大高博幸さんの 肌・心 塾
2018.7.10

『 子どもが教えてくれたこと 』『 エヴァ 』『 最後のランナー 』 試写室便り 【 大高博幸さんの肌・心塾 Vol.455 】

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(C) Incognita Films – TF1 Droits Audiovisuels

聡明な子どもたちにフランス中が魅了された。勇気とは なにかを教えてくれる。
―― Femme Actuelle
偉大な子どもたちの無垢さを描いた命への賛歌。
―― Le Journal du dimanche
溢れんばかりの笑い声、ちょっとした喜びと輝き。つまりは〝 人生 〟が詰まっている。
―― Télérama

フランスで 23 万人が観た感動作!

子どもが教えてくれたこと
フランス/ 80 分
7.14 公開/配給:ドマ
kodomo-oshiete.com

【 INTRODUCTION 】 主人公は アンブル ( 9 歳、金髪の女の子 ) 、カミーユ ( 5 歳、坊主頭の男の子 ) 、イマド ( 7 歳、アルジェリア生まれの めがねをかけている男の子 ) 、シャルル ( 8 歳、絆創膏と手袋を着けている男の子 ) 、デュデュアル ( 8 歳、カーリーヘアの男の子 ) の 5 人の子どもたち。彼らに共通するのは、みな 病気を患っているということ。治療を続けながらも、彼らは 毎日を 精一杯 生きている。家族との かけがえのない時間、学校で 仲間たちと過ごす ひと時。辛くて 痛くて、泣きたくなることもある。けれど、彼らは 次の瞬間、また新たな関心事や楽しみを見つけ出す。そんな子どもたちを、カメラは 優しく、静かに見つめ続ける。
監督は フランスの女性ジャーナリスト、アンヌ = ドフィーヌ・ジュリアン。自身の娘を病気で亡くした過去を持つ。自らの経験をもとに、子どもたちの持つ力を見事に映し出した本作は、フランスで 23 万人を動員する大ヒットを記録し、多くの人々の心を掴んだ。観客からは「 子どもが病気であっても、親も子どもも幸せそうな姿に驚いた 」「 子どもたちは ずっと笑っていて、とてもポジティブ。元気づけられた 」と絶賛のコメントが相次いだ。
本作は、伝統ある世界最大規模の子ども映画祭「 ジッフォーニ映画祭 」の GEx 部門で作品賞を受賞。子どもから大人まで、世代を超えて愛される一作となった。子どもたちの発する言葉、そして生き方は、観る者を勇気づけ、パワーを与えてくれるに違いない。( プレス資料より。カッコ内は、大高の加筆 )

5 人の子どもたちが 主治医、看護師、パパやママと一緒にいる場面のスティル写真を見れば、それだけで分かると思いますが、このドキュメンタリーは 難病の子どもたちを主人公としているのに、暗くも重苦しくもありません。というよりは、むしろ明るく前向きで、観ている側が 逆に勇気づけられ、教えられるコトの多い内容でした。二度ほど涙をコボしましたが、お涙頂戴的だったからでは 決してなく、5 人の子どもたちの けなげさ、自分の病気 = 弱点を受け入れて、精一杯ガンバっている姿に心を打たれたからでした。

主治医は まず、病気の本人である子ども自身に 病名を明確に伝え、その対処法・治療法を分かりやすく説明します ( 病状を隠したりは、いっさいしません ) 。そして ひとりの小さな患者として、愛情を込めて接するのです。その方針を 子どものパパやママが 十分に理解・納得しているコトは、彼らの表情と態度を観れば一目瞭然…。子ども自身も 病気の体であるコトを、無闇に怖がったりは していないのです。深刻な病状であるにも拘らず、誰もが明るく楽しそうに生活している…。その背景には、そうした環境、健全な循環があるのだというコトを、僕は 本作を観て 気づくコトが出来ました。

フランス版「 一休さん 」のように愛くるしいカミーユ君は、「 病気 ( 神経芽腫、小児ガンのひとつ ) のコトは、僕が赤ちゃんだった時に、ママが全部、説明してくれたよ 」と、アッケラカンと言ってのけます。
薬を定期的に静注するために、ポンプ入りのリュックを手放せない 動脈性肺高血圧症のアンブルちゃんは、「 悩み事は 脇に置いておくか、付き合っていくしかないの 」と、ケロリと つぶやきました。
腎臓に大きな問題を抱えているイマド君は、哲学的かつユーモラスな話し方をする面白い男の子ですが、今日は 透析を受けるという朝、突然 ママの胸にしがみついて、肩を震わせて泣き出します。しかし ママから「 でも、学校に行きたいんでしょ? だったら、透析しなくちゃ いけないんじゃないの? 」と優しく言われ、すぐに うなづいて 涙を拭うのです。そして また、自分の病気が良くなれば、パパとママを通院等で疲れさせなくて済むと 考えたりもしていて…。

