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2018.10.16

『 マイ・プレシャス・リスト 』『 ライ麦畑で出会ったら 』『 旅猫リポート 』『 アラン・デュカス 宮廷のレストラン 』 試写室便り 【 大高博幸さんの肌・心塾 Vol.470 】

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©2016 CARRIE PILBY PRODUCTIONS, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

IQ 185 の超天才。だけど コミュニケーション能力ゼロの屈折女子が手にしたのは「 幸せになるためのリスト 」だった――。

全ての女子に元気を届ける、
ユーモアと優しさに満ちた感動作!

マイ・プレシャス・リスト
アメリカ/ 98 分/ PG 12
10.20 公開/配給:松竹
my-precious-list.jp

【 STORY 】 ニューヨークのマンハッタンで暮らすキャリーは IQ 185、ハーバード大学を飛び級で卒業した天才だが、友達も仕事も持たず、読書ばかりしている 【 コミュ力 】ゼロの屈折女子。話し相手は セラピストのペトロフだけ。ある日 彼は キャリーにリストを渡し、そこに書かれた 6 つの課題をクリアするように告げる。「 何のために? 」「 それで問題は全て解決するの? 」半信半疑ながらも、まずは 金魚を 2 匹 飼い始め、昔 好きだったチェリーソーダを飲み、新聞の出会い広告で デート相手を探し…と、1 つずつ項目を実行していくキャリー。そして、人と関わり 打ち解けたり 傷ついたりする中で、徐々に自分の変化に気づいていく。キャリーは 果たして リストを全てクリアして、幸せを手にすることが できるのか――? ( プレス資料より )

知能指数が 圧倒的に高く、そのせいなのか 世俗的な事柄を いっさい無視して ( というよりは、ほとんどバカにして ) 、実社会との関わりを少しも持たずに暮らしている 生意気な小娘……。そんなキャリーが、セラピストのペトロフ先生 ( ネイサン・レイン ) から手渡された課題〝 TO DO LIST 〟に しぶしぶ 挑戦していくうちに、自分自身の視野の拡がりや感覚の変化を感じて ハッピーになっていくという、かなりユニークなストーリー。

主役は『 ロイヤル・ナイト 英国王女の秘密の外出 』( Vol.344 ) で、エリザベス王女 ( サラ・ガドン ) の妹・マーガレット王女を 天真爛漫に演じて注目された ベル・パウリー ( ’92 年生まれ ) 。本作では 随分 大人びて見えるものの、天然風・コメディエンヌ風の魅力は健在です。

肝心の〝 TO DO LIST 〟の中身は と言うと、① ペットを飼う、② 子供の頃に好きだったコトをする、③ デートに出掛ける、④ 友だちを作る、⑤ 一番 お気に入りの本を読む、⑥ 大晦日を誰かと一緒に過ごす、という 6 項目。「 どうして こんなコト、しなくちゃいけないの? 」ってな調子で ひとつひとつ挑戦していくのですが、間もなくキャリーは、自分に欠落していた〝 人と有意義な関係を築く 〟という、至って当たり前の日々の意味 or 価値を実感し始めます。

赤の他人のように感じていた or それ以上に嫌悪していた父親 ( ガブリエル・バーン ) の真情を知って 驚いたり感激したり、当然の話ながら 男性にも多様な人格があるコトを初めて理解したり、クリスマス・イヴの夜には、本物の恋の芽生えを予感したりもするという 展開 or プロセスが面白い。
But、僕が 最高に良かったと感じたのは、人なつっこくて 派手で エロいキャラクターのタラ ( キャリーよりも幾つか年上。演ずるのは ヴァネッサ・ベイヤー ) と、意外にも 心の通う仲になるという、キャリーの価値感の大きな変化でした。そのタラは、目下 恋愛中の ハンサム × ウルトラセクシーな相手 ( 画面にはホンの少ししか現われないので、見逃すべからず ) のコトを、「 国宝級の舌の持ち主なの 」などと言い放って キャリーをアゼンとさせたりもする、あけっぴろげな性格。それを少しも下品に感じさせなかったのは、V・ベイヤーの 持ち味 × 演技力と、スーザン・ジョンソン監督のスマートな演出の賜。

