大高博幸さんの 肌・心 塾
2019.12.10

『 ロング・ショット 』『 再会の夏 』『 冬時間のパリ 』『 私の知らない わたしの素顔 』 試写室便り・最終回 【 大高博幸さんの肌・心塾 Vol.532 】

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© 2019 Flarsky Productions, LLC. All Rights Reserved.

高嶺の花に恋した冴えないジャーナリスト。
シャーリーズ・セロン × セス・ローゲンで贈る、
男女逆転 シンデレラ ストーリー!

ロング・ショット
僕と彼女の ありえない恋
2020.1.3 公開/アメリカ/ 125 分/ PG 12
longshot-movie.jp

アメリカの国務長官として活躍するシャーロット ( C・セロン ) は、大統領選への出馬を目前としていた。そんな ある日、シャーロットが出会ったのは ジャーナリストのフレッド ( S・ローゲン ) 。才能はあるものの 頑固な性格が あだとなり、職を失ってしまう。一見、接点もなく 正反対な 2 人だが、シャーロットは フレッドにとって、初恋の人だった。その後、シャーロットは 若き日の自分をよく知るフレッドに、大統領選のスピーチ原稿作りを依頼。原稿を書き進めるうちに、いつしか 惹かれ合っていく 2 人。しかし、越えなければならないハードルが いくつも待ち受けることに …… 。( チラシより。一部省略 )

大統領候補のスーパーウーマン × 失職中のダメ男という、誰の眼にも ありえないカップルの シニカルなラブコメディ。エキサイティングな大事件が 起きたりするワケではないのに ( 僕が 想像したほどには、ですけれど ) 、主役ふたりの顔合わせが 面白く、大いに楽しめる 125 分。
特に良かったのは C・セロン。程よくコメディエンヌ振りを発揮し、『 タリーと私の秘密の時間 』( Vol.460 ) に続いて、人間味のある演技を観せてくれます。才色兼備で 全てが 順風満帆のように見えるものの、大切な何かを 我慢したり、諦めたり、軌道修正したりしてきたはずの道のりを、それとなく感じさせるところが 巧みでした ( たとえば、彼女の少女時代を知るフレッドの「 君は あの時、こう言っていたよ 」と語る言葉に、今も変わらない信念を 再認識するシーン等々 ) 。

脇役では、フレッドの親友役の オシェア・ジャクソン・Jr を筆頭に、シャーロットを支える補佐官役の男女ふたりが 印象的でした。
監督は、『 50 / 50 フィフティ・フィフティ 』( 通信 78 ) 、『 ウォーム ボディーズ 』( 通信 175 ) の ジョナサン・レヴィン。

ところで、C・セロンのメイクは全体的にミニマムですが、素顔風の清潔感の中に、知的で凛とした意志の強さが感じられます。しかも、スティルで観るよりも スクリーン上で動いている彼女のほうが 数段 魅力的で、特に 話し終えた直後などの 唇と眼の デリケートでフェミニンな表情は、読者の皆さんに 見習って頂きたいところです。
以下、彼女風のメイクをするために必要なコスメを、8 点ほど紹介しておきます。

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アディクション ザ リップスティック シアー 001 ¥3,200
透明度の高い、ヌーディなクールベージュの口紅。みずみずしい艶感も上品。
ローラ メルシエ ロングウェア リップ ライナー 03 ¥2,700
細く緻密なラインを描くための、程よい硬さと滑らかさを備えた、ヌーディなリップペンシル。
カバーマーク ブライトアップ ルージュ 11、13 ¥3,800
潤い・発色・艶感のバランスに優れた口紅。前出のクールベージュの口紅に、ほんの少量をリップブラシで重ねると、C・セロンの唇に近づきます。2 色のうち、13 のアンバーカラーをプラスしている感じのシーンが 多かったと記憶 … 。

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シスレー フィト オンブル エクラ N 24、42、20、31 ¥5,000
上質なテクスチャー × 発色の モノアイシャドウ。オフィシャルな場では グレイ + シルバーホワイトのグラデーション、くつろいだ場では チェスナットベージュ + ジェントルピンクのグラデーションというニュアンス。塗り過ぎを避けたメイクが スマートだと、僕は 感心しました ( マスカラも、ほとんど塗っていないシーンが 多かった印象です ) 。

 

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© ICE3 – KJB PRODUCTION – APOLLO FILMS – FRANCE 3 CINEMA – UMEDIA

一匹の犬の忠誠心が 真実を解き明かし、
傷ついた心を溶かす きっかけとなるのか?

