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スキンケアニュース
2024.11.19

男性が男性だけに同情する「ヒムパシー」ってなに?【中年男性、トキメキ美容沼へ vol.15】

こんにちは、ライターの伊藤聡と申します。私は男性のためのスキンケア本『電車の窓に映った自分が死んだ父に見えた日、スキンケアはじめました』(平凡社)を出しました。みなさんは、スキンケアに興味がありますか。スキンケアという言葉から、どんなことをイメージしますか? こちらの連載では、スキンケアに親しんでいく上で役に立つかもしれないあれこれをテーマに書いていきます。トライしてみれば楽しくて奥が深い、スキンケアの世界を一緒に探求していきましょう。

男性が男性だけに向ける同情

以前から気になっていることがあるのですが、男性の著名人(芸能人、政治家、学者、映画監督など)が問題を起こしてニュースになると、なぜか同性の男性がこぞって擁護しはじめるという現象があります。あれはいったい何なのでしょうか。失言、不倫、性加害、その他わりと重めなスキャンダルに至るまで、「少しくらい大目に見てやればいいじゃないか」「彼は悪くない」「あれほどに才能ある男の未来を奪う気か」といった同情が集まる傾向です。なぜか男性は、同性の失敗や問題行動に優しい。オーガニックコットンが地球に優しいように、多くの男性は他のやらかした男性にのみ優しいのです。私はこの傾向がどうにも危険であるような気がして、長らく気にしていました。それが性加害であれば、被害を受けた女性の存在が軽視されてしまうのがよくありません。いったいこの現象はどうしたものかと、私は考えているのです。

実は、こうした現象は日本だけではなく海外も同様で、すでに名前がついていました。名付けて himpathy (ヒムパシー)。これは、同情を意味する sympathy (シンパシー)が、男性(him)のみに向けられることから生まれた造語です。そう言われてみれば、たしかに、世間にはヒムパシーがあふれているような気がしませんか? これってすごく怖いことですよね。男女問わずに同情が集まるのであればまだ公平なのですが、女性は同情されないばかりか、逆に責められてしまうため、結果的に男性だけが守られるという一方的な状態が生まれてしまいます。男性はまるで、絶滅危惧種のイリオモテヤマネコやシマフクロウくらい大切に保護されるのです。ずるい! たとえば不倫をした男性政治家は周囲から同情され、立場を失うことはありませんが、同じ政治家でも、女性は過去にラウンジ勤務をしていただけで立候補が取り消しになってしまいます。ラウンジ勤務はただの職業なので問題がないような気がするのですが、女性には別ルールが適用されてしまっているのです。

 ヒムパシー社会を変えていこう

海外でも、性加害をした大学生が、裁判でとても寛大な判決を受けるといった事例が報告されています。なぜならその大学生は、水泳選手として卓越した能力を持ち、今後の水泳競技を背負って立つ「ゴールデンボーイ」で、未来を期待される有望選手だったためです。すると裁判官までが加害側にヒムパシーを発揮して、非常に軽い罰則(3ヶ月の服役)だけという優しい判決を出してしまうのでます。本を読んでいて、こうした記述を目にしたときにはぞっとしました(ケイト・マン『ひれふせ、女たち』慶應義塾大学出版会)。司法システムまでがヒムパシーを判断基準しているとなると、女性としてはたまったものではありませんが、たしかに男性に対してのみ基準が甘いと感じる事象は多々あります。他の部分ではまともな判断ができる理性的な男性でも、同性のやらかしにだけはつい目をつぶってしまう。こうした状況がさらにエスカレートすると、やがて男性の側が「性加害などという訴えをされて、むしろ自分の方が被害者だ」などと怒り出すパターンもよく見かけます。性被害を告発した女性の方が逆に、男性を苦しめている悪人だと言わんばかりの主張が始まるのですから、困ったものです。

こうして考えてみると、ヒムパシーはある種の互助会のようにも見えます。性加害が起こった際、周囲はこんな風にして男性側を擁護します。「普段はとても親切だ」「まわりからの評判もいい」「たった一度の過ちで人生を棒に振るなんて」。そこには無意識のうちに、男性のキャリアや地位の方が、女性の人生よりも重みがあるといった偏見が含まれているように思えてなりません。例を挙げれば、映画『プロミシング・ヤング・ウーマン』(2021)では、性加害が発覚しそうになった男性のあいだで怒涛の助け合いが展開されます。この恐怖の互助会システムは、ぜひ男性に見ていただきたい作品です。とてもよくない種類の一致団結が、観客を震撼させるのです。男性はこうした互助会精神が自分のなかに生じていないか、自分自身を見つめ直す必要があるかと思います。こと問題が男性同士のことになると、とたんに判断力が鈍ってしまうケースが多いのです。男性が同じ男性だけを特別にかばってしまうのは、何もマスコミのニュースや芸能界、有名人に限った話ではなく、会社組織や社会生活といった日常のなかでもよく起こることだと思います。できるだけ男女がフェアに暮らしていけるような環境を、個人のレベルから作っていくことが大切かと思います。

 スキンケア製品は性別を問わず公平だ

さて、ヒムパシーについてあれこれと論じてしまったあとではありますが、今月のおすすめスキンケアアイテムです。VTコスメティクスの「リードルショット300」。スキンケアのなにが好きかといって、男女を問わず肌にいい点です。スキンケア製品ほど公平なものはありません。性別に関係なく、肌をよくしてくれるのですから、これは理想的です。決してヒムパシーではない、本当の意味でのシンパシーが込められているのがスキンケア製品だと言えましょう。「リードルショット300」は最近発売されたばかりの製品でして、CICAでよく知られるVTコスメティクスが、定番のツボクサエキスとヒアルロン酸を、肌に届きやすく配合したアイテムです。肌にうるおいがしみこんでいる感覚があり、また肌荒れに効くツボクサエキスが、ひげ剃り後のひりついた肌を包み込んでくれます。私たちも「リードルショット300」くらい他人に優しく、性別を越えてお互いを大事にしあえる関係を作りたいですね。

 

 

伊藤 聡(いとう・そう)
会社員兼ライター。50代にして美容の楽しさに目覚める。著書に『電車の窓に映った自分が死んだ父に見えた日、スキンケアはじめました』(平凡社刊)

イラスト/green K

※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。

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