YOUさんと語る「男でも女でもいい。感性が共有できれば」|作家LiLyの対談連載「生きるセンス Season.8」第5話
「年齢を重ねるって、どういうことですか?」作家・LiLyさんが人生の先輩を訪ねて歩いた人気連載『生きるセンス』がwebへとお引越し。より楽しく、より自由に、より心地よく生きるべく、人生のヒントをさらに深掘りしていきます。今回はゲストにYOUさんをお迎えします。
第1話▶▶YOUさんと語る「40代、笑い止まらないよ」
第2話▶▶YOUさんと語る「目の前の波をどう乗りこなすのか」
第3話▶▶YOUさんと語る「ジェンダーミックスこそが最高だ」
第4話▶▶YOUさんと語る「自分自身のプロになるために」
50歳の誕生日は忙しすぎて記憶にございません――YOUさん
LiLyさん(以下、L) 50代以降の女性の生き方も伺っていきたいのですが、YOUさんは50歳の誕生日って覚えていますか?
YOUさん(以下、Y) これがまったく覚えてない。50代は本当に仕事が忙しくて、さらにコロナ禍と重なったこともあるし、記憶がやや曖昧なの。
L 40代後半から50代にかけて、女性は更年期に入りますが、そのあたりはどうでしたか?
Y あ〜、それね、私の場合、あまり体調不良を感じることはなかったんだけど、それって規則正しい生活を送っていらっしゃる方なら何かしらの不調に気がつくだろうけど、お酒もいっぱい飲むし酔っ払うし生活も不規則すぎて、どの不調が更年期なのかに気づきもしなかったというのが正しいかもしれない(笑)
L それ、めちゃくちゃYOUさんらしいです! 私もそうだし、みんなそうだと思うんですけど、こういう〝YOUイズム(YOUさんしか言わないこと=唯一無二性)〟の大ファンです。たとえばファッション。30、40代は、けっこうレース素材のアイテムにピンヒールなどと合わせた軽やかなスタイルが多かったですよね。
Y あの時代はほぼほぼ裸だったから(笑)。背中がパックリ開いたやつとかね♡ 肌もきれいでボディラインも保っていたから、なんでも着れたの。っていうか、まだまだモテたかったんだよね。
L きゃ〜♡ めっちゃ覚えています。すごくセクシーでキュートで、いい恋愛しているんだろうな〜って思ってました。当時のYOUさんはフェミニンでセクシーな布の少ないワンピースにピンヒールってイメージでした。ファッションってそのときの自分を反映しますよね! 私も産後から5年間、お母さんモードだった時期以外は10代後半から今までずっと裸です(笑)。一方、YOUさんの今のスタイルもすごく好きなんです。ビンテージ風のTシャツにワイドめのボトムスを合わせて、リラックスした雰囲気。ファッションって、その時代のメンタルが反映されると思うのですが、どうでしょうか。
Y ほぼ裸だった時代を経て、もう男女の肉体のぶつかり稽古みたいなものはたっぷりと味わったので(笑)、今は美しい心とか顔面とかをただ愛でていたい。そういう欲望がないのにこちらが裸みたいな格好をしているのも無粋だし、60代でもろに肉体関係を欲しているのがダダ漏れているのも、なんだか品がないでしょう(笑)。
男とか女とか関係なく心地よい時間をシェアできる人と一緒にいたい――YOUさん
L ちなみに私が30代の頃に気づいたことなんですけど、人生って時期で分けることが大事なんだな、と。若い頃は、仕事もしたい、子供も欲しい、恋もしたい、セックスもしたい、すべてが欲しい、けど手に入れられるのかしら? って思っていたんですけど、30代になって痛感したのが、すべてを同時に手に入れるのは時間も体力も足りなくて幸せどころか疲弊する=無理だってこと。でも今は、すべてを同時進行する必要はなくて、仕事に没頭する時期、恋愛をする時期、肉欲に溺れる時期とか(笑)、時期で分けることで、人生単位で見たらすべて手に入るな、と。だからYOUさんのファッションで時期が分かれているのすごく好きです!! 虹みたいにいろんな色がある人生って綺麗だもん。
Y 人生の時期のグラデーションを楽しむってことね。でも私、もういろんな色が混ざり合っちゃって、虹どころか全部混ざって真っ黒だったかも(笑)。でもそれはそれで、今となってはよかったと思うし、そのようにしか生きてこられなかったと思うから、めちゃくちゃ満足してる。
L めちゃくちゃ満足してるって言い切れるって最高です。そんなYOUさんに最後に聞いてみたいのが、いろんな欲望からいい意味で解放されたあとは、どんな異性に惹かれるのかということ。
Y 今は特に、どんな人がいいとかそういうのはないの。
L 本当に!?
Y ほんとほんと。だって「ここでおいしいお酒を飲みたいな」という人と、「この映画を一緒に観たいな」という人が必ずしも一致するとは限らないでしょう。若い頃はすべてを同じ人と共有したいという思いがあったかもしれないけど、今はもうない。なんなら、それらを気持ちよくシェアできる人であれば、男もでも女でもどちらでも構わない。
60歳ってこんなにかわいいのかとため息が出てしまう――LiLy
L 性欲から解放されたらとても健やかにジェンダーレスになれる気がしていて、とても楽しみなので、素敵だな〜ってあらためて思いました。そんな今は、どんなことを楽しんでいるのでしょうか。
Y ありがたいことに昨年まで本当に仕事が忙しくて、今ようやくひと息ついているところ。人生60年生きてきて、初めてゆっくり家でくつろいでいるかも。どうやら去年までがゴチャゴチャ期で、来年から理想のライフスタイルが始まるらしいから、今は新しい生活への準備期間かな。
L いいですね。私、チル大好きです。
Y ひとりっ子だったこともあって、もともとひとりで過ごすのは苦にならないタイプ。忙しいのが好きな人はゆっくり過ごすのが苦手な人もいるけれど、自分はそういうタイプでもないし。Netflixの沼にハマったりするのが今はすごく楽しいかな。
L 読書はしますか?
Y 論文とかノンフィクションとか、事実が語られているジャンルが好き。老眼が進んで小さい文字が読みにくいのが難だけど、オーディブルやろうかなと思案しているところ。文字の世界って独特のエモさがあるから、すごく好きだよ。
L はぁ。今回ゆっくり話をして、心から感じたことを言わせてください。YOUさんが特別なことは百も承知の上なのですが、「60歳」ってこんなにも美しくて綺麗でかわいいんですね。しかもそれは1日にして出る魅力ではないからこそ、心から憧れます。
Y ありがとう! この年齢になると「きれいですね」とか「かわいいですね」という褒め言葉が素直に受け取れるようになる。それは「ああ、もう誘い文句ではないんだな」という切なさやあきらめとセットではあるんだけど、それはそれでいいもんだよ。
L 私もYOUさんの美しすぎるお背中を追いかけて“イズム=自分にしか出せない唯一無二性”を磨いて、オトナの階段を登っていきます!


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イラスト/ekore 構成・文/本庄真穂
※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。