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2022.5.30

ゲスト・松田美由紀さん|作家LiLyの対談連載「生きるセンス」第5話「スーパーナチュラルに合理的」

40歳以降は生き方が顔に出るという。そして生き方にはセンスが出る。 私たち、どう生きたらいいですか? 40代からの人生が輝く"読むサプリ"。 記念すべき初回のゲストは、女優で写真家の松田美由紀さんです。 【作家LiLy対談連載「生きるセンス」第1 回ゲスト・松田美由紀さん 】

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子供の記憶に残りそうなポイントで、
親としての「頑張り」を見せつける。

嗚呼、大好きだぁ、そういう考え方!と美由紀さんの意見に私はひとり胸をほてらせる。
美由紀さんは、「スーパーナチュラルに合理的に生きる」天才だ。
それこそ少女がそのまま大人になったような天真爛漫さと素直さから滲み出るような
天然物の大きな愛を感じさせる人なのに、
その裏には全く嫌味のない計算がきちんとされている賢さが常にあって、
私はそこに安心感を覚えるのだ。
ノープランで一切頭を使うことなく
たまたま最高に上手くいった育児/人生、なんて聞いたことがない。
どうやったって上手くなんていかないのが人生だ、とも私は思いたくない。
自分で立てたプランから人生のほうが自然と大きく外れていってしまうことは
「人生のロマン」だと思っているが、この一回きりの人生に対しての自己ベストは尽くしたい。

何かを思い出した様子で、
「でもねぇ」
と美由紀さんが苦笑いをして見せる。

「いいお母さんでいようってそこまで気をつけて、
子供たちを楽しませようってそこまで頑張っても、それでもずーっと呪われるからね。
ちょっとイヤだったことだけ、すっごい覚えているのが子供って生き物なんですよ。
90パーセントいい親なのに、たったの10パー気を抜いた時のことをずーっと言うの。
あの時の弁当が嫌だった!とか今も言われてるからね、私……。
当時ね、玉ねぎを焼いて食べるのがめっちゃ美味しい!って思っていた時期だったのよ。
だからお弁当にも入れてみたわけ。たったの1回だけよ?
そしたら、冷えた玉ねぎなんて食えたもんじゃないって。
今でもそればっかり言われるの(苦笑)」

確かに、自分のことを思い返してみても、私の母は最高にいいお母さんだったのに、
父との大喧嘩がイヤだった、突然オンナへと返り咲く母がキツかった、
と物書きになった娘に公の場でまで書きまくられる始末(ごめん。笑)。
そして、エプロンをつけるようなお母さん像について美由紀さんと語っている私だが、
実際はエプロンどころの騒ぎではない。
キッチンでAirPodsを耳に入れていないというだけで、
「わ! 今日のママ、イヤフォンして踊っていないなんて、まるで普通のお母さんみたーい!」
と娘に喜ばれているのが現実だ(ごめん。笑)。
私がどんなにいいお母さんを目指したところで、スタートそのものにズレがあるようで、
「ママは他のママたちの中で一番変わっている」
「保護者会にスッピンでくるのはママくらい。化粧をして欲しい」
「普通のお母さんにも憧れる」
などと息子にも娘にもディスられまくり、
「いやいや、“普通”ってものは、そもそもが幻想なんですよ」
などと反論すると、
「論破王ひろゆきみたいなモードに入るママってキラ〜イ」
などと予想もしていなかったワードと共に斜め上から斬られて終わる(笑)。

