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2025.10.30

香水の新トレンドは?ゲラン専属調香師デルフィーヌ・ジェルクが語るフレグランス界の今

1828年の創業以来、世界中で愛されるゲランの香水。その専属調香師として活躍するデルフィーヌ・ジェルクが初来日。フレグランス業界の最新トレンドから香水の纏い方、そして香りを生み出す独自のクリエイションプロセスまで——調香師ならではの視点で語っていただきました。

EDIT&WRITING: 美的.com編集部

美的.com編集部

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2001年に小学館が創刊した美容専門誌『美的』の公式WEBサイト『美的.com』と、全ての公式SNSを運営しています。美容を愛し、トレンドにも敏感な20~30代のエディターが多く在籍。コスメはもちろん、イベントやビューティアイコンの最新情報をどこよりも早く詳しく発信しています。コスメマニアによる丁寧でわかりやすい全色スウォッチが好評で、選りすぐりの新作コスメを深掘りしたニュース記事制作が大得意。動画編集にも注力し、公式YouTubeを毎週水金の夜20時に更新中です。

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ゲラン専属調香師&フレグランス クリエイション ディレクター

デルフィーヌ・ジェルク

香りは今、「個性」や「感情」を表現する時代へ

Q. 世界的にどんな香りがトレンドだと思いますか?

現在は、個性が感じられ、存在感のある濃密なフレグランスへの需要が高まっています。人々は、自分らしさを感じられる香り、物語を語る香り、そしてクラフトマンシップを感じさせる香りに惹かれるようになっています。

軽やかでクリーンな香りが主流だった時代を経て、今は深みや質感、感情のある香りへと回帰しています。ウッディノート、樹脂系、リッチなフローラルなどが再び人気で、現代的な手法で、軽やかでありながら力強く調合される傾向があります。

フレグランス業界全体も、より自由な方向へ進化しています。以前は、トレンドがより一方向的かつグローバルに決められていた時代もありましたが、今はむしろ個性が重視されるようになっています。自分のアイデンティティの一部として、感情や価値観を表現する手段として香水を身に着ける時代になっています。

また、香水づくりそのものに対する透明性も高まり、香水に何が含まれているのか、原料がどのように調達されているのか、誰が創っているのかを知りたいという関心も強くなっています。これは素晴らしいことです。なぜなら、それこそが調香の本質——“本物らしさ”と“感情”——へ立ち返ることだからです。

「良い香りね」は最高の褒め言葉

Q. 普段、どんな時にフレグランスを纏っていますか?

ディナーなど特別なシーンでは、「パチュリ パリ」と「ヴァニーユ プラニフォリア エクストレ 21」をミックスして纏います。私はパチュリの香りが大好きで、肌につけるとセンシュアルに香るところが気に入ってます。


左から/ゲラン ラール エ ラ マティエール パチュリ パリ 100ml ¥50,270、同 ラール エ ラ マティエール エクストレ ヴァニーユ プラニフォリア エクストレ 21 50ml ¥85,800

仕事中は、調香師という職業柄、香りが邪魔になってしまうので香水はつけません。
ただ仕事が終わった後に、その日試作した中で一番成功した香りをつけて出かけます。商品化する上では、良い香りがするだけでなく、その持続力や、周りの人からの反応も大事なのです。
もし会った人から「今日、良い香りがするわね」というコメントをもらわなかった場合、その試作品は商品化しません。印象に残らない香りということですから。

ちなみにフランスでは日常的に「あなた、とても良い香りがするね」と伝えることがよくあり、最高の褒め言葉なのです。日本で同じ文化があるのか分かりませんが、もし知人が素敵な香りを纏っていたら、ためらわずに褒め合ってくださいね。

Q. おすすめのフレグランスの纏い方は?

控えめに纏いたい時は、パルスポイントを呼ばれる手首、首すじ、それから膝の裏といった体温が高いところにつけるのがおすすめです。そのほか髪につけて動くたびにふわっと香らせるのも良いですし、個人的にはセーターやスカーフにつけるのも好きです。

毎日同じ香りをつけるというより、まるでアクセサリーを変えるように、その日のファッションや気分によってフレグランスも変えてみると、より日常が楽しくなると思います。

服をデザインするように、香りを視覚的にデザインする

Q. ファッションスクール出身という珍しい経歴ですが、ファッションデザインの経験は調香師の仕事にも活かされていますか?

ええ、ファッションデザイナーが服を作るように、私も同じプロセスでフレグランスをデザインしています。
そのひとつがムードボードを作ること。頭で思い描いている香りを、写真や文章でビジュアル化することでストーリーが作りやすくなるのです。マーケティングチームと香りのイメージを共有する時も、このムードボードがとても役に立ちます。


右のボードは、アクア アレゴリアの『ローザ ヴェルデ』 を構想していた時に作ったムードボード。キューカンバーからインスピレーションを受けた香りで、みずみずしく、心も体も幸福で満たされているムードを思い描きました。

ファッションデザインを学んだ経験は、私が調香師を志す大きなきっかけになりました。卒業制作では、カシミヤやリネンを使ったウェアに合わせ、それぞれの素材のイメージに合うフレグランスも制作しました。リネンにはウッディな香りを、カシミヤには柔らかなムスクの香りを――そんなふうに素材の質感や色、触れた感覚から香りのイメージが広がった体験が、私を調香の道へと導いてくれました。

Q. 今後つくってみたい香水はありますか? 表現したいテーマや用いたい素材などをおしえてください。

「あなたが今纏っている香り……どのフレグランスか正確には言えないけれど、“絶対にゲラン”だとわかる。」これはフランスでよく耳にする言葉です。私がこれからも創り続けたいのは、まさにそんな香り——人の心を動かし、一度香りを試せばわかる存在感と感情をもったシグネチャーフレグランスです。

ゲラン公式サイト

 

※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。

EDIT&WRITING: 美的.com編集部

2001年に小学館が創刊した美容専門誌『美的』の公式WEBサイト『美的.com』と、全ての公式SNSを運営しています。美容を愛し、トレンドにも敏感な20~30代のエディターが多く在籍。コスメはもちろん、イベントやビューティアイコンの最新情報をどこよりも早く詳しく発信しています。コスメマニアによる丁寧でわかりやすい全色スウォッチが好評で、選りすぐりの新作コスメを深掘りしたニュース記事制作が大得意。動画編集にも注力し、公式YouTubeを毎週水金の夜20時に更新中です。

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取材/文: 鬼束真帆

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