シャネル・ネクサス・ホールで開催!「Synthetic Natures」もつれあう世界:AIと生命の現在地 ソフィア クレスポ/エンタングルド アザーズ

銀座の「シャネル・ネクサス・ホール」で、この秋、AIアートとエコロジーが融合する展覧会を開催。本展は、アーティスティック ディレクター・長谷川祐子氏が主宰する「Hasegawa Curation Lab.」とのコラボレーションのもと、次世代を担う若手キュレーターを起用する展覧会シリーズの第二弾。キュラトリアル・コレクティブ「HB.」の共同代表である三宅敦大氏を起用し、今、注目を集める作品が展示されます。
AIとエコロジーが融合する展覧会。2組のアーティストに注目
今回の展覧会に登場するのは、ポルトガル・リスボンを拠点に活動するアーティスト、ソフィア クレスポ。そして、ソフィア クレスポがノルウェー出身のアーティスト・研究者であるフェイレカン カークブライド マコーミックと共に活動しているアーティスト・デュオ、エンタングルド アザーズの2組。最先端の彼らの作品は、世界のアートとテクノロジーが交差する臨界点で、今最も注目を集めています。
ソフィア クレスポは、人工知能(AI)と生命科学の融合において独自の詩学を築いたアーティスト。ニューラルネットワークを通して生成されたイメージは、虫の翅(はね)や植物の胞子、深海のクラゲのような形をしながら、どこか既視感を抱かせるーーけれど決して見たことのないものたち。そのフォルムには、AIが人間の観察力を模倣し、進化的な“創造行為”に踏み込むプロセスを可視化しています。
そして、エンタングルド アザーズは、“エンタングルメント=もつれ合い”という概念を軸に、人間と非人間(more-than-human)の間にある関係性を、データと想像力を駆使して再構築。観測できない深海、システムとしての植物、非線形に変化するデジタル生態系ーーこうした存在の複雑な振る舞いを、ヴィジュアルによる“シミュレーション”として提示するのが彼らの方法となっている。
今回の展覧会では、海中2000メートル以深の世界を探る『liquid strata: argomorphs』(2025)、湧昇という地球規模の現象とAIの視覚言語を結びつけた『specious upwellings』(2022-2024)、そして遺伝情報とデジタルデータの構造を重ねた『self-contained』(2023-2024)を含む5シリーズを紹介予定。
映像、彫像そしてデジタルインスタレーションなどの展示作品が観る者ものに投げかけるのは、いずれも断片的なデータと仮説から世界を読み解こうとする科学的営みと、詩的な想像力との交点に立ち現れるヴィジョン。彼らの作品において、テクノロジーを介して生成されたイメージは、自然の“代替物”ではなく、“人間が自然をどう見たいと願っているか”の深層を写し出します。そして、絡まり、共鳴し、変容していくそれらのイメージは、現実世界の見え方を静かに揺さぶります。
「Synthetic Natures」もつれあう世界:AIと生命の現在地
ソフィア クレスポ/エンタングルド アザーズ
【開催概要】
◆展覧会名
Synthetic Natures もつれあう世界:AIと生命の現在地 ソフィア クレスポ/エンタングルド アザーズ
◆会期
2025年10月4日(土)〜12月7日(日)
◆開館時間
11:00〜19:00(最終入場18:30)
※イベント開催時は変更あり、最新情報はウェブサイトをご確認ください
会期中無休・入場無料・予約不要
◆会場
シャネル・ネクサス・ホール
(住所:中央区銀座3-5-3 シャネル銀座ビルディング4F)
◆主催
シャネル・ネクサス・ホール
【プロフィール】
ソフィア クレスポ
1991年生まれ、アルゼンチン出身。現在はポルトガル・リスボンを拠点に活動。