でも、子供が親をディスれる環境=平和なのでやっぱりこれで良い。
国のトップを国民がクソ味噌にディスる権利がある=民主主義。
私は子供と、対等でいたい。

自分の欠点もさらけ出し、
ディスってくる子供たちと
一緒に笑い転げる=楽しい。
自分の親ハードルも下がるので良い。

「ただねぇ……」
と美由紀さんは眉間にシワを寄せてから聞いてきた。
「将来、リリィの子供が作家になったらどう思う? 」
「んー、それはめっちゃ嬉しいかなぁ」
「でもねぇ、自分より大物の作家になって、お母さんの仕事ってさぁ、
とか言われたらって想像してみて? 」
「……」(想像中)
「自分では、いいお母さんであることを
クリエイティブな自分よりもずっと優先してきたのに、
その子供に仕事について言われるってなかなかヤバイのよ。
しかも、子供を言い訳にしないでよ、
そんなのこちらは頼んでないし!って…言われたら、どう? 」

「…ッ!!!!
それは……、
全細胞がキーッ!!ってなる……」

私たちは無言になって震えた。
そして、次の瞬間、ドッと笑った。

「親」と「子」って永遠にそんな感じっぽいなって思ったのだ。
―――――人生もそうだけど、親子って「コメディ」だ。
子は親に、幻想を重ねるくらいに強烈な想いを持っていて、
だからこそ時に残酷で、そんな彼らに親はひたすら無償の愛。

「リリィと私はほんとうに似てるところがあるよね。
いつもすごく正直で、でもちゃんとお母さんなのね。
いつも母として頑張るべきところを優先している。
でも、ちゃんとプロフェショナルな仕事を持っていて。
だからこそ、そこに葛藤して。大きな共通点ですよね」

美由紀さんの言葉に、一緒に泣いた初夏の日を思い出す。
その日も、まさに同じテーマで話していて涙が吹き出したのだった。
ピタリと二十歳年上の人生の大先輩なのに、
同じ話題を同じ熱量で語り合うことができるのはきっと、
それぞれの人生の中で、同じような想い/同じような葛藤をしてきたことがあるからで、
だからこそこのご縁に私は改めて感謝する。

「大丈夫だよ」って言葉はいつだって優しいけれど、
誰に言われても同じように胸に響くもの、ではない。

人は、悩んでいる時、この世界の中で自分だけがこんな想いをしているのではないか、
と思い込んでしまうほどに孤独な気持ちになる。
だから、その時の自分と同じような経験をしたという先輩が、
そこからの20年を歩いたところからかけてくれる「大丈夫」は、
この世界で最もリアルな魔法のよう。

初めて出会ったハロウィンパーティでのあの夜に、
「こっちにおいで」とまだ0歳だった息子に手を伸ばしてくれた美由紀さんが、
今は目の前で、40歳になったばかりの私に優しい声をかけてくれている。

「大丈夫だよ。こっちにおいで」
「大丈夫なんだ。そっちへいこう」

そんなふうに思わせてくれる素敵な同性、人生の大先輩たちに、
たくさんの「生きるヒント」をもらいにいくライフワークのような連載に育てていきたい。
きっと、きっと、今の私と同じように、
先輩たちからのリアルな魔法を渇望している迷える女性はたくさんいるはず。
―――――これは、美由紀さんとの対談を終えて、心の底から思ったこと。

この旅は今、はじまったばかり。
ご同乗のほど、よろしくお願いいたします。

次回更新6月10日

松田美由紀:女優、写真家。’61年生まれ。モデル活動を経て、スクリーンデビュー。近年は写真家、アートディレクター、シャンソン歌手としても活躍。環境問題や発展途上国の孤児たちへの支援、自殺防止問題や、エネルギーシフトなどにも積極的に取り組んでいる。

LiLy:作家。’81年生まれ。神奈川県出身。N.Y.とフロリダでの海外生活を経て上智大学卒。25歳でデビューして以来、女性心理と時代を鋭く描き出す作風に定評がある。小説、エッセイなど著作多数。instagram @lilylilylilycom noteはこちら

文/LiLy 撮影/竹内裕二(BALLPARK)ヘア&メイク/三田あけ美(松田さん)、伊藤有香(LiLyさん) 構成/三井三奈子(本誌)

※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。

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