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2021.3.25

美容ジャーナリスト・齋藤 薫さんが語る美容と『美的』の20年【『美的』創刊20周年記念】

この20年間は、歴史上、“女性を最も美しくした20年”である。

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撮影/k.asai

人類の歴史において“女性を 最も美しくした時代”とはいつなのかと考えた。
まずマリー・アントワネットが生きたロココ時代。マリリン・モンローやオードリー・ヘプバーンが大スターとなるハリウッド全盛の1960年代。そしてもうひとつが「今」! 21世紀に入ってから今日に至るまで、まさに『美的』が生まれ、号を重ねて支持を増やしてきた20年間である。

’60年代が「絶世の美女」を数多く輩出したのも、映画の照明や撮影技術、メイクアップ技術に大きな進化が見られたからであり、あの清楚なオードリーでさえ、何枚ものつけまつげを分厚くつけていた。 どうすれば人が美しく見えるのか、それが本気で研究された時代なのだ。しかし“美的の20年”はそこに科学と熱量が加わり、美容を劇的に進化させる時代となった。

奇しくもその直前、’90年代には針のように細い眉や黒々した口紅が、「デビルメイク」の名のもと、短いトレンドとなるが、もちろんそれで人が美しく見えるわけもなく、これを最後にメイクの試行錯誤が終わり、迷える時代が終わる。つまりいくつもの失敗を経験しながら、メイクはようやくひとつの完成を見るのだ。

その完成を象徴するように『美的』がデビュー。多様化するトレンドの中で、皆思い思いのメイク技を楽しむ時代に入るが、もう誰も間違ったメイクをしない。だから100人が100人美しい時代が始まった。例えば、囲み目やつけまつげで目を大きく見せる、巧みな「盛り」。’60年代の女優のように、 誰もが美人に見えるメイクは女性たちを夢中にさせ、美容誌は喝采を浴びる。美容は過去にない程の盛り上がりを見せるのだ。

さらにこの頃始まる空前の合コンブームに、女性たちはナチュラルの進化系モテメイクで技を磨いた。愛され顔で幸せを目指すというふうに、メイクが人生をサポートし始めるのだ。『美的』が、その教則本となったのはいうまでもないが、この時代、人を飛躍的に美しくしたのがモデル写真のCG処理だったと思う。欠点のない、息を呑むような美肌に釘付けになればなる程、美しくなれた。美容において視覚的ショック療法は何よりの覚醒効果だからだ。

やがてリーマンショック。そして東日本大震災。歴史は女性の心を大きく変える。もっとさりげなく平和を表現したいと、穏やかで優しいメイクが主流になっていく。それは明らかに女の進化を物語った。 ただ必死で美しくなりたいのじゃない。社会において今どんな美しさが求められているかをしっかりと感じ取り、自分も人にとって心地良い存在でありたいと思うようになっていった。 それもまた『美的』のコンセプトであったはず。まさに内面まで美しい「風の時代」の女に向かっていったのだ。

一方で、美容の進化は女性の年齢観も根底から変えてしまった。48歳でディオールのスキンケアのミューズとなったシャロン・ストーンは、「20代の時より今の方が美しい」と自らの言葉で語り、世界に衝撃を与えた。当時はエイジングケアの広告ですらミューズは20歳前後のモデル。ありえないことが起きたのだ。そこにもまたエイジングケアや美白の進化があり、美容医療の台頭も拍車をかけた。 意識だけではない、見た目に20代よりも美しい40代が次々現れ、美貌の寿命は奇跡的に延びていく。 だからすべての年代が歓喜し自信を得て、年齢に全く囚われずに“なりたい自分”を自由に目指し、そして稀なる輝きを放ったのだ。それは歴史上、例を見ない美の革命。美しさが若さに勝る年齢革命でもあった。

忘れてはいけないのがエシカルの流れ。人を美しくするものが地球の美しさを奪ってはいけないという大きな視野と、尊い美意識をもつことで、私たちは内側からも浄化されていった。いや革命はもうひとつ、加速するLGBTにより、美しくなる権利に性別はなくなり、いよいよルールなき美のダイバーシティーが始まった。美しくなることで人生を切り開くのに男も女もない。誰にでもその可能性があることを人々に教える20年だった。こうして、気がつけば一人ひとりが自分の中に革命を起こしていた。そのシナリオを書いたのが『美的』だったといってもいい。

誰もが同じように美しくなる可能性を秘めているのに、それに気づかぬまま終わる女性がこの歴史の中でどれだけいたことか。そう考えると切ないが、でもだから今は美容誌がある。 美しさは教え、気づかせ、引き出すもの。未来の可能性を見せて、挑む勇気をくれるもの。それによりその人の人生までをキラキラ輝かせることができる、そう信じるからこそ美容誌は私たちに美を懸命に伝えてきたのだと思う。そんな“美的の20年”に、心からのお礼をいいたい。すべての女性の中に眠っていた可能性に気づかせてくれて、導いてくれて、ありがとうと。

私にとって『美的』とは…

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美容ジャーナリスト

齋藤 薫さん

『美的』2021年5月号掲載
スタイリスト/大島有華 協力/木土さや 構成/小内衣子(PRIMADONNA)

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※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。

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