「嫌い」な感情をうまく使える? 脳科学者・中野信子にインタビュー!
脳科学者・中野信子さんの最新著書『「嫌いっ!」の運用』(小学館新書)が好評発売中です。「ヒトは嫌わずにはいられない」ものだからこそ、「嫌い」という感情を排除せずにうまく運用するには? という目からウロコな着眼点の本書。「ヒトは嫌わずにいられない」ということ、「嫌い」という感情がどう形成されるのか、その効用と戦略的運用術、嫌い人との向き合い方、家族への嫌悪感・自己嫌悪への向き合い方、嫌いなこととの向き合い方…などが網羅されています。公私ともに多忙な『美的』世代にとっても、タメになること間違いなし! ということで、特別に著者・中野信子先生に、本書を読んだ『美的』読者からの質問に答えていただきました!
不快な感情も「運用」するスキルを身につけることでスムーズに楽しく日々を送れます
Q.「嫌い」について執筆しようと思ったきっかけはなんですか?(営業・27歳)
A.人間のネガティブ感情にはもともと興味がありました。 重要な機能だから保存されているはずであるのに、ほとんどの人がこの 「嫌い」という感情を持っていることで困惑させられている 。困惑しているのは、重要さを理解する前に「不快さ」が強いためだろう、と。不快な感情でも、 重要さを理解して「運用」するスキルを身に着けることで、より多くの人がスムースに楽しく日々を送ることができる ようになるのではないかと考えたことがきっかけです。
Q.会うと美容の話で盛り上がる友人。が、彼女のSNSには使用コスメの率直な感想が批判含めて上がっており、中には私がおすすめしたコスメもありモヤモヤ…。この気持ちはどう受け止めたらいいでしょう。(企画・32歳)
A.友人にはただ楽しくキャッキャウフフするための友人と、いざというとき命を張ってくれるような友人の二種類がいます。後者は一生のうち何人も出会うことはできません。一人出会えればその人は宝です。 前者は互いの人格にそう深入りするものでもないので、猫がうんちをした、程度に思っておけばいい のではないでしょうか。うんちをしても猫はかわいいものです。
Q.SNS上でたまにアンチコメントが来て辛い思いをします。「嫌われている」ことにはどう向き合えばいいですか?(ヨガインストラクター・29歳)
A. 「注目されていること」とほぼ同値 であるので、知名度を上げるには悪くない条件といえます。「敵意」はほぼ「妬み」や「不満」「不安」の発露であり、その解消は快感を伴うので、SNS等の言語空間における「敵意の解消」はある種のエンタメです。 コストパフォーマンスが悪ければ応じる必要はありません 。が、情報を拡散するには有利な条件でもあるので、何らかの情報を浸透させたい意図があればより火に油を注ぐのは効果的ともいえますよ(もちろん、メンタルが耐えられる範囲でという前提つきになりますが)。
黒い自分に出会っても、その自分を楽しんで
「いわゆるアラサーの『美的』世代。思いっきり悩める年代も、今のうちだけだと思います。苦しい時期や辛い体験も、いずれ年齢を重ねて落ち着いてくると、だんだん思い出せなくなってしまいます。今味わえる不安や悲しみをいとおしみ、その感情を持つことのできる自分を慈しんでください。黒い自分に出会っても、その自分を楽しんでください」と中野先生からメッセージ。
「どうしても職場のXXさんが嫌い」「母親との関係が辛い」「自分のこんなところが嫌い」「嫌いな仕事だけどやらなきゃいけない…」など、「嫌い」な感情に少しでも振り回されていると感じている人は、ぜひ読んでみてくださいね。
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※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。
東京大学工学部応用化学科卒業。東京大学大学院医学系研究科脳神経医学専攻博士課程修了。フランス国立研究所ニューロスピンに博士研究員として勤務後、帰国。脳や心理学をテーマに研究や執筆の活動を精力的に行う。科学の視点から人間社会で起こりうる現象及び人物を読み解く語り口に定評がある。現在、東日本国際大学教授。著書に「ヒトは、”いじめ”をやめられない」「キレる!」(以上、小学館)、「人は、なぜ他人を許せないのか?」(アスコム)、「空気を読む脳」(講談社)など多数。また、テレビコメンテーターとしても活躍中。