公衆電話ボックスやポラロイドカメラが 画面に登場するので「 おや? 」と思いながら観ていたら、この原作は 2003 年に出版された ヤングアダルト小説とのコト。時代設定を 原作のまゝにした というだけのコトでしょうが、若い観客の皆さんは 戸惑ってしまうかもね。僕に言わせれば、そんなに昔の話ではないんですけど……。

 

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©2015 COMING THROUGH THE RYE, LLC ALL RIGHTS RESERVED

明日は きっと、今日よりはマシさ。
たぶんね。

『 ウォールフラワー 』『 シング・ストリート 』に続く、愛すべき珠玉の青春映画。

ライ麦畑で出会ったら
アメリカ/ 97 分/ PG 12
10.27 公開/配給:東北新社、STAR CHANNEL MOVIES
raimugi-movie.com

【 STORY 】 1969年のアメリカ。冴えない高校生活を送っていた 16 歳のジェイミーは、「 ライ麦畑でつかまえて 」の主人公 ホールデンに共感し、自分こそが 真の理解者だと思い込む。つらい日々のなかで支えとなっていたのは、自身が書いた脚本の舞台で主演することだけだった。しかし 舞台化するには、作者であるサリンジャーの許可が 不可欠。そこで、ジェイミーは サリンジャーの家を探すため、演劇サークルで知り合った少女 ディーディーとともに 旅へ出ることを決意する……。( プレス資料より。一部省略 )

不朽の青春小説、J・D・サリンジャーの「 ライ麦畑でつかまえて 」に心を奪われた 16 歳の青年の成長物語。その年代特有とも言える 瑞々しさ、痛々しさ、甘酸っぱさ、ホロ苦さが、リアルに詰まった一篇です。
ごくフツーに演技していた ジェイミー役の アレックス・ウルフが、突然 カメラ目線で 観客に話し出すというシーンが 最初のほうに数回あり、それに関しては 僕は少々 興をそがれましたが ( 安易な手法に逃げているような気がして ) 、全体的には 年代を問わず、普遍的な感情に訴えかける ハートウォーミングな作品となっています。

ジェイミー役の A・ウルフは、不器用だが 情熱的で 一途な役の性格を真撃に好演。
サリンジャー役で 2 場面に登場する クリス・クーパーには 独特な雰囲気と存在感が出ていて、いつもとはニュアンスの異なるメイクアップが 彼を引き立てゝもいました。
もうひとりの重要な登場人物、ディーディーを演じているのは ステファニア・オーウェン。そばかすだらけの丸い童顔の彼女が、冷静でいて、しかも非常に優しい、包容力の豊かな女子を見事に好演……、もたつきながら進行する物語に 生彩を与えています。ディーディーは 難しいコトを 口にするタイプでは全くありませんが、思考の回路は 哲学的で、自分の考えを 驚くほど しっかりと持っている……。こんなに精神年齢の高い 16 歳の女の子って、メッタに いません。もしも「 カワイブリッコをしてきた自分が、今となっては 恥ずかしい 」などと感じるコトが あるという方々は、ディーディーの言動と表情に 100 % 集中して観るコトをオススメします。

監督は、これが長編映画デビューとなる ジェームズ・サドウィズ。テレビ向けのシリーズ「 フランク・シナトラ/ザ・グレイテスト・ストーリー 」で エミー賞の監督賞を獲得した経歴の持ち主。次回作を楽しみに待っています。ガンバってください。

 

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©2018 「旅猫リポート」製作委員会 ©有川浩/講談社