終戦後のフランス版〝 忠犬 〟の物語 ―― 。

再会の夏
12.13 公開/フランス、ベルギー/ 83 分
saikai-natsu.com

1919 年、夏の盛り ―― 。終戦後のフランスの片田舎で、勲章を受けた 元兵士のモルラック ( ニコラ・デュヴォシェル ) が 兵舎に収監され、頑なに黙秘を続けている。この男を 軍法会議に かけるか否かを決めるため、パリからやって来たランティエ軍判事 ( フランソワ・クリュゼ ) は、兵舎から決して離れず、吠え続ける一匹の犬に 関心を寄せる。そして モルラックを調べるうちに、農婦にしては あまりにも学識豊かな恋人 ヴァランティーヌ ( ソフィー・ヴェルベーク ) の存在が 浮かびあがり … 。( 試写招待状より。一部省略 )

原作は、ゴンクール賞 ( フランスで最も権威ある文学賞 ) の受賞者で〝 国境なき医師団 〟の創設者としても高名な、ジャン = クリストフ・リュファンによる 史実に基づく歴史小説。監督は、ほろ苦い人生の物語を 美しい情景と共に描写するコトで知られる ジャン・ベッケル。

名手 イヴ・アンジェロ ( セザール賞の撮影賞を 三度 受賞 ) の 露出オーバー気味の 美しい撮影により、ファーストシーンから観る者を惹き込む一篇で、第一次世界大戦を背景としているものの、これは人間的な愛のドラマ。
些細な報告の手落ちと、思い込み or 勘違いに起因する感情が、大変な悲劇を招くところだったという物語で、最終的に、犬の忠誠心と 職務に忠実かつ心優しい性格のランティエ軍判事が、恋人たちを救うという展開。ラストは 明るく前向きな場面で終るので、誰もが 気持ちよく観賞できます。

こゝで 読者の皆さんに 気づいてほしいのは、単純な 思い込み or 勘違いから 簡単に壊れてしまう人間関係が、この世には ザラにあるというコト。その裏に 客観的な想像力の乏しさと ちっぽけな自尊心とが 潜んでいて、それが 幸福を 遠ざけてしまうという事実。これについて、少しも意識していない方や、ぼんやりとだけ気づいているタイプの方々は、この映画に 素直に 学ぶべし、です。

主要三俳優の好演と共に、名犬 イェーガー ( ドーベルマンの原種犬 ) が 驚くほどの演技を観せてくれます。

P.S. 物語の背景となる 1919 年は、映画が〝 第八芸術 〟として認められた記念すべき年。そして また、ゲランの真のクラシック香水『 ミツコ 』が 発表された年でもあります。本作の舞台であるフランスの片田舎 ( シャラント県 ) に『 ミツコ 』の芳香が 届いているとは想えませんが、生誕 100 周年となる香水を、画像だけでも お楽しみください。

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ゲラン ミツコ 香水 30ml ¥40,000
C・ファレールの有名な小説「 ラ・バタイユ 」のヒロイン、ヨリサカ候爵夫人である ミツコ ( 日本女性 ) の名を冠した永遠の名作。慎ましやかでミステリアスな雰囲気の中に、意志の強さを感じさせるフレグランス。ゲラン三代目調香師 ジャック・ゲランが、ピーチの香料を初めて用いて処方した〝 フルーティ シプレ ノート 〟の傑作です。

 

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©2018 DIAPHANA FILMS-FRANCE 3 CINÉMA-SCOPE PICTURES

女は 理性が 知らない動機を もっている。

誰にも止められない、熱くて冷たい、
危険なバーチャル恋愛の行く末は?

