大高博幸さんの 肌・心 塾
2013.9.13

大高博幸の美的.com通信(175) 『ウォーム ボディーズ』『私が愛した大統領』『世界一美しい本を作る男』 試写室便り Vol.49

ウォームボディーズ
© 2013 Summit Entertainment, LLC. All Rights Reserved.

全米興収NO.1! キュートなゾンビ男子の恋に世界中が感染!
ウォーム ボディーズ』  (アメリカ映画、98分)
9.21ロードショー。
詳しくは 、dead-but-cute.asmik-ace.co.jpへ。

【STORY】 ゾンビとニンゲンが敵対する近未来――。襲撃するはずが、ニンゲン女子ジュリーに一目ぼれをし、助けてしまったゾンビ男子R。最初は恐れをなし、徹底的に拒絶しながらも、Rの不器用全開ながらの優しさや純粋さに 次第に心を開き始めるジュリー。ゾンビにとっては おいしい「食物」である人間、人間にとっては命を脅かす「絶対的な敵」であるゾンビ…。出会ってはいけなかった、けれど、うっかり出会ってしまった二人の恋。それは、最終型ゾンビのガイコツ軍団、そしてニンゲンたちのリーダーでもあるジュリーの父親にとっても許されるものではなかった。二人の恋は、ゾンビの死に絶えた“冷たい”ハートを打ち鳴らすことができるのか!? そして終わりかけている世界に、もう一度“温かな”希望を よみがえらせることができるのか!? (プレスブックより)

もしかしたら安っぽいゾンビ・ラブ・コメかも…と覚悟しながら観に行ったのですが、コレは面白くて可愛らしくて、ハグしたくなるような作品でした。全米初登場第1位と聞いて、アメリカの映画ファンに親しみを感じてしまった程です。自分でも驚いたのですが、僕は3回、心臓ドッキリ、4~5回笑って、なんと6~7回泣きました。
開巻、うつろな目でヨロヨロと歩くRの姿に、R自身のナレーションがカブるのですが、その演出が非常にうまく、観る者をストーリーに引き込んでしまいます。多少おとぎ話風に描かれているせいか、ストーリーの展開に異和感を覚えさせないところも立派です。誰が作ったのかと思ったら、『50/50 フィフティ・フィフティ』の大ヒットで認められたジョナサン・レヴィン監督。彼は『ロミオとジュリエット』や、ジャン・コクトーの『美女と野獣』、マルセル・カルネの『悪魔が夜来る』といったクラシックな作品を愛している人なのかも…。そう想わせる奥行きを、本作は備えています。低予算モノのはずですが、相当丁寧に仕上げられている点にも好感を抱きました。
R役のニコラス・ホルト(ゾンビ・メークがよく似合う。『シングルマン』でコリン・ファースと関係を持とうと試みた学生役よりも、何倍もいい)、ジュリー役のテリーサ・パーマー、そしてRの親友:M役のロブ・コードリー、ジュリーの親友:ノラ役のアナリー・ティプトンが とても良かったです。
「ゾンビ映画なんて…」と言う人にこそ、ぜひオススメしたい一篇です。

 

© 2012 Focus Features LLC. All Rights Reserved.
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アメリカ史上最も長く支持されたカリスマ大統領の、知られざる素顔と“秘められた恋”――。
私が愛した大統領』  (イギリス映画、94分)
9.13(本日)からロードショー中。
詳しくは、daitoryo-movie.comへ。

【STORY】 1930年代、アメリカ。ルーズベルト大統領は、忙しい執務の合間に“恋人”デイジーとドライブに出かけることで安らぎを覚えていた。そんなある日、英国王ジョージ6世夫妻がニューヨーク州ハイドパークにあるルーズベルト邸にやってくる。迫り来るドイツとの開戦危機に備え、大統領の執務室で“トップ会談”を行う2人。その日の深夜、衝撃的な事実が明らかになる。デイジーも知らなかった大統領の秘密――。それが明らかになったとき、彼女がとった行動とは…? (プレスブックより)

大衆が抱くイメージを損なわないために、尊敬or憧れの的の有名人のダークサイドは隠し通されていた時代の物語。緩やかなテンポで展開する小品の部類に属する作品ですが、「知られざる素顔」というフレーズにハートウォーミングな要素を期待して観に行くと、ガッカリってコトになるかも…。
遠慮なく言ってしまうと、この映画は関連性のない ふたつの話が つながっている感じで、間に挟み込まれた形の英国王夫妻来米の部分(いわば脇筋)のほうに僕は惹かれました。不安を抱えながらN.Y.まで やって来たジョージ6世(サミュエル・ウェスト)と妻:エリザベス(オリヴィア・コールマン)のやり取り、ホットドッグパーティ、晩さん会の場面に気取りのない上品なユーモアがあり、それが とても良かったのです。最初のうちは、「『英国王のスピーチ』のコリン・ファースとヘレナ・ボナム=カーターが出演していたら、もっといいのに」なんて思いながら観ていたのですが、本作のふたりには、それとは またベツの魅力と演技力があって、感動させられてしまいました。
ほんの端役ながら、デイジーの老叔母を演じた女優(2~3場面に登場)が、1929年の大恐慌によって没落した“元大金持ちの夫人”の存在感を見事に表現していたところも、強く印象に残りました。

 

世界一美しい本を作る男

完璧を追求する男、世界を旅する男、本に魅せられた男――ゲルハルト・シュタイデル
世界一美しい本を作る男――シュタイデルとの旅』  (ドイツ映画、88分)
9.21 ロードショー。
詳しくは、steidl-movie.comへ。

「世界一美しい本を作る」と称されるドイツの小さな出版社:シュタイデル。量より質、工業製品とは異なる独得の趣を追求する経営者、ゲルハルト・シュタイデル氏に密着取材したドキュメンタリー映画です。
情熱を注ぎ、完璧を求めながらも、切りをつけるタイミングを心得ていて、あいまいでいながら納期を急がせたがるような新規の申し出はソツなく かわす…。その毅然とした態度こそが“一流中の一流の証し”だと僕は感じました。
予想外のロングランを記録した『エル・ブリの秘密 世界一予約のとれないレストラン』のゲレオン・ヴェツェル監督の作品で、割合コンパクトに まとめられています。特にクリエイティブな仕事に携わる方々は、ぜひ観てください。

 

 

ビューティ エキスパート
大高 博幸1948年生まれ、美容業界歴46年。24歳の時、日本人として初めて、パリコレでメークを担当。『美的』本誌では創刊以来の連載「今月のおすすめ:大高博幸さんが選ぶベストバイ」を執筆。
■大高博幸の美的.com通信 https://www.biteki.com/article_category/ohtaka/

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