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メイクHOW TO
2023.11.17

自分の顔をモノクロで見ると、隠れた名所がわかる。魅力が引き立つ「ディファインメイク」の提案|美的GRAND

自分の顔が好きになる。私は私でいいと思える。これからの人生をより楽しむために。自分の魅力が際立つ、水野さんの「ディファインメイク」を。

自分の顔をモノクロ写真で見てみると、隠れていた名所が見えてくる

ヘア&メイクアップアーティスト

水野未和子

「頬の位置が高くてカッコいいね」「目の周りの影が雰囲気あるね」「丸いおでこがかわいい!」。そんな風に女優さんやモデルさんに伝えると、「実はそこ、好きじゃないんです」という人がいます。私からすると、そこがあなただけの素敵なところなのにと思うことがよくあります。

モノクロで見るとパーツがよくわかる

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ディファインメイクをする前に、まずはもう一度、自分の顔と向き合ってみましょう。世の中で美人の正解とされる顔と比べるのではなく、自分では気づいていない、隠れた名所を見つけるように。

といっても、自分の顔を客観的に見ることは意外と難しいもの。長年の思い込みや凝り固まった先入観が邪魔をしたり、鏡で顔を見ると、シミやシワなどよけいな情報に目が行ってしまって、ネガティブな気持ちから今の自分と向き合えなくなってしまうこともあります。

私がおすすめしているのは、自分の顔をモノクロで見てみることです。モノクロ写真は色がないからこそ、骨格や輪郭、パーツの存在感が際立つので、顔の中の各パーツの比率や存在感もわかりやすく見えてくると思います。

メイクはなるべくせず(もしくはナチュラルメイクで)、表情を作らず、デコルテまで入れて、自然光で正面から撮ったモノクロ写真を、できればプリントアウトして実物大で見てみてください。そして、自分の顔をしっかりと、他人の顔を見るようにチェックしてみてください。

コンプレックスも愛すべきパーツに

顔の形、フェースラインの様子、肌の色ムラ、シミやシワ、眉の色や太さ、鼻の幅や長さ、唇の厚さ、頬や額、あごの形……。ひとつひとつのパーツをチェックしていくと、そぎ落としたいところ、目立たせたいところが客観的に見えてくると思います。

骨が出ているところを少し引っ込めたい。影ができているところを明るくしたい。下がったフェースラインを引き上げたい……。「奥に引っ込ませたい」部分には影を入れて引き締め、「浮き立たせたいところ」にはハイライトで光を集めて立体感を出す。それがディファインメイクの基本です。「このシミやそばかすはかわいげがあるから生かそうかな」「広いおでこは目立たせていいかも」「目が小さいと思っていたけれど、意外と大きいな」。自分の顔を眺めていると、勝手にコンプレックスに感じて、勝手に傷ついていた部分も素敵に見えてきたりします。「私なんか美しくないから見ても意味がない」とは思わないで。そう思うことがもう、知らない誰かが決めた美の基準に捕らわれているということです。

自分の顔が把握でき、メイクをするポイントが見えてきたら、光と影を味方につけたディファインメイクをしてみましょう。モノクロ写真に色鉛筆や手持ちのコスメで色をのせながらメイクを考えるのもおすすめです。これから、基本のディファインメイクをご紹介します。自分らしい美しさはもうすぐそこです。

ディファインメイクのキーワード

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光と影を味方につけ、個性を際立たせる

目立たせたくないところは影でそぎ落として引っ込ませ(シェーディング)、際立たせたいところには光を集めて手前に出します(ハイライト)。顔や各パーツの輪郭、凹凸(立体感やハリ)、生き生き感を際立たせると、その人だけがもつ魅力が引き立ちます。

「2時間後のメイク」がその人らしい顔

汗や皮脂はメイクの大敵と思われがちですが、表情が動き続ける中で、体温や湿度、皮脂や汗などと混じり合うことでメイクが肌になじみ、自然な艶が出てきます。私は仕事でメイクをするときは、「メイクをして2時間後くらい」をイメージしています。メイクの仕上げにブラシに残ったシェーディングカラーを顔全体にさっとつけたり、ミストをひと吹きしてなじませたり。そうしてメイクをその人の一部に溶け込ませるのです。メイクくずれを必要以上に恐れることはありません。少し雑味が出てきたくらいが、メイクが顔の一部になり、その人らしさが出てきた状態です。

チークを味方につける

幼く見えるイメージもつ人もいるけれど、実はどんな年齢にも合うのがチーク。笑うと頬が張る部分を少し強調するように、チークをふんわりとのせます。健康的な血色感を入れることで、骨格美やフェースラインがより引き締まって見えたり、シミやそばかすと混じり合って血色感が出たり、くすみがとんで肌の透明感がむしろアップすることも。

