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2015.9.1

大高博幸の美的.com通信(303) 『ヒロイン失格』『ベル & セバスチャン』『ぼくらの家路』 試写室便り Vol.99

© 2015 映画「ヒロイン失格」製作委員会 ©幸田もも子/集英社
© 2015 映画「ヒロイン失格」製作委員会 ©幸田もも子/集英社

世界中の王道ヒロインに、宣戦布告!?
どこまでも まっすぐで愛おしい、
体当たりヒロイン、見参!

ヒロイン失格』 (日本/112分)
9.19公開。heroine-shikkaku.jp

【STORY】 幼なじみの利太のことが大好きな女子高生、はとり。自分こそが利太と結ばれると信じて疑わなかったのに、彼は イケてない地味な 〝六角精児似〟の女の子と交際スタート。ラブストーリーのヒロインらしからぬ奪還作戦を企てながら 悶々とする はとりの前に、超絶イケメンの弘光がアプローチしてきて、まさかの三角関係に! クールな幼なじみか、学校一のモテ男か、はとりの本当のヒーローは、一体 どっち!? (プレスブックより)

別冊「マーガレット」に連載され、単行本が 全10巻の累計で140万部を突破した 幸田もも子の同名人気コミックを、同作の大ファンだと公言する桐谷美玲主演で映画化。地下鉄内の動画CM、コーセーの「美人のひみつ」シリーズに出演している彼女が、以前から練習を積み重ねてきたという 〝変顔〟から 坊主頭までを披露。それらを全てキュートに、品のよさを保ちながら大熱演しています。表情の豊かさは 顔筋を鍛えているからでしょうが、時折見せる〝恋する女子の眼のいろ〟に、大人びた女らしさも見え隠れ。また、唇の動きは 絶頂期の ブリジット・バルドーを想い出させ、ピンクベージュピンクのグロッシィなリップカラーも 最高に可愛らしく 似合っていました(彼女は 多分 B・バルドーのファンで、バルドーの昔の映画を繰り返し観ているはずと僕は確信)。

映画は 当然ながらマンガチックに展開し、はとりが大量の弓矢に見舞われるシーンなど、カメラワークと はとりのオーバーアクションがピッタリしていて、つい声を上げて大笑い(周囲の映画ジャーナリストさんたちも!)。But、ドタバタ 騒がしいだけの映画とは違い、17歳の 揺れる心 & 揺らがない心を しっかりと描写しているところが立派でした。
僕の胸にジーンと来たのは、次の3場面。
① 花火大会の夜、露店が出ている神社境内での、はとりと利太の やりとり。② 観覧車内での はとりと弘光 & 修学旅行の宿泊先(?)での利太と安達(〝六角精児似〟の女子)の それぞれの会話が、カットバック(別々の場所で 同時に起きている場面を 交互に映し出す手法)で示される部分。③ 「ハイジの村」で撮影された、キャンドルが灯る幻想的なクライマックスシーン。

利太役の山崎賢人、弘光役の坂口健太郎も 適役・好演。利太の母親役の 濱田マリは 回想シーンでの演技がとてもよく、ワンシーンのみに登場する 中尾 彬の 四角いのに丸い笑顔は、意外にも好感度100%でした。
監督は、高校生ものを得意とする 英 勉。

 

(c)2013 RADAR FILMS EPITHETE FILMS GAUMONT M6 FILMS ROHNE-ALPES CINEMA

第二次世界大戦中、
ナチス占領下のフランス。
ユダヤ人家族を救うため、
冬の〝アルプス越え〟に挑む
孤児セバスチャンと野犬ベルの絆――。

爽やかな感動と涙を呼び、世界中で大ヒットした話題作が ついに日本上陸!

