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2019.4.20

心が弱くなっている女たちへ【齋藤 薫さん連載 vol.85】

心の強度、それは目に見えないもので、他人またときとして自分自身にもはかれない部分です。だからこそ、ここの持ちようで女性の生き方、充実度は変わっていくのかもしれません。今回は、心の育て方について薫さんに教えてもらいます。

p152-1

心が弱くなるのは1つの進化。1つの成長過程。でも心が弱いまま生きては絶対にいけない。

世の中の気配でわかる。以前よりも、女性たちの心が弱っていること、ひしひしと感じるのだ。

でも、一体なぜだろう。普通に考えると、世の中ますます便利になり、市場はますます物に溢れ、女たちの多くは欲しいものをあらかた手に入れ、ほとんどの希望を叶えているはず。諦めること自体、以前よりもだいぶ減っているはずだ。

そして何より、女性たち自身が人として、以前より明らかに進化しているはずなのに不思議。

人間は単純に時とともに進化し続ける生き物だから、少なくとも社会進出により、50年前の女性たちより社会性を身につけ、精神的にも成熟しているはずなのだ。でも現実には逆。30年前、20年前、そして10年前より、今、心が弱くなっている気がする。それは一体なぜなのか?

1つのヒントは、敏感な肌も以前よ増えていること。考えてみれば、これも不思議、肌を守るケアも、バリアを育てる肌ケアもどんどん進化をしているのに、なぜ敏感肌が減らないのか? なぜ増えているのか? 気の毒にもアレルギーを持つ子供が増えているのと同様、外敵からしっかり守られ、昔に比べるとまるで無菌状態のような環境にあるからこそ、逆に菌に弱くなるという理屈。過保護にするほど弱くなる。心身ともに弱くなる。これはすべての生き物に共通する法則なのだ。

つまり現代女性の心も、同じ。恵まれているから弱くなる。逆境に置かれることが少ないから弱くなる。そして、恵まれているからこそ、さらに自分を守ろうとする防衛本能が過剰に働いて、余計に心が脆弱になっていくのではないか。恋愛する人が減ったのも、自分が傷つかないようにという守りの一環。つまり、なんでも未然に防いでしまう時代なのだ。

しかも人間としても進化したからこそ、逆に弱くなったとも言える。“かつての自称敏感肌”は、自分を「弱いもの」と言い張ることで、どこかで自分を主張していた。また、“かつての潔癖症”は、人の触ったものは触らないと言う傲慢さを持っていた。でも今、弱さを孕んだ女性たちはそうした小さな顕示欲も傲慢さも持たない。以前より控えめに、小さな声で、敏感であることをただ穏やかに話す。それは精神性における1つの進化。もっと言うならば、人としてのバランス感覚を養い、人の心が読めるようになり、世の中の有り様も良く見えるようになると、逆に人は自己顕示欲も傲慢さも持たなくなり、気に病んだり、心を痛めたり、身を引くことすら多くなる。心は正されていくほど、むしろ弱くなったりもするのだ。

もちろん、ただひたすら弱くなるだけではない。正された心で経験を積んでいけば、心はどんどん整い、どんどん柔軟にもなっていく。やがて人を包み込むほどに、心は大きく育ち、そして大らかにもなっていくだろう。でも、そこまでに行く成長過程で世の中を正しく見渡せるようになった時、心はやっぱり一度弱くなるのだ。外気に触れた粘膜がヒリヒリと痛むように。だから、心が弱くなることは、1つの成長でもあるのだろう。逆から言えば、むしろ様々なことを繊細に感じ取れるのは、人として大切なこと。

とは言え心が弱いまま年齢を重ねては絶対にいけない。弱い心をさらに傷つけないよう守りに徹してしまうと、逆に奇妙な強さが生まれてしまい、よけいに人を遠ざける。単純に幸せがつかめなくなる。だからひたすら経験を積むこと。どんな経験も積めば積むほど心のトレーニングになる。心の筋力を強く鍛えられる。だから心が弱い人ほど、表に出て行こう。どんどん人に会おう。まずはそれだけでいい。人に会うことが、心を鍛えること。心を鍛えないと、人生が充実しない。そして幸せも実感できない。それだけは避けなければ。