顔にある延長線上の色を使う

顔にある色、その延長線上の色を使ってメイクをするので、その人の一部により溶け込んだメイクになります。「イエベか、ブルベか」なども気にしません。そもそも、アジア人の肌にはいろんな色が入っているので、使う色は、なりたいイメージで選びましょう。「ブルベだから……」と使える色を狭めてしまう方がもったいない。いつだって、自分の可能性を狭めているのは自分です。

ディファインメイクをする

【シャープな顔だち】には、内側から高揚するピンクでフレッシュ感を吹き込む

ニット¥52,800(サポートサーフェス) キャミソール¥19,800(ロワン) ピアス/スタイリスト私物

シャープな骨格、すっとしたあご先、きりりとした目元。アジアンビューティな顔だちには、近寄りがたい印象になりがちなしっかりメイクではなく、フレッシュ感を吹き込んだナチュラルメイクで。

ポイントは、ピンクのチーク。若作りしているような印象から敬遠する方もいますが、ピンクはうれしいことがあったときやお風呂上がりの上気した色。入れ方次第で自然な血色をもたらし、どんな年齢の表情も生き生きと輝かせてくれます。頬がこけ、顔に影ができてやつれて見えがちな顔にも効果的です。ただ、ファンデーションをしっかり塗った隙のない肌に使うと、ピンクは途端にフレッシュさを失い、「若く見えたい人」の印象に。

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A. 微粒子のシリカが肌を均一に整える美容液ファンデ。/パルファム ジバンシイ ソワン ノワール セラム ファンデーション 30 ¥16,610

B. 高揚したようなピンクを3つの質感で。/アディクション ホリデーアディクション ブラッシュ パレット “アンノウン ファミリア” 101 ¥7,480

C. 品のあるシアーなローズが肌印象を引き上げ、潤みのある艶に。/ベアミネラル ジェン ヌード ハイライター ローズ グロー ¥3,850

D. 唇を引き立てるマホガニーカラーのペンシル。/アルファネット rms beauty ゴーヌード リップペンシル ミッドナイトヌード ¥3,630

E. 青のニュアンスのある影色が目元を印象的に。/カネボウ シャドウジェルライナー SG3 ¥3,520

F. 眉の色を選ばず使えるグレーブラウン系。/オサジ ブロウシャドウ パレット 04 ¥4,180

ファンデーションはAを顔の中央から薄く塗る程度に。その後、図1にBの右のブラウンで影を入れます。たるみが気になるフェースラインも引き締めます。

チークはBの中央のくすみピンクを図2の頬骨の下にふわりとのせると、高揚したような、品の良い血色感が出ます。ハイライトはCを図3に。ラメやパールが強い色を広範囲に入れると顔が不自然に膨張し、若作りに見えるので、キラキラしすぎない色を狭い範囲で少しずつ。粉がよけいなところに散って過剰に光らないよう、細いブラシを使い細かく入れていきます。チークとハイライトを重ねることで、内側からにじみ出るような血色や艶が生まれます。

シェーディングもハイライトもチークも、きちんとメイクをした感の出るパウダーを使っています。一度につけようとせず、ブラシにとったら手の甲やティッシュで余分な粉を落とし、少しずつのせていきましょう。

はリップクリームの艶のみで抜け感を出し、かわいくなりすぎないように。もとの唇の色よりも少し濃いDで図4にだけラインを入れ、内側にぼかすと程よく影が入り、唇に立体感が生まれます。

アイラインはEで目頭やまつ毛の際に。眉は流れを整え、Fで毛の薄いところを足す程度にしています。

【丸い顔】はオレンジで引き締め、光と影で顔を掘り起こす。赤のリップをポイントに

ブラウス¥37,400(アドーア) ブレスレット¥1,210,000(ルドゥテ) インナー/スタイリスト私物

丸い顔は面長に比べて光が当たる面積が大きくなるので、ぼやっとした印象に見える部分を光と影で掘り起こしていきます。魅力的な丸い頬をよりチャーミングに見せるため、チークはコーラル系のオレンジを。顔全体を引き締め、健康的で知的な雰囲気をもたらしてくれます。

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A. 「冬虫夏草」やシカなどの保湿成分を配合。体温と溶け合い肌と一体化。/ボビイ ブラウン インテンシブ セラム クリーム ファンデーション SPF25(PA++) N-042 ¥10,450

B. クリームがパウダーへと変わる独自処方のブロンザーで自然な立体感を。/NARS ラグナ ブロンジングクリーム 01 ¥4,840

C. pH値と水分量に反応して色づき、その人だけのピュアな血色感に。/ディオール ロージー グロウ 004 ¥5,940

D. 肌トーン問わず、自然な血色や濡れたような艶感に。/ローラ メルシエ ローズグロウ リキッド イルミネーター ¥5,720(限定)

E. 自然にトーンアップするクリームカラー。肌の奥から発光するような艶に。/セルヴォーク スキンユニティ プレストパウダー 01 ¥4,950

F. 眉の濃淡を繊細に描け、洗練をもたらす。/THREE アドバンスドアイデンティティ ブラウシェーピングデュオ 06 ¥4,180

G. 繊細なラインがまつ毛の影になりすます。/カネボウ シャドウジェルライナー SG1 ¥3,520

ファンデーションはAを薄くつけた後、Bで図1の部分に影を入れます。濡れたスポンジにつけ、影を少しずつ入れるとナチュラルな仕上がりに。額は面積が大きい分、光をしっかりと受け止めるので、おでこが広い人、おでこを出している人は、影をやや強めに入れるといいでしょう。