私の知らないわたしの素顔
2020.1.17 公開/フランス/ 101 分/ R 15 +
watashinosugao.com

パリの高層マンションに暮らす 50 代の美しき大学教授 クレール ( ジュリエット・ビノシュ ) 。ある日 彼女は、年下の恋人 ( ギヨーム・グイ ) に ポイ捨てされたことを きっかけに、S N S の世界に足を踏み入れる。Face book で 24 歳のクララに成りすまし、新しい恋を手に入れたクレールだったが、それは 二転三転する ジェットコースターの 助走だった。( 試写招待状より )

是枝裕和監督の『 真実 』、次項の『 冬時間のパリ 』と、矢継ぎ早に 主演作の日本公開が 続く J・ビノシュが、自分の感情をコントロールできなくなる大学教授に扮した、一種のサイコロジカルサスペンス。
惹句から、意識の奥に存在する 無意識の行動の危うさを描いていると 勝手に想像していたのですが、主人公は大学の教授だけあって、その辺りは 客観的かつ冷静に自分を理解している感じ … 。それよりも、本作の脚本と監督は、自尊心との戦いや、そこから生まれる 願望に基づく クレールの行動に寄り添い、同行しようとしているかのように感じられました ( 分かりにくいと思いますが、お許しください ) 。
この主人公の心理と行動は 普遍的とも言えるもので、50 代になった時の自分の気持ちなど 想像も出来ないはずの若いうちに、間接的体験として観ておくと、後々 プラスに なるでしょう。また、大人の女性観客は、二転三転する主人公の立場と心情に、ハラハラしたり、ドキドキしたり、ホッとしたりするはずです。

J・ビノシュは、知的でクールな美女に見えるシーンと、残酷なほど やつれて見えるシーンとがあって、それ自体が ドラマティック。彼女が 新しく手に入れた 若い恋人 アレックス役を演じているのは、『 おかえり、ブルゴーニュへ 』( Vol.474 ) で 主役を好演した フランソワ・シビルです。

 

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©CG CINEMA / ARTE FRANCE CINEMA / VORTEX SUTRA / PLAYTIME

パリの出版業界を舞台に、
< 本、人生、愛 >をテーマに描く、
迷える大人たちのラブストーリー。

冬時間のパリ
12.20 公開/フランス/ 107 分
transformer.co.jp/m/Fuyujikan_Paris/

敏腕編集者のアラン ( ギョーム・カネ ) は 電子書籍ブームが 押し寄せる中、なんとか 時代に順応しようと 努力していた。そんな中、作家で友人のレオナール ( ヴァンサン・マケーニュ ) から、不倫をテーマにした新作の相談を受ける。内心、彼の作風を古臭いと感じているアランだが、女優の妻・セレナ ( ジュリエット・ビノシュ ) の意見は 正反対だった。そもそも最近、二人の仲は 上手くいっていない。アランは 年下のアシスタント ( クリスタ・テレ ) と不倫中で、セレナの方も レオナールと秘密の関係を結んでいる。時の流れと共に、変わりゆくもの、変わらないもの ―― それは何? 縺れて こんがらがった二組の夫婦は、それぞれの幸せを模索していく。( 試写招待状より )

全篇の ほとんどが 会話で成り立っていて、ふたりから 5 ~ 6 人が おしゃべりを続けるという構成の、大人向きのヒューマンコメディ。原題は『 DOUBLES VIES 』、英題は『 NON-FICTION 』。
日本公開題名から、しっとりとした情感漂うパリの冬のムードを期待して観ると、面くらってしまうコトになるかも … 。
僕は本作を観ながら、パリの化粧品会社に在籍していた頃の ランチタイムを想い出していました。フランス人って 本当に会話好き ( or 討論 or 議論好き ) で、ランチの テーブルで 毎日 2 時間以上、おしゃべりが 止まらない。その日のうちに決定すべき事項の会議は 時間切れ、「 オララー 」で 持ち越しになるという調子だったんです。

本作は、紙からデジタルへ、テクノロジーの進化と共に 改革を強いられるパリの出版業界を舞台に、編集者と女優、作家と政治家の秘書という、二組の夫婦の愛の行方を 軽妙なタッチで描いています。ネタバレになりますが、物語は 破滅への道を進む? と想わせながら、互いの関係に新たな意義を見出し、受け入れ合う 夫婦二組の姿を映し出すという 大団円に たどり着きます。不倫が 扱われている割には ドロドロや深刻さのないところが 気持ちよく、特に ラストで、政治家の秘書として 夫のレオナールを支えてきたヴァレリー ( ノラ・ハムザウィ ) が、ある〝 秘密 〟を打ち明ける マジョルカ島の 浜辺のシーンが 最高でした。