“あの人の結婚”に学ぶ、心の再生。自らも気づいていない心の弱さ、その組み立て直し方

ベッキーが結婚した。ある意味ひっそり静かに、結婚した。復帰してからのベッキーはちょっと弱々しく見えたから、拠り所を見つけ、支えてくれる人を見つけて本当に良かったと、世間は思ったはずだ。“事が起きる前”の方がずっと元気ハツラツ、心も強く見えたから。でも本当にそうなのだろうか。

もちろん世間から批判され、失恋もし、予想以上に長い謹慎生活を強いられこと自体にも、心はズタズタだったはず。でもひょっとしたら、もうその前に心が壊れる寸前だったのではないか。本人もそのことに気づいていなかったから、あんな事態に自分を追い込んだのかもしれないのだ。結果として壊れた心の欠片を寄せ集めては組み立てるように、時間をかけてゆっくり癒したことで、1つ上の次元の穏やかな強さを得たのではないだろうか。むしろ快活で力強く見えた以前の方が、本当は壊れやすく危うい存在だったのではないかと思うのだ。

若いうちは、自分の心が強いのか弱いのか、あまり解っていない。解っていないから、思い切ったことをしてしまう。思い切ったことをして、激しく傷つき、初めて自分の心の弱さに気づいて、急に臆病になるケースが少なくないのだ。

しかしベッキーは、持ち前のクレバーでバランスのとれた精神性で、弱った心を自ら癒し整えて、鍛えたのではなかったか。正直あんな風に世間にバッシングされる経験など、誰もできないはずで、普通なら壊れたままにどこか途方もない方向に行ってしまったりしがちなところ、この人は丁寧に心を組み立てなおしていった。そして復帰の時は、以前より強い心になっていたはず。だからこそ、まっとうな恋愛ができたし静かに結婚できた。そうしたリハビリの成果として、世間は祝福してあげるべきなのだろう。

ジャスティン・ビーバーが、“うつの治療”をしていることが報道されているが、彼の場合はまさにそれ。10代で巨大な成功をおさめすぎて、心がついていかなかった典型的な例だろう。実は傷つきやすい心の持ち主なのに、悪童と呼ばれるような言動に走り、自らの心を壊してしまった。しかし良いパートナーと出会い、結婚とともに今まさに心を組み立てなおしている時なのだ。うつを認めて真面目に治療を行っているのもその自覚があるから。おそらくそれが終わった時、彼は強靭かつバランスのとれた整った心備えることになるのだろう。

ハリウッドではアイドルとして人気を得た人の中に、心を壊して治療を受け、その後再生した人もいれば、しなかった人もいる。ブリトニー・スピアーズやドリュー・バリモアは衝撃的なプロセスを経て、復活。もともと賢いバリモアは、自らが映画を制作するほどまでに、クオリティーの高い再生を遂げている。心が出来上がっていないうちに、過激な人生を凝縮させたが如く強烈な経験を強いると、間違いなく心が壊れてしまう、その証明のような人たちだ。

そういう風に人の心は、崩壊と再生を経て、形成されていくもの。もちろんジャスティン・ビーバーの例は極端だが、ごくごく普通の生き方をしている人も、程度は違えど同じようなプロセスを経るものなのだと自覚しておきたい。

まずは、自分の心が今どんな状態にあるのか、知っておくこと。何事か大きなことが起きないと、自分の心の状態はなかなか見えないが、それを踏まえて自分の心の強度を冷静に見つめたい。でも繊細な心の持ち主は、心に負担をかけない生き方をするより、何があろうと乗り越えられる心を鍛えるために、無理をせず、冷静に様々な経験に自ら挑んでいくほうが建設的かもしれない。心が傷んでも、それが心を鍛えることにもなると常に唱えながら。筋肉痛がないと筋肉は強くならない。心も痛まないと強くならないのである。

 

美容ジャーナリスト/エッセイスト
齋藤薫
美容ジャーナリスト/エッセイスト。女性誌編集者を経て独立。女性誌において多数の連載エッセイを持つ他、美容記事の企画、化粧品の開発・アドバイザー、NPO法人日本ホリスティックビューティ総会理事など幅広く活躍。「Yahoo!ニュース『個人』」でコラムを執筆中。『“一生美人”力人生の質が高まる108の気づき』(朝日新聞出版)他、『されど“服”で人生は変わる』(講談社)、『The コンプレックス 幸せもキレイも欲しい21人の女』(中公文庫)など多数。

『美的』5月号掲載
文/齋藤 薫 イラスト/緒方 環

※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。

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