スキンケアが「メンドくさい」人は、宮崎駿監督の言葉 に耳を傾けてみよう【中年男性、トキメキ美容沼へ vol.2】
こんにちは、ライターの伊藤聡と申します。私は男性のためのスキンケア本『電車の窓に映った自分が死んだ父に見えた日、スキンケアはじめました』(平凡社)を出しました。みなさんは、スキンケアに興味がありますか。スキンケアという言葉から、どんなことをイメージしますか? こちらの連載では、スキンケアに親しんでいく上で役に立つかもしれないあれこれをテーマに書いていきます。トライしてみれば楽しくて奥が深い、スキンケアの世界を一緒に探求していきましょう。
「メンドくさい」を考える
スキンケアを男性にすすめる際、もっとも多い反応は「メンドくさい」です。男性にスキンケアをすすめる文章を書いたとき、必ずと言っていいほど、この反応が返ってきます。この記事を読んでらっしゃる方でも、同じように感じた経験のある方がいらっしゃるのではないでしょうか。ギター初心者の「Fのコードが押さえられない」、サウナビギナーの「水風呂が冷たすぎて入れない」と並ぶ定番のリアクションとして知られるのが、スキンケア未経験の男性の「メンドくさい」です。私自身、スキンケア本を書く際にも、男性ユーザーの「メンドくさい」をどうやって乗り越えるかに苦心しました。そこで、まずはこの問題について、私なりの意見を述べたいと思います。「メンドくさい」を掘り下げていくと、意外にいろいろなことがわかってくるからです。男性美容について考えるとき、「メンドくさい」という反応は、渋谷クラブクアトロのステージ前に立っている柱みたいにやっかいな問題なのです。
①「メンドくさい」と思う気持ちに性別は関係ない
お肌のお手入れを面倒だと思う気持ちは、男女あまり変わりません。かつて私は「女性はスキンケアの作業を楽しんでいて、ごく自然に日々のルーティンに組み込まれているのだ」と思い込んでいましたが、そうではなかったのでした。ダルいと思う気持ちに性別は関係ないのです。遅い時間に帰ってきたとき。アルコールを飲んでしまい、酔っていてお風呂に入るのすらおっくうな日。体調のすぐれない時期。普段はこまめにスキンケアしている女性であっても、何もする気が起きない場合があるそうです。私がスキンケアを始めて驚いたことのひとつに、「Saborino(サボリーノ)」というスキンケア製品のブランドがあります。これはそのネーミングからもわかるように、お風呂上がりにフェイスマスクさえしてしまえば、それで肌のお手入れが完成するという、サボってキレイになりたい人のための「時短のコスメブランド」です。この製品を知ったとき、女性もスキンケアが面倒なのか、と意外に思った記憶があります。顔にパックさえつけてしまえば、あとは何もする必要がないのですから、たしかにラクそうですね。未経験の男性が「メンドくさい」と思う気持ちはまったく自然で、当たり前の感情かもしれません。
②日によってスキンケアのメニューは違う
スキンケアの手順は毎日必ず一緒ではありません。「肌の調子が悪い日は刺激の弱い製品だけで済ませる」「気分が乗らない日は最低限のケアだけをする」など、手順をその都度変えている方がほとんどです。「メンドくさい」と感じた日は、時間をかけずにさっと終わらせてもよいのです。逆に、「気になるスキンケア製品を買った」「肌の調子がよくなってきた」など、モチベーションが上がるような日もあって、そのような場合はいつもより念入りにスキンケアをするといったことも起こります。気持ちのアップダウンはありますし、時短やタイパといった話題は美容雑誌でもよく取り上げられます。それでも「メンドくさいから、ケアそのものを止める」とならないのは、自分の身体や肌が大切で、替えがきかないだからです。一方、スキンケアに目覚める前の私自身もそうだったのですが、そもそも自分の身体にあまり関心がない、正直どうでもいいという方もいるかと思います。その結果、体調が悪くても病院に行かないなど、投げやりになる傾向もあります。かつての私は「食いたいモノを食って好きなように遊び、太く短く生きるのだ」というワイルドな自分に酔っていたのですが、これはあまりよくありませんでした。男性には「自分の身体が大切だ」という気持ちをやしなう練習が必要だと私は思っており、そのためにスキンケアはとてもいい手段です。たまに手抜きをすることはあっても、自分自身のメンテナンスは続けていくことが必要なのではないでしょうか。
