絵本『ピンクのカラス』で、本当に伝えたいこと。【松本千登世「へーっ、美容って自由なんだ!」vol.22】
年齢とともに常識という枠にとらわれがち。美容も例に漏れず。そんな私の凝り固まった価値観や美意識をがらりと変えた「ひと」「もの」「こと」をひとつひとつ丁寧に綴りたいと思います。第22回は、構想8年、制作1年半、ようやく出来上がった絵本『ピンクのカラス』と、その美容的メッセージについて。
「もし、カラスの羽がピンクだったら、愛される?」
まず、美的GRAND読者の方々へ。自分が創った絵本についてこんなにも熱く語ること、どうかお許しください。このコーナーの編集担当・Sさんは、私の溢れる愛とパッションにたじろぎながらも、快くこの思いを皆さんにお伝えする機会をくれました。
絵本『ピンクのカラス』が生まれたきっかけは、遡ること8年、ある人の何気ないひと言でした。「もし、カラスの羽がピンクだったら、愛されるのに、ね」。羽が黒だから、嫌がられたり、怖がられたりするんじゃないかと、その人は言いました。そこで、ピンクだったら? という突拍子もない思いつき。
心底驚きました……、が、同時にその言葉は本質的なメッセージを秘めているとも思いました。あっという間に想像が広がって、ものの数分でストーリーの骨格は完成。この出来事をそのままエッセイとして綴るのがいいのか、それとも、児童書として物語に仕立てるのがいいのか。思案を巡らせた結果、絵本として表現したい、画は世界を舞台に活躍するグラフィックアーティストの牧かほりさんしかいない、と決意。時間をかけ、対話を重ねて、ようやく出来上がった一冊です。
グラフィックアーティスト・牧かほりさんの画は、鮮烈で大胆。それでいて、緻密で繊細。小さな子供たちは、その美しさに目が釘付けに。
「誰かの真似」や「何かのふり」の違和感に気づくこと
物語の中で、カラスは「羽がピンクだったら、愛される」と言われたことをきっかけに、ピンクだったら? 黄色だったら? 青色だったら? と自らの羽に次々と色を塗り重ねていきます。そのたび、心に小さな違和感が重なり、やがて……。カラスは、気づく。本当の自分自身に気づくのです。
じつはこのストーリーを思いついた8年前。私は、エディター、ライターとして美容に携わりながら、「矛盾」を感じていました。小顔=顔は小さいほうがいい、目力=目は大きいほうがいい。愛され肌に、モテメイク。似合う色はこれ、似合うヘアスタイルはこれと、正解を見せる……、みたいに。
「なりたい自分」「ありたい自分」よりも、「見られる自分」の理想形をひとつに定めて、そこに導く提案をしていたから。もっと自由でいいのに。もっと個性的でいいのに。自分が自分を「結構いいじゃない?」と思えることが、すなわち美容の意味や価値のはずなのに。何を隠そう、私自身も無意識のうちにその枠に入ろうと、美容に追いかけられていた気がするのです。
今思えば、『ピンクのカラス』を通して、そんな自分に「私は私でいいじゃない?」と言い聞かせようとしたのだと思います。自分をエスティームすることは、他人をリスペクトすることとワンセット。自分を愛することができたら、他人を愛することができる。美容という視点でも、普遍的で本質的なメッセージを感じ取ってもらえるはず、そう信じています。
子供も大人も、女性も男性も。美容に興味があってもなくても。ひとりでも多くの方に、この本に触れてほしいと思います。個性と多様性の時代になったこと、もう後戻りしたくないことを、脳ではなく、心で理解して、力強く前に進みたい。『ピンクのカラス』で背中を押すことができたら。こんなに幸せなことはありません。
変形A3サイズと、絵本にしてはかなりの大判。アートとして飾ることもできる、綴じないスクラム製本。『ピンクのカラス』(BOOK212)¥5,500(スリーブケース付き)
お問い合わせは コチラ
購入は コチラ
※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。