元宝塚娘役・水乃ゆりさんが語る“美の原点”と星組への思い「102期だったから頑張ることができた」

しなやかな美しさと情熱的な強さ。心を揺さぶる宝塚歌劇の世界で過ごしてきた元タカラジェンヌの方の「美の秘密」に迫る企画。今回は元星組娘役の水乃ゆりさんに、在団中に頑張ってきたことや退団後の日々についてうかがいます。
惹きつけられる優美さと華やかさ。水乃ゆりさんの美しさの源
昨年12月に宝塚歌劇団を退団した、元星組娘役の水乃ゆり(みずの・ゆり)さん。見事な頭身バランスと華やかさ、長い手足を活かした表現力豊かなダンスで魅了しました。
幼い頃から美しいものが大好きで宝塚歌劇を目指したという水乃さん。「美」への憧れが追求に変わるまでのお話をうかがいます。また、所属していた星組や同期への想いも話してくださいました。
「娘役」に憧れて入団したから、大好きな娘役として卒業したかった
——退団してから5か月程経ちますが、いちばん変化を感じているのはどのようなところですか?
水乃さん(以下敬称略):自分で時間を決められることが、とても新鮮です。在団中はどうしても時間に追われて立ち止まることができず、ずっと走り続けているような感覚でした。でも今は、自分で“何もしない時間”を作れるようになりました。
また、人と会うときも、その時間をゆっくりと楽しめていると感じます。そんなひとときと、ゆとりある心の流れに変化を感じ、楽しく過ごしています。
——さっそくですが、水乃さんが退団を決めたきっかけを教えてください。
水乃:“娘役”のまま退団したかったんです。自分の見た目や持ち味的にどうしても“女役” (大人っぽい女性の役)になってしまうのが早い。 でも、娘役に憧れて宝塚に入団したので、やはり娘役として卒業したいという気持ちが強かったんです。
宝塚歌劇の世界が大好きで、いられるものならずっといたいと思ってしまうからこそ、自分の意志で退団を決めなければいけないと思いました。 なので、娘役を全うしたと思えた時に卒業しようと決断しました。
——学年が上がるとどうしても年齢が上の役を任されますもんね。水乃さんはずっと宝塚歌劇のファンだったのですか?
水乃:初観劇の小学生の時まで宝塚の世界をまったく知らなかったのですが、宙組の『外伝ベルサイユのばらーアンドレ編―』『ダンシング・フォーユー』を観た時、当時のトップコンビの大和悠河(やまと・ゆうが)さんと陽月 華(ひづき・はな)さんのあまりの美しさに衝撃を受け、ファンになりました。お芝居で涙するという経験も初めてで、 「もっとこの世界を知りたい、ずっと観ていたい」という気持ちが、「自分が届けたい」に変わりました。
永遠に続いてほしい夢の世界。鳥肌が立つほど感動した『ANTHEM』
——星組の小劇場公演は観に行かれましたか?
水乃:退団同期のみなさんと約束していたので、バウホールの『にぎたつの海に月出づ』と武道館の『ANTHEM』の両方とも4人(舞空 瞳さん、煌えりせさん、紅咲梨乃さん)でそろって観に行かせていただきました。みなさん本当に素敵で、キラキラしていて、やっぱりタカラヅカって夢の世界です!
——同期の方はみんな『ANTHEM』チームでしたね。
水乃:はい。 礼 真琴(れい・まこと)さんの歌声に出演者の気迫が重なり本当に唯一無二の魅力で、どのシーンも鳥肌が立つほど感動しました。 初めて宝塚歌劇を観たときの感動と同じように、この夢の時間が永遠に終わらなければいいと思いました。
——もう中堅を担っている102期は、活躍されている方も多いですよね。同期の方への想いはありますか?
水乃:音楽学校時代を知っているからこそ、舞台を観に行ったときに同期がいろいろな場面で輝いているのを観て、すごいなという気持ちと誇らしい気持ちでいっぱいになります。 102期だったから、みんなのおかげでタカラヅカ人生が楽しかった ですし、切磋琢磨できて自分も頑張ることができたと思うんです。「ありがとう」という気持ちでいつも観ています。
コンプレックスを受け入れられるようになりメイクの楽しさが加速
——水乃さんの舞台メイク、とてもキレイでした。タカラヅカのメイクは、上級生から下級生へ伝承されていきますよね。どなたに教わることが多かったですか?
