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2013.1.29

西の国美的通信vol.30 魅惑の香りの世界へin大分香りの博物館(1)

気になった香りは備え付けのにおい紙を香水につけて試すことができる。白衣を着ているのが、香りに精通している吉田さん。
実際に使われていた蒸留装置の展示も。同じ用途でもいろんな形が興味深い。
540種類の香料瓶が並ぶ調香台。圧巻の光景だ。
調香台は“オルガン台”とも呼ばれる。
世界の香水ギャラリー。ガラスケースの中の美しい香水瓶にしばし魅了される。

香り。それは時に気分を高揚させ、時に癒やし、時になつかしい場面を呼び起こさせてくれるもの。香りの記憶は永遠で、ある匂いを嗅いだ瞬間、遠い昔のことなのに、いきなり記憶がよみがえったということも少なくありません。そんな香りの不思議が知りたくて、師走のある寒い日に、私は大分県別府市にある「大分香りの博物館」へ向かいました。

別府駅からタクシーで15分ほどの場所にある博物館は、1階から3階まで建物丸ごとが香り一色。館内では香料の種類や原料、調合方法をはじめ、世界中の香りにまつわる歴史などが学べます。そのうえ、調香やアロマの体験もできるので、コスメ好きの女性はみんな香りにも敏感ですから、きっと美的読者のみなさんも興味津々のはず。

到着早々、私も1階からじっくり香りの世界に飛び込んでみることにしました。「天然香料の原料素材には、動物と植物由来のものに大別されていて、動物性の香りは世界中で4つしか香りがありません。なかでも、この麝香鹿の香り(ムスクともいう)は、子どもやおばあちゃんには分からない。成熟した女性にしか嗅ぎ分けることができない香りなんですよ」。開口一番、こんな話をしてくださったのは、同館の参与である吉田千秋さんです。

「世界中でたった4つ?」「ムスクにそんな秘密があったとは…」。念のため、私に麝香鹿の香りが分かるのかどうか、挑んでみることにしました。すると、あま〜い香りではあるのですが、どこか獣臭が混ざっていて、残り香が妙に鼻につく。聞けば、この香りは麝香鹿の生殖腺嚢(せいしょくせんのう)から採取するらしく、少々考え深くもありました(笑)。こんな風に同館では、香りのお勉強とともに、香りそのものを嗅ぐこともできるので、とてもリアルに香りを体感することができます。

館内にはこれまで見たこともない大きな蒸留装置や、スタイリッシュな雰囲気を放っている調香台なども展示されています。「ここに並んでいるのはせいぜい500、600種類ですが、調香師は5000種類ぐらいの香りの中で調香していくんですよ」と吉田さん。人間はそれだけの数の匂いを嗅ぎ分けることができるのか? もはや想像の域を超える職人技に、ただただひれ伏すばかりです。

視線をちょっと右に移すと、まばゆいばかりの光の中に、今度は世界中の美しい香水瓶たちが並んでいました。香水の瓶って、どうしてこんなにも美しいのでしょう。思わずうっとりと見とれてしまうような素材感や色合い、色気のあるフォルム。どれをとっても魅惑的です。ずっと昔から女性の心を捉えて離さないというのも納得。これこそ普遍的なデザインです。一角にはそんな香水瓶のデザインを数多く手がけてきたピエール・ディナンの作品や、ラフスケッチなども展示されていて、しばし時間も忘れて見入ってしまいました。さらに、その奥には香水のアカデミー賞といわれる「FIFI賞」受賞の香水瓶の展示も。こちらは年代別に鑑賞することができるのですが、香水瓶というのは何十年前のプロダクトデザインであっても、さびれるどころか今もなお新しい。ちょっとうれしい発見でした。

続いて、2階では香りの歴史と人々の関わりについて、貴重な歴史資料とともに学ぶことができます。なかには紀元前の香水瓶もあったりして、歴史的価値のある貴重なものも多々ありました。かつて香りは薫香だったこと。普段愛用しているフランキンセンス(乳香)は、紀元前の太古から存在していたことなど、たくさんの驚きや発見、感動を覚えたのですが、ここで書いてしまうと来館した時のみなさんの楽しみが半減してしまいますので、今回はこの辺で控えます。次回は“はじめての調香体験”に続きます。

<取材協力>
大分香りの博物館
http://oita-kaori.jp/

※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。

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