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2011.2.4

大高博幸の美的.com通信(47)実在の人物を描いた感動作×2本〜試写室便り

英国史上もっとも内気な国王ジョージ6世が、自らを克服し、国民に愛される本当の王になるまでを描いた、感動の実話。
『英国王のスピーチ』(原題=THE KING’S SPEECH)
★詳しいストーリー&キャストetc.は、kingsspeech.gaga.ne.jpへ。
<2月26日(土)より、TOHOシネマズ シャンテほか、全国ロードショー>

魂を昇華させる作品。まぎれもない傑作!! ニューズウィーク誌
作品性と万人受けを両立させた稀にみる傑作! ウォールストリート・ジャーナル誌
時代が求める、まさにオスカー大本命といえる作品! タイム誌
絶賛、93%。 ロッテントマト (世界映画評NO.1サイト)

プレスブックに記されている上記の寸評が、この作品の価値を正しく伝えていると僕は思いました。物語、主題、そして出演者の顔ぶれに強く惹かれ、一日も早く観たいと願っていた作品です。

ジョージ6世は、現英国女王エリザベス2世の父。王室では認められない愛のために兄のエドワード8世が王冠を捨てたコトから、「王にだけはなりたくなかった」次男の彼が、王位を継承せざるを得なくなる。彼は、思いやりあふれる妻と愛らしい娘たちと家庭的には幸せな生活を送っているのだが、1つだけ、非常に難しい問題、強いコンプレックスを抱えていた。それは4〜5才の時に始まった吃音(きつおん。どもるコト)で、多くの言語聴覚士に治療を委ねても、一向に改善されなかった。その彼が、型破りのスピーチ矯正の専門家ライオネルの指導の下、見事に問題を克服し、国王としての責務をまっとうするまでの物語。その間にはモチロン紆余曲折があるのだが、一世一代のスピーチを成し遂げるためには、ジョージ6世、妻エリザベス、そしてライオネルとの相互理解、強い信頼、深い愛情が絶対不可欠だったコトが示されている。

そもそも吃音の原因が、4才頃から始まったX脚の矯正(中世の拷問なみの激痛を伴う)と左利きの矯正、さらに側近によるお仕置き(その事実に両親は2年間も気づけなかった)にあったコトを、ジョージ6世の自発的な告白からライオネルが知るに至るシーンは重要で、コンプレックスの克服には何よりもまず、心を解放する・解放させるコトの大切さを私たちに教えてくれている。

そしてラスト近く、ナチスドイツとの開戦直前、不安に揺れる国民のために、ジョージ6世はラジオを通して9分間、渾身のスピーチに挑む。ライオネルはマイクの向かい側で、まるで指揮者のように、ゆったりと流れるような動きを見せ、ジョージ6世のスピーチを誘導し、励まし続ける…。教授という資格を持っているワケではないライオネルと国王ジョージ6世との間の信頼感、一体感、友情の極みがここにあり、誰ひとりとして涙なしには観られない。

ジョージ6世役のコリン・ファースは、前作『シングルマン』(通信(29)に紹介)以上に素晴らしい。今回はさらに演技の幅を広げている上、複雑な心理の中にも育ちのよさ・邪気のなさをニュアンスとして醸し出すコトに成功している。何が起きようとも徹底して夫を支えるエリザベス役のヘレナ・ボナム=カーターも適役を好演、118分の映画に明るさとたおやかさを添えてもいる。『十二夜』で姫役を演じた頃から僕は注目してきた女優だが、顔つきも表情も今までで1番美しく、これはたとえ助演とはいえ、彼女の代表作の1つになると思う。ライオネル役のジェフリー・ラッシュは円熟した真の名演。目だけで感情や意志を完璧に表現したシーンが幾つもある。

欠点とまでは言わないが、エドワード8世とウォリス・シンプソンの人格および恋愛関係の描き方に多少の疑問が残った程度で、この映画は正真正銘の傑作です。公開されたら再度観るために、僕は映画館へ出向きます。オスカーをぜひ獲得してほしいけれども、そんなコトは問題外とも考えています。
ひとりでも多くの人に観て欲しい作品。見逃すべからず!!

4世紀(ローマ帝国末期)、世界の学問の中心地(エジプトのアレクサンドリア)で伝説を残した、実在の女性天文学者の物語。
『アレクサンドリア』(原題=AGORA)
★詳しいストーリー&キャストetc.は、alexandria.gaga.ne.jpへ。
<3月5日(土)から、丸の内ピカデリーほか、全国ロードショー>

この映画、僕は“スペクタクル史劇”というよりも、主人公ヒュパティア(女性天文学者)に密かに想いを寄せる彼女のお付き奴隷ダオス青年の“純愛物語”である、という印象を受けました。127分の大作ですが、ちょうど半分が終わるあたり&ラスト間際でのダオス青年の心理と行動が非常に興味深く、ヒュパティアの気高い信念&ひとりの女性としての生き方にも増して、しみじみとした、強い余韻を残したからです。こんな愛の形もあるのだなぁと、初めて教えられた気がしました。

ヒュパティア役のレイチェル・ワイズは抑えた演技に実力を示し、ブラウンにバイオレット系のアイカラーをブレンドしたような薄いアイメークがよく似合っています。ほっそりとした体形と凛とした顔立ち&表情が、とても美しい。
残虐極まりない場面はスクリーンには表れず、幸いにも説明字幕で補われています。特にラストの字幕を見逃さず、またセリフ(特にヒュパティアとダオスの言葉)を聞き逃さないよう、集中して観てください。

では、また!!

※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。

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