ぼくは、最後まで、サトルの猫でいる。

1 人と 1 匹の 新しい飼い主を探す旅。
彼らの旅が 終わる時、
あなたは きっと 幸せに包まれる――。

旅猫リポート
日本/ 118 分
10.26 公開/配給:松竹
tabineko-movie.jp

【 STORY 】 元 野良猫のナナは、交通事故にあったところを 心優しい 猫好きの青年・悟に助けられ、5 年間、飼い猫として 幸せに暮らしてきた。しかし、悟は とある事情で ナナを手放さなくてはならなくなり、ナナと一緒に 新しい飼い主を探す旅に出る。それは 図らずも、悟の人生を ふりかえる旅となる。果たして彼らの旅の行方は――。そして、旅の終わりに明かされる、悟の「 秘密 」とは――。( 試写招待状より。一部省略 )

有川 浩の 数多い作品の中でも、極めて評価の高い「 旅猫リポート 」( 講談社刊 ) の映画版、主人公の悟と猫のナナとの 固い絆を描いた ハートフルな作品です。
映画が 始まると間もなく涙腺が 緩み、118 分間に何度か涙をコボしました。物語の背景には 深い哀しみがあるのですが、主要な登場人物たちが とても優しく、いゝ感じで 繋がっているところにも好感を覚えました。

展開は やゝスローで、ユーモアのセンスは かなり凡庸 ( 特に台詞 ) 。しかし、程良く しっとりとした情感があって、猫と登場人物たちの気持ちには 真実味が感じられました ( そうでなければ、涙なんてコボれませんよね ) 。

主演は 福士蒼汰 ( ’93 年生まれ ) で、心優しい性格、健康的な体格の悟役を好演。そのためもあって〝 秘密 〟にされていた〝 とある事情 〟は、僕には全く予想外でした。ナナ役の猫 ( ナナ、’14 年生まれ ) は セルカークレックスのオスで、その〝 心の声 〟に起用されたのは 高畑充希 ( 僕は、男の声優を使うほうがよかったのでは? とも感じました ) 。その他、竹内結子、木村多江、広瀬アリス、大野拓朗、山本涼介、前野朋哉らが、それぞれ適役を好演しています。
監督は『 植物図鑑 』( Vol.344 ) 等の三木康一郎。

これは 猫好きの皆さんには、忘れられない映画となるでしょう。僕は犬派の人間ですが、本作のナナには強い愛着を覚えました。ナナには、犬っぽい 一途なところがあったからかも……。

 

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© 2017 OUTSIDE FIMS – PATHÉ PRODUCTION – JOUROR FILMS – SOMECI.

ミシュラン 18 ッ星を誇る 仏料理界の巨匠 アラン・デュカス。
ヴェルサイユ宮殿に 1700 年代の宮廷レストランをオープンさせるため、世界の美食を探し求める!

アラン・デュカス 宮廷のレストラン
フランス/ 84 分
10.13 より公開中/配給:キノフィルムズ
ducasse-movie.jp

【 INTRODUCTION 】 美食界のスターとなった料理の天才、アラン・デュカスを追ったドキュメンタリー。18 のミシュランスターを含む 23 のレストランを世界中に持つデュカスは 常に世界を旅し、匂いを嗅ぎ、味を見て、自身で素材を吟味する。その他、学校建設や執筆活動と、意欲的に様々なプロジェクトを手掛けるデュカスにとって、料理は宇宙のように終わりがない。デュカスの求めるものとは? 完璧な味? 自然のエッセンス? 理想的な料理? すでに全てを手にしたように見える男が 追い求めるものとは何なのか。世界一有名なシェフでありながら 秘密の部分も多いデュカスが、2 年にわたる密着取材に応じ、絶え間なく進化し続ける 彼の世界観を見せてくれる。( 試写招待状より )

