杉咲花が映画『ミーツ・ザ・ワールド』に込めた思い「生きていると色んな出会いがある」【♯美的エンタメ部】
金原ひとみさんの同名小説を映画化した『ミーツ・ザ・ワールド』が、2025年10月24日(金)より全国公開されます。擬人化焼肉漫画をこよなく愛しながらも、自分のことは好きになれない27歳の三ツ橋由嘉里が、歌舞伎町を舞台に新たな世界と出会っていく様子を描いた本作。主人公の由嘉里を演じるのは、実力派俳優の杉咲花さんです。映画のことや美容のことなど、『♯美的エンタメ部』でインタビューしました!
主人公・由嘉里は自分を見ているような感覚になることもあった
――本作のオファーを受けた際、作品のどんな部分に一番惹かれましたか。
何よりも金原ひとみ先生の原作が本当に素敵で、惹きつけられました。どうやったら人がわかりあえるかではなく、人と人との圧倒的なわかりあえなさを描いているところがすごく好きで、お受けしたいと思いました。

――由嘉里というキャラクターに対しては、どのような印象をお持ちになりましたか。
オファーをいただいたのが3年前だったのですが、私自身も由嘉里のように自分を好きになれない瞬間があったりするので、なんだか自分を見ているような感覚になることもありました。昨年、ちょうどこの映画の撮影をしていた時期は、作品の公開や撮影が立て続いていて、自分のコンディションが安定しづらい時期でもあり、苦しさを感じてしまうこともあったんです。今こうして取材を通して言語化していくことで、ようやく当時のことを客観的に振り返ることができているように感じます。
――近年、作品制作にも深く関わることが多いという杉咲さんですが、本作では脚本の打ち合わせから参加されていますね?
そうですね。手元に届いた脚本は、原作に対する敬意が隅々まで注がれた素晴らしいものだったのですが、そこからより人物造形の解像度を上げていくなかで、意見交換や捉え方のすり合わせをする時間がありました。
私は、作品制作に深く関わっていきたいというよりは、たとえ演じる“役”であったとしても、自分の口から発するセリフであったり、やると決めた作品に対して、自分自身も思考して、疑問や違和感が生まれたときにそれを共有することが大切だと思っているんです。そういった時間を同じく大事にしてくださる制作陣の皆さまとご一緒できたことは、とても恵まれていることだと感じます。

――由嘉里は、歌舞伎町で新しい出会いを経験し、自分の居場所を見つけます。実際に、生きづらさを感じた時に乗り越えるヒントが映画にあるように感じられますが、杉咲さんご自身ではどのように思われますか?
そうですね。分かり合えない人どうしが、なんとかそばにいようとする姿は、やっぱり勇気をもらいました。生きづらいと感じている人もそうではない人も、世の中に関心を持つことや他者を想像することは、結果的にみんなでみんなの生活を底上げすることにつながる気がしています。
共演・南琴奈さんのオーディションにも参加「電気が走るような出会いでした」
――キャバ嬢のライ役はオーディションで抜擢された南琴奈さんが演じていますが、撮影現場ではどのような雰囲気でしたか?
琴奈ちゃんとは毎日のように一緒にいたのですが、すごく心地のいい人です。歌舞伎町の夜のシーンが多かったので、通常の撮影とは反対の時間で動いていて、なかなか過酷な日もありました。歌舞伎町では夜中でも開いているお店がいっぱいあるので、韓国チキンをみんなで食べたりしていましたね。ライのマンションは実際に歌舞伎町にある物件で撮影していて。休憩時間にみんなで一緒にラーメンを作って、椅子を並べて食べるなど、とても楽しい時間も過ごしました。
――歌舞伎町でずっと撮影されていましたが、普段はあまり行かない場所ですか?
歌舞伎町付近には映画館が多いので、高校生の時はよく行っていました。でも、今回のように長い撮影期間、歌舞伎町に居たことは初めてでしたね。

――映画には、毒舌な作家ユキ役の蒼井優さん、BAR「寂寥」店主・オシン役の渋川清彦さんも出演していましたね。
シーンが少なかったのであまりお話しできる時間はなかったのですが、オシンさんのバーでの撮影は、小さな空間の中にスタッフキャストが密集していたので、とんでもなく暑かったんです。撮影は難航したのですが、後半から“過酷な環境だからこそ入るゾーン”のようなところにみんなが入っていった感じがあって。これまでたくさん映画で拝見してきた先輩たちと、そんな時間を共有できたことは贅沢でした。
――他にも、本作では芸人さんやミュージシャンの方も出演されていますが、一番心に残る共演者といえば?
本当に多様な方々が出演されているのですが、最も大きな出会いは、やはり琴奈ちゃんです。ライ役のオーディションは2年ほど前だったのですが、最終候補の方々との雰囲気を見たいという松居大悟監督の希望で私も参加しました。実際にオーディションで演じた時にまったく想定していなかった挙動や本人が持つ艶やかな表情に心地よく翻弄されている自分がいて。本当に電気の走るような出会いでした。
必ず心がけていることは、朝晩、パックをすること
――お話は変わりますが、杉咲さんは普段のスキンケアはどのようにされていますか?
20代前半の頃は肌荒れに悩むこともあり、いろいろなスキンケアを試した時期もありましたが、最近は自分に合うものを見つけられて。とにかくたっぷり化粧水を使ってスキンケアをしています。そして必ず心がけていることは、朝晩、パックをすること。日に当たりすぎた日は乾燥するのでより保湿を心がけたり、ビタミンが入ったパックを使ったりもしています。

