iPS細胞コスメは効果が高いぶん、使ってはいけない人がいる、時期があるって本当?真相を専門家に直撃!
日常生活で生まれる美容や女性のライフスタイルの疑問を医師や専門家に答えてもらうこのコーナー。今回は「iPS細胞コスメ」について。iPS細胞コスメは効果が高いぶん、使ってはいけない人がいる、時期があるって本当? 世界で初めてiPS細胞由来の原料からコスメをつくることに成功した株式会社 ICELLEAPの加賀谷梨恵さんにお話を伺いました。
Q:iPS細胞コスメは効果が高い分、使ってはいけない人がいる、時期があるって本当?
日々、躍進的な進化を遂げるスキンケアコスメ。人類の知恵と研究から発見、開発されるケアアイテムは、私たちの肌悩みにダイレクトにはたらきかけてくれる頼もしい存在です。そして今、もっとも注目を集めているのがiPS細胞由来の成分。複数の機能が期待でき、効果効能も抜群とされていますが、それゆえに、「副作用が起こるのでは?」という心配も。どうなのでしょうか。「iPS細胞コスメは効果が高い分、使ってはいけない人がいるって本当?」世界で初めてiPS細胞由来の原料からコスメをつくることに成功した株式会社 ICELLEAPの加賀谷梨恵さんにお話を伺いました。
A:ウソ
「レチノールなど、機能が高い分、ピリピリとした感覚があったり、人によっては荒れてしまったりという美容成分も存在するため、iPS細胞コスメの原料であるiPS細胞培養上清液も、肌への刺激が強そう、という印象をもたれる方もいるようですね。でも、iPS細胞培養上清液は成分自体に刺激性がありません。弊社で使用するiPS細胞培養上清液は医療用の基準で実施した複数の試験によって、安全性についてはしっかりと確認しています。
逆に、iPS細胞コスメは、炎症を抑える機能が何より強いです。当グループの事業のひとつは、iPS細胞の作製をはじめとする先端医療事業で、その延長線上で、iPS細胞コスメの実現に取り組んでいましたが、実験に関わる研究者たちは、ずいぶんとマスクかぶれなどから救われていました(笑)。
また、iPS細胞は、増殖して分裂したり、新たな細胞を生み出すものですが、化粧品に使われているiPS細胞培養上清液は、塗布することで、例えば、風邪をひいているときに悪い菌まで活性してしまうなど、体の内部で起こっていることに対しては、機能しません。安全性を何より大切に考えている弊社が使用している上清液の元のiPS細胞は、当グループがもつ特許技術でつくられていて、これは世界の名だたる再生医療研究を行う研究所や、大手製薬会社などにも採用されている、世界のなかでも安全とされているiPS細胞作製技術なのです。さらに、独自の原料加工技術であるにより、この培養上清液の浸透性、機能性、安全性の向上、なめらかな化粧品のテクスチャなどを実現しています」
改めて「iPS細胞培養上清液」って何ですか?
「iPS細胞培養上清液とは、iPS細胞を培養するうえで生まれる上清液です。iPS細胞は、シャーレなどに細胞の栄養となる培地とともに入れ、培養します。すると、iPS細胞は有効成分であるサイトカインや成長因子、エクソソームなどの成分を分泌しながら増えていきます。それを不純物除去の行程で、iPS細胞の層と、数百種類の有効成分を含有した液体の層に分けます。
この液体の層を精製したものがiPS細胞培養上清液です。加えますと、ここで作製されたiPS細胞そのものは、化粧品事業ではなく、本来の目的である再生医療研究に使用されます」
どうして「iPS細胞」自体をiPS細胞コスメに使わないのですか?
「まず、日本では、細胞そのものを化粧品に添加することが禁じられています。一方で、iPS細胞が分泌した成分が溶け込んでいる上清液はスキンケアの有効成分がたっぷりの液体です。もったいない、ということもありますが、世界に誇るiPS細胞の有用性を多くの人に実感してほしいという思いもあります。iPS細胞を作製するなかで生まれたこの貴重な宝物を、余すことなく利用することも、先端医療事業、再生医療に取り組むものとして大切なことと考えます」
美容医療、化粧品に使われるiPS細胞と再生医療研究用のiPS細胞との機能の違いは?
「上でも少し触れましたが、弊社では、GMP(※1)施設にて医療用グレードで作製されたiPS細胞由来の上清液を扱っており、これは“化粧品グレード=化粧品用に培養した、より安価なiPS細胞”や、化粧品への応用を可能にする安全性試験が実施されていない一部の“研究用iPS細胞”とは異なるグレードのものです。現状、このようなGMP施設でつくられた医療用iPS細胞由来のコスメは弊社を含むごく限られた工場でしか生産されておらず、臨床試験やiPS細胞づくりに取り組む当グループのiPS細胞由来コスメの原料は、将来的に再生医療に利用できるレベルのハイグレードな培地を使用して作製しているiPS細胞の副産物です。また、作製は、最高峰の品質管理の中で行われています。
『医療用の規格でクローニング(※2)したiPS細胞の上清液をコスメ製造に使う』という点は、弊社で実現した、これまでになかった、圧倒的な品質基準です。ただし、iPS細胞は自然界の、いきもの。培地のレベルや管理によって、つくられるiPS細胞はピンキリです。今後、iPS細胞による再生医療の取り組みがさらに広がっていくと、化粧品グレードのiPS細胞培養上清液由来のコスメも増え、品質にばらつきが出てくるかもしれません。現状でも、iPS細胞由来を謳った、わかりにくい製品表示をしているコスメも散見されていて、選ぶのも容易くありませんが、iPS細胞由来の有効成分の機能をしっかり実感していただくためにも、コスメの成分表にも意識を向けてみてください」
※1GMPとは、「Good Manufacturing Practice(医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理の基準)」の略で、医薬品や医療機器の安全性を確保するために、製造設備とその管理、品質管理、製造管理について製造業者が守らなくてはならないことを明確にした基準であり、日本では厚生労働省の省令により国際的なガイドラインに準拠した基準が示されています。
※2クローニングとはiPS細胞の作製工程において、質の高い完成されたiPS細胞(未分化状態を維持しているiPS細胞)のみを選び出すプロセスのこと。
株式会社ICELLEAP 営業部長 兼 開発者
加賀谷梨恵さん
株式会社 ICELLEAP(アイセルリープ) ▶︎
文/簗場久美子
※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。