チークはCを図2に。頬骨の高い位置から明るめのオレンジで染めていきます。鼻筋の中央まで色を渡すことで丸い頬をよりナチュラルに引き締める効果も。シミやそばかすは隠しすぎない方がこなれて見えます。オレンジが肌の色やシミ、そばかすと混ざり合い、生き生きとした表情に。

ハイライトもクリームで。Dを図3に細かく入れて艶を出します。広範囲に入れるとギラついて見えるので、最小にして最大の効果を出せる位置に入れましょう。今回はアイシャドウとしても使っています。眉の上にも入れると、年齢と共にやせていく額がより立体的に出てきます。

クリームタイプのシェーディングやハイライトは艶が出やすく、肌になりすます効果が高いので、ナチュラルに仕上がります。仕上げにEのパウダーをこめかみや目の下、小鼻などテカりを抑えたい部分に。

リップは、唇の地色や、唇を噛んだりしたときの血色の延長線上にあるような赤で、締まるポイントを。マットでもグロッシィでもない、程よい質感のものを。赤で輪郭をしっかり縁どると和装メイクのような華やかさや落ち着きが出やすいので、ラインはあえてとらずフォギーに仕上げ、内側から自然な血色がぽっと出てくるようにしています。

はFで眉頭から立てるように少し強めに描き、アイラインはGで目頭とまつ毛の際に入れています。

 

【メイクのその先へ】「この顔、好きかも」と思えるように。メイクの向こう側の自分へ

メイクにかかわらずあなたはあなた

ディファインメイクが目指すのは、メイクを脱いだ素顔の美しさです。メイクを生業としている私がこんなことを言うなんて、矛盾して聞こえるかもしれません。 私が素敵だと思うのは、顔のパーツが整っている人でも、肌がキレイな人でも、若く見える人でもありません。自分で自分をケージに閉じ込めず、心から笑える日々を過ごしている人であり、その人が放つ心地よい印象です。

自分自身を認め、受け入れ、解放できるように。これからは別人に似せるメイクではなく、「明日の自分の顔が好き」と思えるようなメイクをしていきませんか?だって、思うんです。「せっかく、自分なんだから」と。メイクをしても、していなくても、あなたはあなたです。

巷には「若く見えること」についての情報があふれていますが、年をとって何が悪いの?と思います。そして、年齢を重ねる中で失っていくものばかりを数えていても切りがない、とも。年齢と共に失ったものがあると思うなら、自分を本当の意味で大切にできる何かを与えてあげればいいだけ。世の中の美意識の物差しに合わせたり、「若く見えた方がいい」という呪縛に捕らわれることなく、そろそろ、自分を自由にしてあげてほしいなと思います。

顔も自己責任。笑顔が自分を助ける

自分の顔への先入観や思い込み、若さへの執着を捨て、老いることに抗わず、自分を本当の意味で解放した人は強いと思います。その強さは、生きる力です。そして、自分で自分の顔を「好きかも」と思えるようになったら、メイクの向こう側の素敵な自分はすぐそこです。

メディアで紹介されるビューティアイコンは時代と共に変わりますが、自分にしかない魅力や人間力は、年齢と共にますますわき出てきます。つまり、美しさを自分なりに解釈でき、ちゃんと笑える自分でいることも、自己責任。だって、自分を本当の意味で笑顔にできるのは自分しかいないのですから。

グラン世代は、年齢的にもより自由に、自分らしく生きられるようになる一方で、仕事では責任が大きくなったり、子育てや介護での課題が出てきたり、大切な人との別れがあったり、更年期で体力も気持ちも揺らぎやすくなったりと、大変なことも増える時期です。だからこそ、ちゃんと笑える自分でいてほしいのです。笑顔は自分を助けてくれるものだと思うから。

一緒に頑張ってきた世代の皆さんがもっと自由に、自分らしくいられるように。素顔で心から笑えるようになるきっかけとして、ディファインメイクを共有できたらうれしいです。

“せっかく、自分だから。自分を解放するための、最小にして最大のメイクを”
―――(水野さん)

『美的GRAND』2023秋号掲載
撮影/高木健史(SIGNO)、金野圭介(静物) ヘア/藤原一毅メイク/水野未和子(3rd) スタイリスト/青木千加子 モデル/大塚まゆか、Kanoco 構成/松田亜子

※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。

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