美しく老けるってどういうこと? 松本千登世さんに聞く最新の「若さ」への価値観

“若作り”や“若見え”になんか違和感…でも老けるのはちょっと怖い。そんな『美的』世代へ伝えたい、「若さへの考え方」を美容エディター・松本千登世さんに伺いました。
「老けにくい」ってこういうこと。最新情報&考え方
10年以上前、著名なアメリカ人演出家にお話を伺った松本千登世さんは、こんなことを言われてどきりとさせられた経験があるそう。
――ハリウッドという世界では、大人の女性は2種類に分けられるんだよね。それは『美しく老ける』人と、『醜く若返る』人。
「『若かったあの頃に戻す』と『ベストな今を積み重ねる』とはまったく違うことなのだと、明確に悟った瞬間でした。若返る美容が進化する程に、その真実を見失いがちですが、今になってようやく、私たちはその大きな違いに気づき、“美しく老ける=加齢をソフトランディングできる人”になりたいと思い始めたのではないでしょうか」と、松本さんは続けて教えてくれました。
“若くありたい”の本質は女性として見られたいという欲求
私自身、大人の女性誌に長く関わる中で何度も、「日本の女性たちが若返りたいと願うのは、“日本男性は若い女性が好きだから”も理由なのじゃないか?」と聞かされてきました。実はそれは決して日本の文化ではなくて、全世界共通しているのだと思います。フランス人は大人の女性が評価される文化だと言われるけれど、それでもフランス女性たちの若返りへの興味、関心は高いと聞くし……。若くありたい、若く見られたい=女性でありたい、女性として見られたいという願いの現れなのかもしれない。たとえそうだとしても、男性が好きなのは若い女性であって、若く見える女性じゃないですが(笑)。
美しく老ける=今を更新するには、スキンケアを義務や惰性にしないこと
昨日の自分と比べるのは、他人と比べるのと同じくらい無意味と思うこと。肌だけがすべてじゃないと思うこと。そして、自分自身の「楽しい」「心地いい」の声を聞ける人であること。
『美的』読者には本当の意味で、自分に目を向けてほしいと思う
素敵な人は“〇歳だから”でも、“母なのに”でもなく、結婚していようがいまいが、何にもとらわれない「その人」がいる。そういう人に自分もなりたいと、素直に思い始める人も今、増えていると思います。ただ、危険だなあ、と思うのは、この女性たちの「真似」をしようと心が向くこと。誰かと比較するのではなく、自分の「今」を、未来永劫(えいごう)、シンプルでエッセンシャル、ニュートラルなポジションにすとんともっていける=更新していける人が美しいのじゃないか。それは美しく老けるにほかならないのかもしれない、と思います。
そして……、美しく老ける人=「今」が更新される人は、心の鮮度と純度が高い、つまりは見た目の鮮度と純度が高い! 結果、美しく老ける人が若々しく見えるという快い「矛盾」が生まれるのだと思います。
『美的』2021年10月号掲載
撮影/大原敏政(aosora・静物) 構成/北川真澄
※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。
まつもとちとせ/客室乗務員を経て、女性誌の編集者へ。現在はフリーとして活躍し著書も多数。柔軟、かつ鋭い観点にファン多数。