子どもらしい無邪気さに加えて、大人顔負けと言っていゝほどの分別を持つ 5 人の主人公たち。「 全員揃って、病気に負けずにいて! 」と、心から願わずには いられません。そして そして、大事なコトに気づかせてくれて、教えてくれて ありがとう♥♥♥♥♥

 

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(C)2017 MACASSAR PRODUCTIONS – EUROPACORP – ARTE France CINEMA – NJJ ENTERTAINMENT – SCOPE PICTURES

官能と誘惑。

ハドリー・チェイス原作の傑作サスペンス、
「 悪女イヴ 」の映画化!

エヴァ
フランス/ 102 分
7.7 より公開中/配給:ファインフィルムズ
www.finefilms.co.jp/eva

【 STORY 】 他人の戯曲を盗んで 自作として発表し、一躍 成功をつかんだベルトラン。2 作目を期待されるが ペンは進まず、出資者からは 矢の催促が。弱音をはくベルトランに、婚約者 カロリーヌは 両親の別荘を執筆の場として提供する。別荘に着くと、吹雪で立ち往生した男女が 避難という名目で くつろいでいた。ベルトランは バスタブにつかっていた女性 エヴァに文句を言おうと近寄るが、彼女の魅力に一瞬で心を奪われる。一緒にいた男を追い出し、エヴァに迫ろうとするベルトランだが 頭を殴られ、気を失う。その後、カジノで ベルトランはエヴァを見かけ、エヴァの指定する場所で会うことに。そこは 郊外の大きな邸宅。エヴァには夫がおり、美術商だという。一方、彼を支えていたカロリーヌは 女の影を感じ、二人の仲は 気まずくなっていく。それと反するように、ベルトランは エヴァに冷たく あしらわれるにも関わらず、破滅の道を 突き進んでいく…。( プレス資料より。一部省略 )

原作は ’45 年に発表された ジェイムズ・ハドリー・チェイスの「 悪女イヴ 」( 創元推理文庫刊 ) 。’62 年に『 エヴァの匂い 』( 監督 ジョセフ・ロージー、主演 ジャンヌ・モロー ) という題名で 一度映画化されたコトのある小説ですが、本作の監督 ブノワ・ジャコー ( 『 マリー・アントワネットに別れをつげて 』( 通信 127 ) など ) は、「 これはリメイクではない 」と公言しているとか ( 僕は『 エヴァの匂い 』の日本公開時、小田原の封切館の前で ポスターやスティル写真を眺めはしたものの 未見のため、二作の比較は不可能 ) 。
本作の主演は、エヴァ ( 人妻でいて高級娼婦 ) に イザベル・ユペール、ベルトランに ギャスパー・ウリエルという、特にフランスでは 観客動員力抜群の顔合わせ。ふたりは 映画『 THE SEA WALL 』( 未、’08 ) で共演したコトがありますが、日本での共演作公開は今回が初めてです。

開巻、ベルトランは パリの或る駅近くのマンションに暮らす、ムッシュー・クールソンという老齢の英国人作家の部屋を訪れます。「 100 回も同じ話を聞いた 」というベルトランの言葉から、「 もしかしたら ベルトランは〝 エスコートサービス 〟の男? 」と僕は想像――。間もなく クールソンの入浴を手伝うシーンへと続いた時は「 〝 介護サービス 〟の仕事? 」とも想いましたが、「 一緒に ( バスタブに ) 入ろう。服を脱いで 」というクールソンの言葉で、「 ベルトランは〝 男娼 〟なのだ 」と解釈 ( 驚いたコトに、その後、或る青年との会話から、ベルトランは 金持ちの老婦人をも〝 顧客 〟にしていたコトが分かってきます ) …。ベルトランは 終始 不愛想で、クールソンから お札を何枚も受け取りながら 礼も言わず、さらに バスタブ内で心臓発作を起こしたクールソンを 助けようともしないで、彼の遺作となった原稿と金目の品物を盗み、平然と その場から立ち去るのです。

正直なところ 僕が最も興味を抱いたのは、そんなベルトランの卑劣な人物像でした。婚約者 カロリーヌとの付き合いも、彼女の両親の財産目当てなのかも…という気さえしてきます。いずれにしても、一流の作家には到底なれそうもない男…。そんな彼が、盗んだ戯曲で一躍有名になった後、偶然 出合ったエヴァに心を奪われ、破滅への道を進んでいくという心理劇。その心理そのものが 奥深そうでいて、それほどでもないと感じたのは、おそらく 僕の想像力不足のせい。そう、これは 想像力と 心理分析力の豊かな映画ファン向きの作品と言える気がします。