――ライフスタイルにおいて、食事や運動などで気をつけていることはありますか?
基本的には、好きなものを食べていますね。役によっては減量を目的に運動することもあります。
――映画の由嘉里の服や本日の撮影での衣装など、さまざまなテイストのものを着こなす杉咲さんですが、ご自身ではどのようなファッションがお好きですか?
シンプルなものが好きです。普段のファッションは、着心地のいい素材の服を選ぶことが多いですね。
――由嘉里は擬人化焼肉漫画「ミート・イズ・マイン」を推している腐女子という役柄ですが、今、杉咲さんご自身が推しているものはありますか?
ガールズグループのHANAがすごく好きです。ファンクラブにも入っているのですが、彼女たちのパフォーマンスを観ている時間や、音楽を聴いている時は、本当に心がときめいて、軽やかになるんです。
――いろいろなお話をありがとうございました。では最後に、あらためて今回演じられた由嘉里の魅力と、映画をご覧になる方へメッセージをお願いします。
由嘉里の魅力は、何かを熱烈に愛する才能があるところ、それに尽きます。実際に腐女子の方にお会いしてお話をうかがう機会もあったのですが、好きなものについて話を聞かせてくださったときに、本当に輝いていた姿が忘れられなくて。そういった部分も、すごく参考にさせてもらいました。
私自身のことに置き換えてみても、仕事にしても人生という意味においても、続けていくと続けているだけ、思いがけない出会いがあります。『ミーツ・ザ・ワールド』というタイトルにもあるように、「生きているといろいろな出会いがあるのかもしれない」ということに期待ができるような作品になっていたら嬉しいです。
PROFILE

杉咲花
1997年10月2日生まれ、東京都出身。
2016年に出演した『湯を沸かすほどの熱い愛』での演技が高く評価され、第40回日本アカデミー賞最優秀助演女優賞・新人俳優賞、第41回報知映画賞助演女優賞、第59回ブルーリボン賞助演女優賞を受賞。その後、2023年公開の主演映画『市子』では第47回日本アカデミー賞優秀主演女優賞と第78回毎日映画コンクール〈俳優部門〉女優主演賞を受賞。主な出演作にNHK連続テレビ小説「おちょやん」(20-21)、ドラマ「アンメット ある脳外科医の日記」(24)、映画『52ヘルツのクジラたち』(24)、『朽ちないサクラ』(24)、『片思い世界』(25)など。
取材・文/かわむら あみり 撮影/大靍 円
ヘアメイク/宮本愛(yosine.)
スタイリスト/𠮷田達哉
Information
映画『ミーツ・ザ・ワールド』
https://mtwmovie.com/

2025年10月24日(金)より全国公開
擬人化焼肉漫画「ミート・イズ・マイン」に全力で愛を注ぎながらも、自分のことは好きになれない三ツ橋由嘉里(杉咲花)。27歳になって結婚・出産……と違う世界に次々と離脱する腐女子仲間をみて、このまま仕事と趣味だけで生きていくことへの不安と焦りを感じ、婚活を始める。しかし、参加した合コンは惨敗。歌舞伎町の道端で酔いつぶれていたところ、美しいキャバ嬢・ライ(南琴奈)に助けられ、既婚のNo.1ホスト・アサヒ(板垣李光人)などに出会い、新たな世界が広がっていく。
出演:杉咲花、南琴奈、板垣李光人、くるま(令和ロマン)、加藤千尋、和田光沙、安藤裕子、中山祐一朗、佐藤寛太、渋川清彦、筒井真理子/蒼井優
(劇中アニメ「ミート・イズ・マイン」) 村瀬歩、坂田将吾、阿座上洋平、田丸篤志
監督:松居大悟
原作:金原ひとみ『ミーツ・ザ・ワールド』(集英社文庫刊)
脚本:國吉咲貴、松居大悟
音楽:クリープハイプ
主題歌:クリープハイプ「だからなんだって話」(ユニバーサルシグマ)
配給:クロックワークス
©金原ひとみ/集英社・映画「ミーツ・ザ・ワールド」製作委員会
映画「ミーツ・ザ・ワールド」公式X
https://x.com/mtwmovie
映画「ミーツ・ザ・ワールド」公式Instagram
https://www.instagram.com/mtwmovie/
※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。