水乃:初舞台のときにメイクを見ていただいたのは、当時星組の組長さんだった万里柚美(まり・ゆずみ、専科)さんと夢妃杏瑠(ゆめき・あんる、元星組娘役)さんです。
娘役の上級生から教わったことは、 叩き込んでとにかく地をキレイに見せるということ。 普段のベースメイクもそうなのですが、地が整っているとツヤの効果ももっと増して発色も冴えるんです。それはみなさん、口をそろえて言われていました。
凪七瑠海(なぎな・るうみ、元専科)さんが星組に出演されたときにも教えていただきましたし、でも実は いちばんお世話になったのは極美 慎(きわみ・しん、星組男役)さんなんです。 私の最後の公演だった『記憶にございません!』でも、バブル風の派手なお衣裳に合う肌の質感やアイシャドウの色みなど、最後までアドバイスをいただきました。
男役の方々に見ていただいたなかで印象に残っているのは、 自分の顔に合ったメイクをするということ。 下級生のころはつり目がコンプレックスで、下げて描くことを意識しすぎて自分の目に逆らったメイクをしていたのですが、自分の顔に合っていないので違和感があるんです。
コンプレックスをやっと受け入れられるようになり、自分の目を生かしたアイメイクや骨格に沿った影を入れるようになってから、自分でもわかるほど洗練された印象になりました。
——コンプレックスを受け入れられるようになったのはいつ頃からですか?
水乃:新人公演で音波みのり(おとは・みのり、元星組娘役)さんのお役をさせていただいた『眩耀の谷』のときです。音波さんが目をつったようなメイクをされていて、いつもはしないつり目のアイメイクに挑戦したら、同期や上級生から「いつもよりキレイだよ」と言っていただいたんです。
そのときに、 自分のコンプレックスを隠すのではなく生かした方がいいんだと、それまで思い込んでいたものから解放されて、考え方が変わりました。
現役のときに研究し続けた「自分の見せ方」が誰かの「美しさ」の手助けになれば
——お話をうかがい、昔も今も美しいものがずっとお好きなのかなと思いました。
水乃:そうなんです、キレイなものやかわいいものが大好き。
ちょっと現実的な話になるのですが…、美しさやかわいさって犠牲をともなうと年々感じるようになりました。努力をしてもすぐに結果が出るわけではなく、ときには痛みに耐えたりすることもあるわけじゃないですか。 年齢を重ねる程、スキンケアやヘアケア、ボディケアなど広くお手入れしていかないと、キレイを保つことは難しいですよね。
ネイルもあるし、マツエクもやりたいし、アートメイクも、脱毛も、美容医療など…。自分への投資は裏切らないから、 情報が溢れる時代の中で自分に合う“キレイ”を見つけて頑張り続けたいと思います。
——これから、違う形で“美”を作る道を考えているのですか?
水乃:はい!自分がこれまで極めてきた経験をもとに、女性がより美しくなるためのお手伝いができればと考えています。その第一歩として、まずはネイルの資格を取得し、次に美容師免許の取得を目指しています。
髪型やメイクに関して常に 「どうすればもっとキレイに見えるか」を追求し、たくさん練習を重ねてきました。 メイクは日々新しいものに挑戦しながら、ヘアアレンジならどの角度がいちばん素敵に見えるか、結び目の高さまでこだわって研究しました。このように自分と向き合ってきた経験を生かし、少しでも 「キレイになりたい」と努力する方の理想に近づくお手伝いができたらうれしいな と思います。
次回から、水乃さんこだわりのメイクテクを教えていただきます。お楽しみに!
宝塚OG連載 過去の記事一覧はこちら水乃ゆり
みずの・ゆり10月7日生まれ、東京都出身。2016年に102期娘役として宝塚歌劇団に入団、星組公演『こうもり…こうもり博士の愉快な復讐劇…』『THE ENYERTAINER!』で初舞台を踏んだのち、星組へ。2019年『霧深きエルベのほとり』で新人公演ヒロインを演じる。2024年『記憶にございません』-トップ・シークレット- 『Tiara Azul -Destino-(ティアラ・アスール ディスティーノ)』にて退団。
▶︎Instagram:@yuri.m_lilly
ブラウス¥28,600(TOMORROWLAND<MACPHEE>) 0120-983-511
スカート¥49,500(DES PRÉS) 0120-983-533
ネックレス¥106,700・リング[左手]¥209,000・リング[右手]¥726,000(マリハ) 03-6459-2572
バングル¥26,400(ete) 0120-10-6616
中に着たキャミソール/スタイリスト私物
撮影/岡本 俊 ヘア&メイク/加藤志穂(PEACE MONKEY) スタイリスト/伊藤舞子 構成・文/淡路裕子
※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。