ベル & セバスチャン』 (フランス/99分)
9.19 公開。www.BelleandSebastian.net

【STORY】 アルプスの麓の小さな村で暮らす孤児セバスチャンは、山で一匹の野犬と出会う。家畜や人を襲う〝野獣〟と誤解され 村人たちから命を狙われる その犬をベルと名付け、懸命に守るセバスチャン。そして 孤独なもの同士、心を通わせていく。時を同じくして 村には戦争が影を落とし始めていた。ナチスの捜索の手が伸びるなか、ユダヤ人一家を救うため、ベルとセバスチャンは 道案内人として 危険な冬の〝アルプス越え〟に 命がけで挑む――。(試写招待状より)

原作は、『名犬ジョリィ』のタイトルで TVアニメ化(NHK総合で1981~82年に放映)もされた、セシル・オーブリーの世界的ベストセラー。今回の映画化に際しては、原作にはない ナチスによるユダヤ人追跡 及び レジスタンスたちによるユダヤ人逃亡補助というプロットを加え、ドラマ性が強化されています。

断崖に取り残されたカモシカの赤ちゃんを、セバスチャンとおじいさんが救出するスリリングなシーンに始まり、セバスチャンとベルとの間に絆が生まれるプロセスへと続くのですが、観客の誰もが画面に引き込まれるコトは絶対確実。さらに スイスとの国境を目指しての〝アルプス越え〟のクライマックスに至っては、自然条件の厳しさに加えて ナチスの追跡が迫ってくる二重の過酷さとの闘いを、少なくとも僕は 涙を流しながら見守るコトとなりました。

本作の第1の長所は、セバスチャンとベルをはじめとする登場人物たち + 犬の、助け合い 信じ合う姿が 綿密に描かれている点。セザール(セバスチャンを育てた おじいさん)、若い医師のギヨーム(実はレジスタンス)、その恋人で しっかり者のアンジェリーナ、さらに ナチスの一員でありながら 必ずしもナチズムに賛同しているワケではない ピーター中尉の心理と行動が、主に子供たちを対象とする映画として 行き届いた脚色の下、デリケートに、かつ分かりやすく描写されているのです。クライマックスのシークエンスで泣けたのも、決して〝お涙頂戴式〟だからではなく、絶対的なピンチの中で知恵と勇気を振り絞り、ユダヤ人一家を国境の向こうまで送り届けようとする一行の必死さが、ヒシヒシと伝わってくるため…、二コラ・ヴァニエ監督の誠実な演出と、俳優陣の真摯な演技が胸を打つため なのでした。

セバスチャンを演ずるのは、2,400人の候補者から選ばれた 演技経験の全くない フェリックス・ボシュエ君(撮影当時 7~8歳)。子役臭ゼロの素直で自然な演技と、ベル役の グレート・ピレニーズ犬とのコンビネーションが とてもとても素晴らしい。また、セザール役の チェッキー・カリョ、ギヨーム役の ディミトリ・ストロージュ、アンジェリーナ役の マルゴ・シャトリエ、ピーター中尉役の アンドレーアス・ピーチュマンらも、揃って適役を好演しています。

ひとつ気がかりなのは、ピーター中尉が 立場上、その後 どうなったのか…。この映画の中で、そこまで描くコトは到底不可能だとは百も承知していますが、中尉の その後を心配するお子様が もしもいたなら、彼 or 彼女の感性は 並外れていると思います。

『ベル & セバスチャン』は、真の賢さ・勇気・愛情について教えてくれる良心的な作品です。小学校低学年ぐらいのお子様でも理解できる内容なので、ぜひとも一緒に 映画館へ連れて行って あげてください。モチロン、ひとりで観ても、お友だちや彼氏と観ても◎ですよ。

 

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© PORT-AU-PRINCE Film & Kultur Produktion GmbH

ドイツ、ベルリン。
突然消えた母親を捜して、10歳と6歳で旅に出た。
お金も食べ物も眠るところもないけれど――
きっと これが、人生で一番大切な 3日間。

ぼくらの家路』 (ドイツ/103分/PG12)
9.19 公開。bokuranoieji.com

【STORY】 10歳のジャックは、6歳になる弟のマヌエルの世話で毎日大忙し。優しいけれど、まだ若いシングルマザーの母は、恋人との時間や夜遊びを優先していた。ところが、ある事件からジャックは施設に預けられることになる。友達もできず、施設になじめないジャック。待ち続けた夏休みが ようやく来るが、母から 迎えが 3日後になると電話が入る。がっかりしたジャックは 施設を飛び出し、弟とともに 母を捜してベルリン中を駆け回る。小さな肩を寄せ合う二人は、再び母の腕の中に帰ることが出来るのか――? (試写招待状より)