③ラクできるスキンケア用品はたくさんある
意外に知られていないのですが、ラクをするためのスキンケア製品はたくさんあります。面倒な手間を省くアイテムから始めてみるのは、かなりいいと思います。男性にとってもっとも手軽なのは、オールインワンと呼ばれる製品。これは、化粧水、美容液、乳液など、ほんらいであれば別個に準備されているアイテムを全部合体させ、すべてをひとつにまとめたという便利アイテムのことです。オールインワンさえ塗ってしまえば完了、というお手軽さがあるので、忙しい朝の時間に使う方が多いようですが、寝る前にこれひとつだけ、という方法でもまったく問題ありません。何もしないよりは断然いいのです。オススメ製品は、資生堂の「アクアレーベル スペシャルジェルクリーム EX (ブライトニング)」。ドラッグストアで買える手軽さと、香りのよさがとても好きで愛用しています。他の製品も使いましたが、この「アクアレーベルの青」がもっとも香りのよいアイテムでした。また、あろうことかオールインワンに日焼け止めまで合体させてしまった究極のお手軽アイテムが、ロート製薬の「肌ラボ 極潤 UVホワイトゲル」です。「化粧水・乳液・美容液・クリーム・パックのオールインワン機能に、UVカット機能と化粧下地効果の2つの機能がプラスされた、1つで7役の朝用オールインワンゲル」だそうで、こんなにユーザーをラクさせていいのか、と心配になるほどの便利アイテム。また、先ほど挙げたSaborino(サボリーノ)のフェイスマスクはどれもオススメです。60秒でケア完了! というスピード重視。このあたりのお手軽スキンケアから始めてみるのはいいかもしれません。
最後に、宮崎駿の教え
「メンドくさい」という言葉を聞くと私は、テレビのドキュメンタリー番組で宮崎駿が話していたことを思い出します。長期間に渡るアニメ制作の作業に疲れ果てた宮崎は、「ああ、メンドくさい」「まことにメンドくさいよね」と愚痴を言いながら作業をするのですが、それでも手を止めることはありません。彼は「世の中の大事なことって、たいていメンドくさいんだよ」と言います。だからこそ、面倒な作業をつづけていくべきなのだと、取材のカメラに話していました。たしかにその通りなのです。シャツにアイロンをかけるのはメンドくさいし、休日にヒゲを剃るのはメンドくさい。部屋の掃除はメンドくさいし、機嫌を悪くさせてしまった恋人に謝るのもメンドくさい。たしかに、日々の生活や人間関係をととのえていくのは面倒なのです。とはいえ、そんな風にいろいろなことを面倒だと思って生きていると、その先にあるのは虚無、なにもないがらんどうで真っ暗な世界です。ものごとに対して「メンドくさい」と言う習慣がついてしまうと、そのうち何のために生きているのか、よくわからなくなってきます。思うに「メンドくさい」は、それ以上の対話や変化の可能性をすべてシャットダウンしてしまう、強い威力のある言葉です。だからこそ、この言葉をあまりイージーに使ってしまわないよう、気をつけたいものです。それはそうと宮崎監督、『君たちはどう生きるか』はとても楽しい映画でしたがあらすじはあまりよくわかりませんでした。いつかお会いする機会があったら教えてくださいね。
右から/夜用・朝用など様々な種類があるSaborinoのシートマスク、オールインワンでSFとPAも最高値(UVカットの指標です)の「肌ラボ 極潤」のUVゲル、アクアレーベルの美白ラインのオールインワン(すべて著者私物)。
イラスト/green K
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