代表的なプロジェクトには、『neural zoo(ニューラル・ズー)』(2018-2022)や『artificial natural history(人工自然史)』(2020-2025)などがあり、仮想的な生態系や生命体をAIなどを通して表現することで、「人工」と「自然」の境界を再考させるよう鑑賞者に問いかけている。2024年には、バルセロナのカサ・バトリョに招待され、『structures of being(生命の創造性)』というプロジェクションマッピング作品を制作。アントニ ガウディの建築理念からインスピレーションを得ており、自然を“無限の創造性を持つ進化のプロセス”として表現している。アーティストとしての活動に加えて、マサチューセッツ工科大学やオックスフォード人工知能学会などで講演を行い、機械学習を用いる現代のアーティストの役割についても模索。2025年にはABSデジタルアート賞にてアンナ リドラーと共に「アーティスト・オブ・ザ・イヤー」を受賞。
エンタングルド アザーズ
1987年生まれ、ノルウェー出身のアーティスト・研究者であるフェイレカン カークブライド マコーミックとソフィア クレスポによって2020年に設立された実験的なアーティスト・デュオ。
これまでにトレド美術館(オハイオ州、アメリカ)、ヴィクトリア&アルバート博物館(ロンドン、イギリス)、NeueHouse LA(ロサンゼルス、アメリカ)、マサチューセッツ工科大学(マサチューセッツ州、アメリカ)、Re:Humanism(ローマ、イタリア)、オックスフォード大学(オックスフォード、イギリス)、ユネスコ本部(パリ、フランス)、ゴールドスミス大学(ロンドン、イギリス)、タイムズスクエア・ミッドナイトモーメント(ニューヨーク、アメリカ)など、さまざまな場所、会場でのプロジェクトに参加。また、彼らの作品は、バッファローAKG美術館(ニューヨーク、アメリカ)、オナシス財団(ファドゥーツ、リヒテンシュタイン)、コレクシオン・ソロ(マドリード、スペイン)をはじめとする、個人および公共機関のコレクションにも収蔵されている。
アーティスティック ディレクター・長谷川祐子
キュレーター/近現代美術史/京都大学経営管理大学院客員教授/東京芸術大学名誉教授、国際文化会館アートデザイン部門プログラムディレクター/前金沢21世紀美術館館長。
文化庁長官表彰(2020年)、フランス芸術文化勲章シュヴァリエ(2015年)、ブラジル文化勲章(2017年)、フランス芸術文化勲章オフィシエ(2024年)を受賞。これまでイスタンブール(2001年)、上海(2002年)、サンパウロ(2010年)、シャルジャ(2013年)、モスクワ(2017年)、タイ(2021年)などでのビエンナーレや、フランスで日本文化を紹介する「ジャパノラマ:日本の現代アートの新しいヴィジョン」、「ジャポニスム2018:深みへー日本の美意識を求めてー」展を含む数々の国際展を企画。主な著書に、『キュレーション 知と感性を揺さぶる力』(集英社)、『破壊しに、と彼女たちは言う:柔らかに境界を横断する女性アーティストたち』(東京藝術大学出版会)、『ジャパノラマ: 1970年以降の日本の現代アート』(水声社)、『新しいエコロジーとアート「まごつき期」としての人新世』(以文社)。
キュレーター・三宅敦⼤
1994年⽣まれ。岐⾩県出⾝、京都在住。2019年、東京藝術⼤学⼤学院国際芸術創造研究科修⼠課程修了。⼤学院在学中にキュレーターの髙⽊遊とともに、キュラトリアル・コレクティブ「HB.」を設⽴。修了後、同研究科教育研究助⼿および黄金町エリアマネジメントセンター・キュレーターを経て、2022年4月から2025年3月まで滋賀県立美術館・学芸員を務めた。同年4月、独立。
空間体験としての展覧会の在り方について模索している。主な展覧会実践として、2024年「滋賀の家展」(滋賀県立美術館、滋賀)、2022年「石と植物」(滋賀県立美術館、滋賀)、2021年「愛しき景⾊の果てで」(The 5th Floor、東京)などがある。また、2024年「森の芸術祭 晴れの国・岡山」にてコーディネーター、2020年「Sharjapan2: Inter-Resonance/Inter-Organics」(Sharjah Art Foundation、UAE)、2019年「Intimate Distance」(モンペリエ・コンテンポラリー、モンペリエ)にてキュレイトリアル・アシスタントを務める。主な書籍として『誘う森 森の芸術祭 晴れの国・岡山2024 公式カタログ』(合同会社PURPLE)がある。
※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。