また、非常に興味深かったのは、レオナールが 書店での トークイベントで、読者数人から 冷静に非難されるシークエンス。彼ら ( つるんでいるワケではありません ) は 道徳的な見地から、ほとんど 検閲者的な眼で レオナールを追い詰めます。この部分は、ジャーナリズムの世界に身を置く人々を戒めるに充分で、僕も 彼らの眼を 忘れないようにしなくてはと、改めて考えさせられました。

監督は、『 夏時間の庭 』『 パーソナル・ショッパー 』 ( Vol.393 ) 等の オリヴィエ・アサイヤスで、コメディに新境地を開いた感じです。

P.S. 本作の登場人物中、僕が 最大級の好感を抱いたのは、N・ハムザウィ演ずるヴァレリー ( メガネをかけている女性 ) でした。非常にクールで 理論的な性格でいて、溢れるばかりの愛情の持ち主。僕は 彼女の〝 秘密 〟に、永遠の愛の香りをプレゼントしたいです。

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ゲラン シャマリー 香水 30ml ¥40,000、7.5ml ¥16,600
約 400 年昔のインドの皇帝 シャー・ジャハーンと、その最愛の王妃 マハルの 高貴なラブストーリーにインスピレーションを得て誕生した「 愛の神殿 」という名の真のクラシック。1925 年、ジャック・ゲランによって創作された、甘美 この上ない 世界初の〝 オリエンタル ノート 〟です。

当連載の中の「 試写室便り 」は、編集部の都合により、今回をもって 終了となります。このページを楽しみにしてくださっていた 読者の皆さん、そして 多大な御協力を賜った 映画宣伝関係者の皆様に、心より御礼を申し上げます。ありがとう ございました!!

最後に、近日公開予定の数作品を、簡単に御紹介させて頂きます ( 僕も これから 観るところです ) 。

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『 家族を想うとき 』 カムバックを果たした 名匠 ケン・ローチ監督が 本気で描く、美しく 力強い 家族の絆の物語。12.13 公開。longride.jp/kazoku/

 

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©2019 STX Financing, LLC. All Rights Reserved.

『 THE UPSIDE 最強のふたり 』 全米 初登場 第 1 位。感動 実話作の ハリウッド・リメイク版。12.20 公開。upside-movie.jp

 

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『 この世界の さらにいくつもの 片隅に 』 250 カット以上もの 新場面・新エピソードを加えた〝 新作 〟。12.20 公開。ikutsumono-katasumini.jp

 

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『 男はつらいよ 50 お帰り 寅さん 』 新たに撮影された〝 今 〟を描く映像と、デジタル修復されたシリーズ映像とで紡ぐ〝 最新 第 50 作 〟。12.27 公開。tora-san.jp/movie50/

 

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© 2019 Focus Features LLC and Perfect Universe Investment Inc.

『 ダウントン・アビー 』 全米 初登場 第 1 位。情熱、ロマンス、傷心、スキャンダルが渦巻く、英国傑作ドラマの映画化。2020.1.10 公開。downtonabbey-movie.jp

 

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©2017-JERICO-PATHE PRODUCTION-TF1 FILMS PRODUCTION-NEXUS FACTORY-UMEDIA

『 母との約束、250 通の手紙 』 文豪 ロマン・ガリの自伝小説の映画化。互いの存在だけを頼りに生き抜いた、母と息子の 愛の物語。2020.1.31 公開。https://250letters.jp

 

 

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biteki-m@shogakukan.co.jp
( 個別回答はできかねますのでご了承ください。)

ビューティ エキスパート
大高 博幸
1948年生まれ。24歳の時、日本人として初めて、パリコレでメークを担当。『美的』本誌では創刊以来の連載「今月のおすすめ:大高博幸さんが選ぶベストバイ」を執筆。
■大高博幸さんの 肌・心塾
http://biteki.com/beauty-column/ootakahiroyuki

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