I・ユペールは、場面によって 従来の彼女とは 相当に違うメイクで登場し、カジノの場面では ボブ風のウィッグを着けたりもしています。しかも本作では 彼女の〝 どこか意味深長な演技 〟の力が いつも以上に生かされていて、特にラストシーンでの ちょっとした表情と動きに 彼女ならではの うまさがあり、やゝインパクトの弱い結末を引き締めながら、余韻を残すコトに成功しています。
演出と編集はテンポが良く、撮影も相当に美しい。心理劇としての出来はベツとして、技術的には 第一級の作品だと僕は感じました。

 

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(C)2017 Goodland Pictures © 2017 KD Multimedia Limited Innowave Limite

1924 年、パリ・オリンピック金メダル獲得後――
エリック・リデルが 戦時下の収容所で再び走る、感動の実話。

最後のランナー
中国、香港、アメリカ/ 96 分
7.14 公開/配給:ブロードメディア・スタジオ
www.saigo-runner.com

【 INTRODUCTION - STORY 】 ’24 年 パリ・オリンピックを題材に描かれた『 炎のランナー 』 ( ’81 ) 。主人公である ふたりのアスリートの信念と尊厳に光をあて、アカデミー賞Ⓡ 4 部門を制した名作だ。とりわけ 宣教師の息子である エリック・リデルが、宗教上の理由で 日曜日に行われる試合を辞退し、その後の 400 メートル走で優勝に輝くエピソードは、多くの映画ファンの胸に熱く刻まれた。しかし リデルには、知られざる〝 その後 〟の物語があった。

パリ・オリンピックで金メダルを獲得したリデルは、その翌年、中国の天津 ( 彼の出生地 ) へ旅立った。敬虔なクリスチャンである彼は アスリートとしての栄光を追い求めず、宣教師として生きる道を選んだ。しかし ’37 年、日本軍が天津を占領。妻子をカナダに退避させ、ひとり留まったリデルは 人道支援を続ける。やがて 外国人を取り巻く状況は悪化し、リデルは大勢の欧米民間人とともに収容所に入れられてしまう。過酷な抑圧と体調不良に苦しむリデルは、〝 走る 〟ことで不屈の情熱と信念を示し、仲間や子供たちに希望をもたらしていく。そんななか、リデルが金メダリストであることを知った収容所の指揮官が、彼にレースを申し入れる。しかし、安息日の日曜日に リデルが身を投じた その〝 最後のレース 〟の先には、思いもよらない結末が待ち受けていた…。( 試写招待状より。一部省略。カッコ内は、大高の加筆 )

金メダルに輝いた英国の英雄が 天津で宣教師となり、信仰と希望のために走り続けた軌跡の物語。エリック・リデル役は、『 恋におちたシェイクスピア 』や『 エリザベス 』で絶賛された ジョセフ・ファインズ。リデルを尊敬し、力となるレジスタンスの青年 ジ・ニウ役に、『 サンザシの樹の下で 』( 通信 62 ) で好演した ショーン・ドウ。監督は、マカオ生まれの スティーヴン・シンと、カナダ人の マイケル・パーカーの共同。脚本は、S・シンら 5 名が共同で執筆しています。

この種の映画としては 96 分と短い上、エピソードを盛るだけでもタイヘンだったようで、全体的に構成がフラットな印象。脚本をもっと練り上げれば、より感動的な作品になったのでは? と、僕は少々残念に思いました。しかし リデルの信念と使命感と人間愛の強さは、J・ファインズの真摯な演技によって、ヒシヒシと伝わってきます。そして「 心の平安のために走る 」という言葉が、深く心に響きました。
ラストは 悲しく寂しく、戦争の愚かさを改めて痛感させられます。リデルは、カナダで無事に生まれた 愛らしい三人めのベビーを、その胸に抱くコトさえ叶わなかったのでした…。

 

 

アトランダム Q&A企画にて、 大高さんへの質問も受け付けています。
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biteki-m@shogakukan.co.jp
( 個別回答はできかねますのでご了承ください。)

ビューティ エキスパート
大高 博幸
1948年生まれ。24歳の時、日本人として初めて、パリコレでメークを担当。『美的』本誌では創刊以来の連載「今月のおすすめ:大高博幸さんが選ぶベストバイ」を執筆。
■大高博幸さんの 肌・心塾
http://biteki.com/beauty-column/ootakahiroyuki

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