンを握り締めたオットーは「 総統は私の息子を殺した。あなたの息子も殺されるだろう 」とヒトラーへの怒りをポストカードに記し、アンナとともに それを公共の場に そっと置いて立ち去るという活動を繰り返すようになる。やがて ゲシュタポのエッシャリヒ警部が 犯人捜しに乗り出すが、死刑さえも覚悟したオットーとアンナは、100 枚、200 枚と政権批判のカード配布を続けていく……。( プレス資料より。一部省略 )

原作は、ゲシュタポの記録文書を基に、ドイツ人作家 ハンス・ファラダが書き上げた「 ベルリンに一人死す 」( みすず書房刊 ) 。強制収容所からの生還者でもあったイタリアの著名作家 プリーモ・レーヴィに「 ドイツ国民による反ナチ抵抗運動を描いた最高傑作 」と評され、1947 年の初版発行から 60 年以上を経た 2009 年、初めて英訳されて世界的ベストセラーとなった小説です。

映画は 正統的かつ程よく重厚な作りで、21 歳の息子 ハンスを失った夫婦の感情と行動を 冷静なタッチで追っています。その構成は比較的シンプルで、上映時間も長くはありません。撮影は 色調のニュアンスと明暗のコントラストが 一貫して美しい。森の中でハンスが戦死するファーストシーンを除き、全篇の舞台はベルリン。しかし「 ハイル、ヒトラー! 」という合い言葉 ( ? ) 以外、台詞は全て英語でした。これについては 異和感を覚えないために、予め 知っておくべきでしょう。

身の危険を感じながら 抵抗運動を続けるオットー ( ブレンダン・グリーソン ) とアンナ ( エマ・トンプソン ) の描写に 観客をドキドキさせるスリルがありますが、最も印象的だったのは、個別に逮捕されたふたりが 初めて法廷の場で顔を合わせる瞬間の表情と 短く交わされる会話でした。
予想外だったのは、エッシャリヒ警部の人物描写。ダニエル・ブリュールがキャスティングされているので、ステレオタイプなゲシュタポではないコトを想像してはいましたが、そのキャラクター設定の意外さには 大いに興味をそゝられました。一番の驚きは ラストシーンでの彼の行動。今や国際的俳優となった彼のスターイメージが 最大限に生かされていて、とてもとても良かったです。
監督は、スイス・ローザンヌ生まれの ヴァンサン・ペレーズ。

 

 

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ビューティ エキスパート
大高 博幸
1948年生まれ。24歳の時、日本人として初めて、パリコレでメークを担当。『美的』本誌では創刊以来の連載「今月のおすすめ:大高博幸さんが選ぶベストバイ」を執筆。
■大高博幸さんの 肌・心塾
http://biteki.com/beauty-column/ootakahiroyuki

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