α-リポ酸|化粧品としての効果は?【美容成分大全】
α-リポ酸は、生体内のエネルギー産生に必要な成分で、高い抗酸化力をもっています。もともと医薬品成分だったものが、健康食品、化粧品にも使用されるようになりました。さまざまな肌トラブルの原因となる活性酸素を除去し、シミやシワ、ニキビなどへの効果が期待できます。日本化粧品検定協会が美容成分をくわしく解説する【美容成分大全】。成分を正しく理解して、コスメ選びの参考に!
プロフィール
成分名 | α-リポ酸 |
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表示名称 | チオクト酸(医薬部外品には配合されません) |
主な配合アイテム | スキンケア、UVケア |
成分のはたらき | 抗酸化、抗糖化 |
医薬部外品としての効能効果 | ー |
どんな「効果・働き」があるの?
- 抗酸化
- 抗糖化
活性酸素を除去し、多くのトラブルを防ぐ
抗酸化
α-リポ酸は“フリーラジカル”と“フリーラジカルでないもの”の2種類の活性酸素に対して抗酸化作用を発揮します。水と油の両方に溶けやすい性質をもっていて、さらに分子が小さいため、肌に浸透しやすい成分です。肌表面だけではなく角層内の活性酸素も防ぐと考えられます。
●シミ予防:紫外線を浴びて活性酸素が発生することで、メラニン生成指令物質が放出されます。活性酸素を取り除くことで、メラニン生成指令物質の発生を防ぎ、過剰なメラニンの生成を抑制します。
●シワ予防:活性酸素により、真皮のコラーゲン分解酵素が活性化し、コラーゲンの減少や変質が生じます。活性酸素を取り除くことでコラーゲンの分解を食い止め、シワの発生を予防します。
●毛穴ケア:過剰な皮脂分泌に加え、酸化した皮脂が毛穴まわりの皮膚に対してダメージを与えると、メラニン色素も増加し毛穴を目立たせてしまいます。皮脂の酸化を抑え、皮膚へのダメージやメラニン生成を抑制し、毛穴の目立ちを改善します。
●ニキビ予防:皮脂分泌が増えアクネ菌が毛穴の中で増殖すると、活性酸素が発生して炎症を引き起こし、ニキビが悪化します。活性酸素を取り除くことで炎症を抑え、ニキビ予防にもつながります。
くすみやシワを防ぐ
抗糖化
タンパク質と糖が結合することが糖化の最初のステップです。その後、反応が進むと最終的にAGEs(最終糖化生成物)がつくられ、肌のくすみやシワの原因となります。α-リポ酸は糖の代謝を促すことから、抗糖化作用があるという報告もあり、黄ぐすみの原因となるタンパク質の劣化を防ぐ効果が期待できます。
美容賢者からの「アドバイス」
ほかの抗酸化成分との併用で相乗効果が期待できる
抗酸化成分として知られるビタミンCやEは、作用を発揮した後には酸化されて力を失ってしまいます。α-リポ酸はそれらのビタミンCやEを還元して元に戻し、再び抗酸化力を発揮できるようにする作用もあるため、併用すると相乗効果が期待できます。
サプリメントは用法・用量を守りましょう
ビタミンCやEの約400倍の高い抗酸化力があるというデータもある一方で、サプリメントで摂取した場合に、インスリン自己免疫症候群(低血糖発作)の誘因になるという報告もあります。
また、過剰摂取や薬との飲み合わせにより体調不良を引き起こす可能性があるため、注意が必要です。妊娠中の方については、短期間、適切に摂取する場合、安全であるといわれていますが、授乳中の方は十分な安全性が確認されていないため、自己判断での摂取は避けた方がよいでしょう。
「歴史・由来」その他の雑学
α-リポ酸は、生体内の代謝において重要な役割を担っています。細胞内のミトコンドリア(エネルギーをつくり出す場所)に存在し、糖分からエネルギーを生成する過程で必要な酵素の働きを助ける“補酵素”という役割を担っています。
光学異性体とよばれる分子構造が少し異なるR体とS体が存在し、体内で合成されるR体は工業生産が難しいとされていましたが、製造技術の向上によりサプリメントなどに安全に配合できるようになりました。
体内で合成されるものの加齢とともに減少してしまうため、食品やサプリメントなどで摂取することで細胞の老化を防ぐことが期待できます。牛・豚の肝臓、心臓、腎臓やジャガイモ、ブロッコリーなどの野菜にも含まれています。
歴史
1951年にReedらによって初めて肝臓から分離、結晶化され、1952年に化学構造が決定されました。日本では、1963年に日新製薬株式会社により、激しい肉体疲労時や疾病時などのα-リポ酸の補給を目的とした注射薬で、医薬品として承認されました。その後しばらく、日本では医薬品の成分として取り扱われていましたが、2004年からサプリメントへの使用が許可され、2007年5月には0.01%を上限として化粧品への配合ができるようになりました。
主な原料の由来
合成
医薬品やサプリメントには?
医薬品としては、激しい肉体労働時などチオクト酸が不足した際の補給、及び騒音性(職業性)の内耳性難聴の際の治療などの目的で注射剤に使用されます。サプリメントとしては、ダイエット、美肌効果、抗酸化、疲労回復の効果を期待して利用されていますが、現時点では効果の根拠は十分でないようです。
注意事項
化粧品に配合する場合には配合制限があります。粘膜に使用されることがある化粧品には配合禁止、それ以外に対しては0.01%までです。
<引用元>
有機合成化学, 43(7), 680-690 (1985)
食衛誌, 48(5), 125-131 (2007)
日新製薬, チオクト酸注25mg, 医薬品インタビューフォーム
食安基発, 0423 第5号 平成22年4月23日
鈴木一成, 化粧品成分用語事典2008, 中央書院, 2008, p.368-369
小西さやか, 知れば知るほどキレイになれる!美容成分キャラ図鑑, 西東社, 2019, p.108-109
国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所 Webサイト (コラム・研究報告 Ver.20210129)
国立健康・栄養研究所 Webサイト (「健康食品」の安全性・有効性情報)
厚生労働省 Webサイト (保健機能食品・健康食品関連情報)
オレゴン州立大学ライナスポーリング研究所 Webサイト (微量栄養素情報センター)
読売新聞オンライン Webサイト (ヨミドクター)
※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。
日本化粧品検定協会代表理事、日本薬科大学客員准教授、北海道文教大学客員教授、東京農業大学食香粧化学科客員准教授、各種協会の顧問、学会幹事を歴任。化粧品開発者として科学的視点から美容、コスメを評価できる専門家「コスメコンシェルジュ」。最短最適な美容で無駄を省く「時短美容家」としても活躍中。著書は『美容成分キャラ図鑑(西東社)』など13冊、累計56万部を超える。