ベルリン国際映画祭をはじめ 数々の映画祭で賞賛され、観客賞や審査員賞を受賞した作品です。監督は、本作で一躍脚光を浴びた エドワード・ベルガー。ジャックを演ずるのは、この俳優デビュー作で絶賛された イヴォ・ピッツカー君。 内容は「これ以上、もう母親には頼らない」と決心し、自分なりに最善の道へと踏み出すまでの ジャックの心の成長物語。
しかし 本作は 映倫PG12指定。物事を深く考える性格でさえあれば、小学5年生ぐらいの子供にも適す内容だと思う反面、ジャックの母が 女友だちとの間で交わす避妊に関するキワどい会話や、行きずりの男とのセックスシーンが含まれているため、少なくとも日本では15歳前後であっても、安易に推薦はできないと感じました。

とはいえ 本作は、ありふれた 感傷的 or ハートウォーミングなタイプの作品とは 質的に大きく異なっています。ひとつには、愛されて育った子供と そうではなかった子供、自尊心が培われている子供と そうではない子供との心理的な相違を、かなり具体的に示しているコト。さらに、わずか10歳で 自分と弟の置かれた立場を怜悧に見極め、敢然と行動に移すという精神的成熟度の高さが、ジャックにとって本当に幸せなコトなのかどうかという、簡単には答えの出せない問題を 観る者に突きつけてもくるのです。成り行きに従うしかない多くの子供たちや、悪の世界へ入り込んでしまう子供たちと比較すれば、ジャックは 格別に しっかりした男の子。But、子供らしい感覚を断ち切らざるを得なかった彼の未来は、果たして明るいのだろうかと考えさせられもして…。

僕個人としては、僕の父親の死後、働きに出るようになった 体が丈夫ではない母親に、「頼りすぎてはいけない」と 堅く心に決めた 7歳の冬の夜のコトを、想い出さずには いられませんでした(ひどい下痢をして、夜中に 何度もトイレへ行く破目になった時、疲れて眠っている母を 起こすワケには いかなかった…。僕は 発熱で足元がフラつき、当時の旧式のトイレに落ちそうな恐怖感も手伝って、つらくて涙を流していた…。その夜 以降、僕は自分自身のコトでは 泣かない子供になったのでした。たゞ それだけの話なのですが)。そのためもあって、感動的という以上に衝撃的なラストのジャックの姿は、僕にとって 忘れ難いものとなりました。

このコメントは、相当 分かりにくい内容だとは自覚しています。でも、実際に映画を観た方々には、気持ちの相通ずる部分が 必ずある と信じています。

P.S. そう、ジャックの母親について 触れなくては…。彼女は ジャックよりも精神的に幼い〝夢見るユメ子〟、困ったひと ではあるのです。でも、ふたりの子供を 彼女なりに 心底 愛しているし、彼らと一緒に 幸せになろうと 彼女なりに ガンバっては いるのです。そんな彼女を「可愛いひとだなぁ」と観る者に思わせもする…、そこに本作の良心が明確に表れている と僕は感じたのですが、皆さんは いかゞでしょうか?

 

次回の試写室便りは、『カプチーノは お熱いうちに』『バードピープル』等について、9月22日頃に配信の予定です。では!

 

 

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ビューティ エキスパート 大高 博幸
1948年生まれ。24歳の時、日本人として初めて、パリコレでメークを担当。
『美的』本誌では創刊以来の連載「今月のおすすめ:大高博幸さんが選ぶベストバイ」を執筆。
■大高博幸の美的.com通信 https://www.biteki.com/article_category/ohtaka/

 

※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。

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