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2012.3.22

大高博幸の美的.com通信(93) 『ももへの手紙』、『ファミリー・ツリー』etc. 試写室便りNo.23

©2012 『ももへの手紙』製作委員会

いま、いちばん大切にしたい、家族の愛の物語。
『ももへの手紙』
4月21日から全国ロードショー。
詳しくは、momo-letter.jpへ。

ファーストシーンは瀬戸内海、汐島へと近づく一艘のフェリー。デッキに佇むのは小学校6年生の少女・もも。その時、ももを目指して大小3つの滴が空から猛スピードで降りて来て、上陸した彼女の跡を追いかける…。
このアニメーションは可愛くて面白くて、しかもかなりジーンとさせる珠玉のような一編です。
「ももへ」とだけ書かれた手紙を残し、事故で亡くなってしまったお父さん。お母さんと一緒に、お母さんの故郷・汐島へ移り住んだ もも。そこで友達になった頼もしくて心優しい少年・陽太&その幼い妹・海美。そして3つの滴…、実は不思議な妖怪たち(神様が落ちぶれて妖怪になったらしい“見守り組”のイワ&カワ&マメの3人で、重要な秘密の使命を担っています)との出会いと交流。
上映時間120分というのは、この種のアニメとしては少々長め。もも&見守り組VSイノシシ2頭とのチェイスシーンが中盤にあり、それはとてもスリリングでドキドキさせるに十分でしたが、必要以上に長くて全体のバランスを崩しているような気もしました。
でもでも、登場人物全員のキャラクターが興味深く、声優さん達のセリフのうまさにも拍手を贈りたい2時間でした。もも、お母さん、大叔父大叔母夫婦、見守り組、陽太と妹、お母さんの幼な友達のドジな郵便屋さん…、その誰にも愛情を感じさせてくれるのです。
もう一つ。お母さんの実家の薄暗い屋根裏部屋…、そこに差し込むぼんやりとした外光&柔らかく温かい電球の光など、そのあまりの美しさには、うっとりと魅了されてしまいました。
試写室で、「ワッハッハー」とか「ウフフフフ」とか笑いながら観ていた大勢のジャーナリストさん達は、観終えると涙を拭いてから、ほんわかorしみじみとした顔つきで出口に向かって行きました。

 

© 2011 The Weinstein Company LLC. All Rights Reserved.

名優との共演にイギリスへやって来たマリリン・モンロー。
ただひとり彼女を理解してくれたのは、まだ23歳の青年だった。
『マリリン 7日間の恋』(原題=My Week With Marilyn)
3月24日から全国ロードショー。
詳しくは、marilyn-7days-love.jpへ。

1956年、映画『王子と踊子』の撮影のためにロンドンへやって来たマリリン・モンロー(改めて言うまでもない、20世紀最大のスーパースター)。何1つとして噛み合わない監督兼王子役のSir.ローレンス・オリビエとの仕事に不安と孤独感とを深める中、マリリンは23歳という若さのサード助監督コリン・クラークと恋に落ちる…。
この作品は、コリン・クラーク自身が40年以上も胸に秘めて来た実話の回想録(出版済み)を映画化したモノ。
撮影準備段階のプロダクションオフィス、マリリンの到着、台本の読み合わせ、撮影風景、ラッシュ(部分試写)の模様、宿泊先でのマリリンの状態、オリビエの妻ヴィヴィアン・リーの一方的な嫉妬、マリリンとクラークのウィンザー城への逃避行etc、etc…。それらを通して描かれるのは、マリリンの一女性としての本質的な弱さ・脆さ・不安定な情緒。そして、そんな彼女を見守るクラーク青年の思いやりと恋心。
マリリン役のミシェル・ウィリアムズは、マリリンそっくりとまでは言えませんが(モチロン、この映画は“そっくりショー”にあらず)、違和感を抱かせないだけでも十分に立派。マリリンの映像を徹底的に研究したという努力も実を結んでいます。
クラーク役のエディ・レッドメインは、青年らしい感受性と育ちの良さ、大人の男の思慮深さとを絶妙なバランス感覚で好演。
脇役では、老女優シビル・ソーンダイク役のジュディ・デンチが、いつも以上に光っていました。
上映時間は100分です。
P.S.1 テーマとは関わりが深いとは思えないエピソードが幾つか用意されていますが、それらは整理orカットして、マリリンの深層心理を突っ込んで描いたなら、この映画はさらに充実した作品となったはず。たとえば、小道具係がケンカ腰でクラークに絡むスタジオの場面でユニオンの厳しさor強さを示しておきながら、別の場面では王子役のメークをしたオリビエが眉を勝手に直しているところ(ユニオンで禁じられている行為)が映し出されるなど。仮に、マリリンが化粧係にメークされている場面を上手に脚色するとかしたなら、より簡潔かつ重層的にテーマを掘り下げるコトもできたのでは?なんて、生意気でしょうがチラッと考えてしまいました。
P.S.2 あるシーンで、マリリンがクラークを相手に「あなたに似て細身だったわ」と、ひとり言のようにツブやく「ジョニー・ハイドさん」という名前(映画の中では説明されていませんが、このハイド氏はエージェント兼マネージャーとして無名のマリリンの売り出しに奔走中、心臓発作か何かで急死した、マリリンにとって不可欠な存在であった人物)…、それが単なるセリフの1つとして無意味に扱われていた点が非常に残念。で、僕は原作本を、そこだけでも読まずにはいられなくなってしまったのでした。

 

© 2011 Twentieth Century Fox

自分だけが知らなかった家族の秘密。
楽園で迎えた、人生最大の危機——
『ファミリー・ツリー』(原題=The Descendants)
5月18日から全国ロードショー。
詳しくは、familytree-movie.jpへ。

主役のジョージ・クルーニーが、とにかく、とても素晴らしかったです。つい最近まで彼の全身に充満していたアクのようなモノが消えて、「味のある俳優になったなぁ」と強烈に感じさせられました。この映画はアメリカ本国で評価が高く、「ジョージ・クルーニーの新境地」とか、「彼が最も感情を露にした、キャリア最高の演技」といったコメントが、数多く発表されているそうです。
舞台はハワイのオアフ島。とは言えコレは、観光的要素を適度に採り入れたという類いの中途半端な作品ではありません。仕事一筋に生きて来た弁護士マット・キング(クルーニー)が、予期せぬ不幸に見舞われて愕然とするところから始まる人間ドラマ。上質なユーモアと語り口が心に染み入る上映時間115分の作品で、特にラストシーンは最高の出来。穏やかな充実した気持ちに包まれながら、席を立つコトができます(100%保障します)。
ストーリーそのものも話の展開も興味深かったのですが、僕が一番感心させられたのは出演者達の演技でした。おそらく、キャスティングの段階からアレクサンダー・ペイン監督の指導までが完璧だったのだとは思いますが、子役から脇役に至るまで非の打ちどころがないのです。
将来はスター女優として大成しそうなシャイリーン・ウッドリー(クルーニーの長女役)の奥行きのある演技と美貌。オバカの見本みたいでいて実はそうではない若者役ニック・クラウスの自然なうまさ。その他、アマラ・ミラー(子役)、ジュディ・グリア(最良の良妻賢母型女性、ジュリー・スピアー役)が特に賞賛に値します。
この映画は決して派手ではありませんが、ぜひともヒットしてほしい優秀作。ひとりで観ても、友だちと観ても、彼氏と観ても花マルです。「ジョージ・クルーニー? 好きじゃないけど…」って人も、ぜひ観てください。“男を観る目”が変わりますよ。
では!!

※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。

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