【大学教授も実践】生産性が落ちたと嘆くお疲れ女子がやるべき「30分」切り替えのすすめ
仕事のやり方“ココ”を変えればパフォーマンスがアップする!
法学、語学、社会心理学、脳科学などの知識を駆使し、現代人のコミュニケーションとストレスの問題を研究する明治大学教授の堀田秀吾さんのもとには、ふだんからいろいろな種類の相談事が持ち込まれます。とりわけ最近は、ストレスについての相談を受ける機会がグッと増えたそうです。
「加齢とともに、要領が悪く、生産性も落ちた気がする。疲れや不調も取れにくいし、もう無理!」
そんな声が、ある日、堀田教授の元に届きました。発信者は40代の女性。勤務先を聞くとだれもが知る有名企業、しかも管理職。さぞキラキラしたキャリアを重ねていると思いきや、実情を深ボリすると、他人事とは思えない、わかりみの深い現実が見えてきたそうです。
さて、堀田教授はどんなアドバイスをしたのでしょうか?
イラスト/たかまつかなえ
科学的裏付けがあるから試す価値アリ
「部下の管理、経費の精算、企画書のチェックにクライアントとの打ち合わせ・・・・・・。かつてはテキパキこなせていた業務が、いちいちのろい自分がイヤになります。若い頃の、あのスピード感はもうないのかと泣きそうに。ちょっと無理をするとすぐ体のあちこちが痛くなるし、疲れは取れにくいし、老い感がハンパないんです。きっと部下や後輩からは、仕事できない人と思われているだろうなと思うと、つらくて・・・・・・。」
(以下、堀田教授)
わかります、骨身に染みてわかります。私も先日、天井ライトの交換をしていてイスから飛び降りたら、それだけで肉離れを起こしてしまいました。おかげでしばらく松葉づえ生活でしたよ。
たしかに年齢や能力のせいも少しはあるかもしれませんが、やり方を変えれば、パフォーマンスを上げる余地はあるかもしれません。生産性や作業効率を上げるという側面においては、時間の使い方や環境が影響することも多々ありますから。私がオススメする方法は、以下の3つです。
複数のタスクを30分で管理する
1つめは、定期的に時間を区切って別の作業をすることで脳をリフレッシュさせるやり方です。これはコロンビア大学のルー氏らが考案した手法です。(ルー氏らの)実験では、被験者を次の3つのグループに分け、複数の作業に取り組んでもらいました。
① 前もって決められた間隔で定期的に切り替え、2つの作業を交互に進める
② 自分の好きな間隔で切り替え、2つの作業を交互に進める
③ 全体の時間のちょうど半分でもうひとつの作業に切り替える
結果は、グループ①のように、あらかじめ作業を切り替える間隔を決めておいたほうが仕事のパフォーマンスが上がり、柔軟性に富んだアイデアを生み出すことができました。つまり、時間を決めて作業を切り替えたほうが、効率がいいということ。そうすることによって、定期的に脳が凝り固まって煮詰まることがなくなり、結果としてアイデアが湧きやすくなるのです。
この話をすると、妙に納得する方がいらっしゃるんですよね。このところ、フレックスタイムとかフリーアドレスなど自由な働き方を選べる会社が増えているせいかもしれません。「ある程度、(ルールが)決められているほうが仕事に集中できると思っていた」と。
この実験を日常業務や勉強などに取り入れる場合は、前もって「30分経費精算や出退勤の管理をしたら、次は企画書を作成する」と決めておいて、30分でタイマーをセット。タイマーのアラームに合わせて、予定していた次の作業に切り替えればいいんです。
「え、30分? 短くない??」と思うかもしれませんが、ブリュッセル自由大学のパッティン氏らの研究によると、単純な作業の場合、30分後にはパフォーマンスが15%落ち込むそうです。ですから、タイマーは30分を超えないように設定し、アラームが鳴ったら必ず作業を切り替えることをおすすめします。
時計をあえて狂わせる
2つめは「時計を速める」という方法です。東京大学の伴氏らによる研究では、時計の運針速度を速めると、作業量の効率が向上するということがわかりました。実験では、3つの条件のもと、被験者に30分間の文章入力などをやってもらいました。
条件① 時計の運針速度を遅らせて2/3の速度にする
条件② 時計の運針速度を変えない
条件③ 時計の運針速度を1.5倍速にする
結果は、条件③>条件②>条件①の順で作業量が多くなったといいます。質においては、速度にかかわらず大きな差は出なかったそうです。
室温を少し下げてみる
3つめは、室温を25度に設定すること。クールビズと相反する強気な温度設定ですね(笑)。
28度設定に慣れていると、25度は冷えすぎなイメージですが、そうでもないようです。2019年に兵庫県姫路市の市役所で冷房使用時の室内温度を25度に設定したところ、残業時間を約14%減らせたという結果があります。それにより、人件費を約4,000万円削減することもできたといいます。一方で光熱費は7万円程度の増加で済んだとのことです。
3つとも、なんとなく聞いたことがあるなあと思われた方もいるかもしれません。1はコロンビア大学、2は東京大学で科学的に証明された方法ですし、3つめは実在する公の機関が実践して効果を得られたエビデンスを持つものです。裏付けがあるので、試す価値アリ、です。
これらの方法をもっと知りたい方は、私の最新著書『もう無理、と思ったらやってみて モヤモヤ・クヨクヨを手放す科学的に証明された方法』を手に取ってみてください。私が相談を受けたり、人を介して聞いたりした女性発信の「もう無理」な声を取り上げ、それらについて、
● 自信を回復する
● 生産性を上げる
● 人間関係をうまくやる
● ストレスを手放す
―の4つのアプローチで解決or解消に至るアクションを紹介しています。できるだけ相談を受けたときの切実さを再現したくて、会話形式でまとめました。
実証されているからといって、医療行為や科学的現象がそうであるように、みながみな同じ効果があるとは限りません。そしてそもそも、不安や怒りといったストレス感情を抱かないよう、本質的な問題を探り、解決に向け動くことはもちろん大事です。でもまずはその前に、私も含めてあなたたちから元気を奪っている感情を、サクッと手放してみませんか?
『もう無理、と思ったらやってみて モヤモヤ・クヨクヨを手放す科学的に証明された方法』
著/堀田秀吾、1,210円(税込)小学館
※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。