ちゃんと質問してますか?【中年男性、トキメキ美容沼へ vol.17】

こんにちは、ライターの伊藤聡と申します。私は男性のためのスキンケア本『電車の窓に映った自分が死んだ父に見えた日、スキンケアはじめました』(平凡社)を出しました。みなさんは、スキンケアに興味がありますか。スキンケアという言葉から、どんなことをイメージしますか? こちらの連載では、スキンケアに親しんでいく上で役に立つかもしれないあれこれをテーマに書いていきます。トライしてみれば楽しくて奥が深い、スキンケアの世界を一緒に探求していきましょう。
相手の話を聞くこと
2024年の12月に日本でも公開されたカナダ映画『アイ・ライク・ムービーズ』は、そのタイトルの通り、映画の大好きな高校生男子が主人公の青春モノです。主人公のローレンス(アイザイア・レティネン)はまだ未熟な青年で、周囲の人を気遣ったり、相手の気持ちを思いやったりするコミュニケーションの作法が身についておらず、人間関係では失敗ばかり。劇中でも周囲から愛想を尽かされる彼でしたが、アルバイト先の店長アラナ(ロミーナ・ドゥーゴ)からとてもいいアドバイスをもらい、人として成長するきっかけになります。店長はこんな忠告をしてくれました。「自分の話ばかりするのではなく、相手の話を聞くこと」「相手に質問をして、興味を持ってその人について知ろうとすること」。かなり役に立つ助言だと思いました。なにしろ具体的で、さっそく今日からできるのがいいですね。
こうしたアドバイスをもらうまで、主人公は自分がいかに映画に詳しく深い知識を有しているか、どれだけ将来有望かを、一方的にまくし立てるしかできなかったのでした。そんな主人公を見ていると、なんだか過去の自分を見ているような気がして、恥ずかしくなってきます。若い頃って、何の根拠もなく「自分はスゴイ」と思い込んでしまうことがあるものです。私もそうでした。しかしローレンスは変化します。映画の最後で主人公は、進学した大学の寮で知り合った友人に「君はどこの出身?」「どんな町だったの?」と会話を切り出し、相手の背景を知ってきちんとしたコミュニケーションを取ろうと試みるのです。他者を知ろうとする、これぞ成長ですよね。人とうまく付き合っていくためには、相手に興味を持たなくてはいけません。
問いかけてみてほしい
こうしたコミュニケーションの基本を、大学に入る前に学ぶことができたローレンスは、ある意味ではラッキーだったかもしれません。というのも、大人になっても相手にいっさい質問をしない人、中年なのに自分の話だけを一方的にする人はとても多いからです。質問をしない人、驚くほどたくさんいます。たとえば私の知り合いにはひとり、富士山マニアがいるのですが、その人に会うと富士山の話が止まらないので、しだいにその人と会話するのが苦痛になってしまいました。カルピスを飲むと必ず口にカスみたいなものがたまってしまうように、その男性と話せば富士山の話から逃れられない。彼にとって他人とは「富士山の話を聞かせる相手」でしかなく、彼は私がいま何に興味を持ち、どんなことを考えているのかにはまるで興味がないのです。そのことが私を失望させます。この人は富士山の話ができればそれでいいのだろう、私という人間には興味がないんだ……。
また中年男性の場合、どうしても過去の武勇伝、自分が何を成し遂げてきたかが会話の中心になってしまう傾向があります。ああ、悲しい。そうなると会話はどうにも貧相かつ一方的になります。「まずはオレがいかにすごい人物かを伝えたい」といったところでしょうか。くわえて「自分はこれだけ物事を知っているぞ」という知識マウントもありがちです。そして何より「相手に質問をしたり、ご機嫌を伺うような行為は負けた気がする」というプライドが邪魔をする場合だって考えられます。なぜ勝敗にこだわるのでしょうか。紅白歌合戦で紅組と白組のどちらが勝とうが誰も気にしていないように、周囲とのコミュニケーションに勝敗はないのです。だからこそ、相手にできるだけ自然に問いかけてみてほしいのです。未熟なティーンエイジャーのローレンス君ですらできたのですから、成熟したあなたならきっとできます。
あなたについてよく知りたいです
思うに、相手に何かを質問するとは、「あなたに興味があります」「あなたという人物についてよく知りたいと思っています」というメッセージを伝えることと同意義です。お互いがお互いに興味を持って情報を交換することで、コミュニケーションや信頼関係が生まれていくのです。まずは質問をしてみましょう。最近楽しいことはありましたか。何かおいしいものを食べましたか。どこかへ出かけましたか。おもしろかったドラマやマンガはありますか。なるべくリアクションしやすくて、相手の人間性が伝わってきそうな話題を振って、どんな反応が返ってくるかを探ってみてください。最近だと「よく見るYouTubeは何ですか」という質問がかなりオススメです(これはほぼ確実に盛り上がる話題です)。そして相手が話す内容にちゃんと興味を持って、話題を広げてほしいのです。それだけで、周囲との関係はぐっとよくなります。そうして友人が増えていけば、日々をより楽しく健康にすごすことができます。
周囲に会話でアプローチして理解を深めるのが「質問」なら、肌にやさしい成分でアプローチして質感を高めるのが「スキンケア」ですよね。さて、前段とうまいことつながった感じにしたところで今月のアイテム紹介ですが、ドクターケイの化粧水、美容液、乳液がとてもよかったです。化粧水「薬用Cクリアホワイトローション」は、肌に広げると実感できるうるおい、質感のよさが魅力です。美容液「ABC-G リペアセラム」でぐっと肌のハリを持たせて、乳液「薬用Cリンクルホワイトミルク」で仕上げれば、大満足の肌の輝きが得られます。どのアイテムも好きなのですが、特に化粧水をつけたあとの肌のつや、輝きが嬉しく感じました。質の高い化粧水をつけると、肌が反応してうるおいを高めるのがわかりますね。化粧水だけでもいいので、ぜひ試してみてほしいです。こうして考えると「いかに対象とアプローチするか」という点で、会話とスキンケアは似ている気がします。心をこめて働きかければ、きっといい結果が出ます。お肌も友人も大切にしていきましょうね。

イラスト/green K
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