手抜きしていると思われそうですが、プレス資料の解説文が 素晴らしく行き届いていたので、主要な部分を抜粋して御紹介します。

「 カメラは、彼の新たなる挑戦を追いかける。ヴェルサイユ宮殿に、ルイ 16 世や マリー・アントワネットの〝 王の食卓 〟を再現するレストラン< オーレ >をオープンするのだ。どんな大富豪でも権力者でも、招待されなければ 料理を味わうことは おろか、入店さえも許されない。フランス料理の歴史を変えたと称えられる、当代随一のシェフ、アラン・デュカスが 究極のディナーを創りあげるため、ニューヨーク・ロンドン・リオ・フィリピン・香港・パリ・モナコ・東京・京都と 世界中を飛び回り、最高の素材と新しい味の体験を追い求める。
自らを〝 宣伝 〟することを極端に嫌い、映画化のオファーから 1 年間、頑として首を縦に振らなかった アラン・デュカスを説得したのは、『 プルミエール 私たちの出産 』で セザール賞ドキュメンタリー賞にノミネートされた、ジル・ドゥ・メストル監督。社会派の映像作家として高く評価されている彼が、シェフとしてだけでなく 一人の人間としてリスペクトする アラン・デュカスの ありのままを撮りたいと 直訴を続けたのだ。
信頼の絆を結んだメストル監督が捉える、情熱と好奇心に輝く瞳で、目標は 自身の名誉でも 満足でもなく、「 お客様の心に〝 美しい思い出 〟が残ることだ 」と語る アラン・デュカスの姿には、胸を打たれずにいられない―― 」。

本作は、上記の解説文どうりの内容です。コメントを書き始めると 延々と長くなりそうなので、極力 ポイント的に まとめるコトにします。

① まず 最も印象に残ったのは、ある場面でのデュカス氏の言葉、「 素材と技術の次に重要なのは シェフの魂だ 」でした。本気で そう語っているデュカス氏の顔を観た瞬間、僕は 彼という人間を、ほとんど 100 % 好きになりました。

② デュカス氏の〝 美食 〟の追求の仕方には、独自のモノが あるようです。そのホンの一例として、〝 王の食卓 〟のために奔放する彼が、なんと 貧民地区での無料給食に尽力しているシーンが 挙げられます。それは「 飽食と飢餓の二極化は 許しがたい 」という、彼の断固とした考えに基づくもののようでした。

③ デュカス氏は、ビジョンを持って勤勉に努力する料理人たちを、心から愛してやまないようです。そして「 迷うより、やってみることだ 」と彼らを励まします。また 様々な場所で、時に応じて発せられる彼の言葉 ( 「 大切なのは ディティールの積み重ね 」「 記憶に刻まれるには 多くの要素が必要 」等々 ) には 説得力と共に連続性があり、矛盾を感じさせる点は ひとつもありませんでした。

④ デュカス氏には〝 尊大な態度 〟を取るようなところが、100 % ありません。実は、中途半端だったり、中身が まるで 伴わない〝 お偉い方 〟ほど、〝 尊大な態度 〟を取りたがる or 取ってしまいがちなもの ( と、僕は 経験上、確信しています ) 。それが 彼には、本当に ありませんでした。これって 当たり前のようでいて、とても凄いコトです。

本作は、画面に登場する究極の料理の数々を、カタログのように鑑賞するタイプのドキュメンタリーではないと、僕は感じました。むしろ これを観た方々が、「 デュカス氏の世界観 or 仕事に対する総体的な考え方を見習って、自分も日々、自分なりに努力を積み重ねていこう 」と感じたとしたなら、メストル監督は ( 多分、デュカス氏も ) 「 映画化して良かった 」と喜ぶのでは? と思います。

 

 

アトランダム Q&A企画にて、 大高さんへの質問も受け付けています。
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biteki-m@shogakukan.co.jp
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ビューティ エキスパート
大高 博幸
1948年生まれ。24歳の時、日本人として初めて、パリコレでメークを担当。『美的』本誌では創刊以来の連載「今月のおすすめ:大高博幸さんが選ぶベストバイ」を執筆。
■大高博幸さんの 肌・心塾
http://biteki.com/beauty-column/ootakahiroyuki

※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。

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